表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/956

10.魔神・四本腕

「ボスの名前はね、魔神・四本腕って言うの。二本の腕で剣を振り、二本の腕で魔法を放ってくるんだよ」


 お金を払ったら、妖精が説明してくれる。



○より詳しい情報を聞けます。一人一回、どれか一つしか聞くことが出来ません。


★弱点属性 ★危険攻撃 ★有効武器



 眼鏡女が聞いたのが弱点属性だから、有効武器は……持ってる武器の種類は多く無いし、グレートソードの攻撃能力は鉄系武器よりも数段高いから聞かなくても良いか。


 危険攻撃を選択する。


「ボスの危険攻撃は、剣を交差してから放つクロススラッシャー。広範囲に飛ぶ斬撃を放ってくるから、物理攻撃で早めに腕を破壊する事をお薦めするよ。破壊に有効な武器は、有効武器から知る事が出来るよ」


 ここに三人居れば、全ての情報を聞けたんだ。


「あんまし役に立たない情報だったわね。どう、私とパーティー組んだ方が得でしょ?」


「君は槍の男から逃げたいだけだろう?」


 プライドと願望の狭間で、偉そうにパーティーを組もうとしている眼鏡女。


「ウッサいわね」

「ハァー……パーティーは組んでも良いけど、自分の身は自分で守れよ」

「私が”火魔法”で攻撃している間、貴方が私を守るのよ! 分かるでしょ、それくらい!」


 母親と同じ匂いがする。嫌いだわー。


「火属性で攻撃する手段なら俺にもある。Lv5で偉そうにするな」

「そういうアンタはLvなんなのよ!」

「8」

「8くらいで偉そうに! ……へ、8?」


 Lv8特典……最初のボスが火に弱いなら、次は別の属性が弱点になるのか?


 敢えて取らないでおくのも手か。


「あ、アンタの装備……よく見ると凄そうね」

「そういう君の武器は……初期装備か?」

「……そうよ」


 手にしていた物が明らかに鉄製の杖だったため、見抜くことが出来た。


 格好は、肩や胸元がよく見える、魔法使いっぽい紫味の黒服だけれど。


「パーティーは組むよ。ただし、ボス戦が終わるまでな」

「私も、その方が助かるわ」

「じゃあ、これを使って」


 チョイスプレートから取り出した、”炎のステッキ”を差し出す。


「……良いの?」

「どうせ俺には使えないし、勝率は上がった方が良いだろう?」


 死なれるのも嫌だし、Lv8特典をまだ使いたくない。


「あ、ありがとう……」


 さっさと装備するユ……ユ…………名前忘れた。


「なら、パーティーを組みましょう」


 チョイスプレートを操作し、俺の方に流してくる眼鏡女。



○ユリカ様がパーティーを申し込んで来ました。パーティーを組みますか?



「これ、俺から切ることは出来るのか?」

「出来るわよ。手に入った物は基本的にパーティーリーダーが所有することになるけれど、今回は貴方がリーダーで良いわ。私は杖を貰ってるし」


 意外と気前は良いらしい。


「パーティーリーダーの権力、強いな」

「所持金は分割されずに手に入るみたいだから、パーティーを組むメリットもあるわ」


 ゴブリンを三人パーティーの状態で倒した場合、全員に1Gずつ、実質三倍のお金が手に入るってわけか。


「パーティーリーダーには、自分ではパーティーメンバーを追い出せないっていうデメリットもあるけれど」

「おい」

「自分からパーティーを抜ける分には問題無いわよ。どうせ、私達は二人だけなんだし」


 パーティーリーダーの状態でパーティーに居座ろうとしなければ良いわけか。


「なるほどね」



○パーティーが成立しました。パーティーリーダーを選んでください。



 俺と彼女の名前が表示されたため、俺は自分の名前を選ぶ。


 同じ表示が向こうにも出たようで、俺の名前を選択してくれた。


 誰かに異議があれば、リーダーにはなれない仕組みか。



○パーティーリーダーになりました。



「関係無いけれど、パーティーは三人までしか組めないからね」


「ああ……ありがとう」


 ありがとうって言うの、なんか嫌だな。


「早く行きましょう」


 眼鏡女が巨大な扉に触れると、扉が勝手に開いていく。


 ――で、すぐに止まった。


「ちょっとしか開かないんだ」

「まあ、私達が通るには充分過ぎるくらいよ」


 確かに、全体ではちょっとでも、横幅五メートルくらいはあるしな。


 扉の向こうは暗くて、ほとんど何も見えない。


 眼鏡女はさっさと扉の中に入る。


「なにしているの、早く」

「はいはい」


 槍の男から逃げるので頭がいっぱいか。


 俺がボス部屋内に入り、扉が閉まり始めた時だった。


「――見付けたぜ、巨乳女~!」


 背後から男の声。


 黒髪を後方で一纏めにした男が、狂気の笑みを浮かべていた!!


 マントに槍……アイツが、人殺しの槍使いか。


「あははははははははははは!! どこ行く気だよ、女~~ーーーー!!」



「――――いやーーーーーーーーーッ!!!」



 眼鏡女が悲鳴を上げる。


 ――槍男が突撃してきた! しかも速い!!


 扉が閉まるよりも早く、男が到達してしまう!?


「くそ、通れねー!!」

 

 見えない壁に阻まれ、男が慌てていた。


「ボス部屋に他のパーティーが居るときは、挑戦出来ないよー」

「うるせー!!」


 ボスの案内妖精の頭が槍によって貫かれ、光が弾けて……元に戻っていく。


 やっぱり、NPCのような存在だったか。


「クソッタレが。おい、そこの兄ちゃん。その女の巨乳もケツも、アッチの穴も俺のもんだ。手~出すんじゃねぇぞ!」


「興味ない」


 下卑た男だ。


「よく見たら、良い装備してんじゃん! 決めた。アンタは殺して、装備とスキルと経験値も頂く! その後はテメーの身体でたっぷり楽しませてもらうからな、巨乳女!! 待ってろよ、すぐに追い付くからな~!」


 扉が完全に閉まるその瞬間まで、男は下卑た言葉を連呼し続けていた。


 けど、一つ収獲があったな。



 人を殺せば、経験値、スキル、装備を奪うことが可能らしい。



「一人を選んで良かった。ん?」


 扉が閉じると完全な暗闇になってしまったけれど、すぐに灯りが点いた。


 薄暗くてよく見えないけれど――


「居る」


 グレートオーガと同等か、それ以上に巨大な人型の敵。


「アレが、魔神・四本腕」


 生物ではなく、リビングアーマーのような動く鎧のように見える。


 青黒く複雑な意匠の石鎧が、組んでいた四本の腕を広げ、下段の両手が、出現した巨大な湾刀を掴む。


 股から下は無く、宙に二、三メートルくらいの高さで浮いていた。


 浮いている分を除くと……高さ五メートルくらいか。


『ボォォォォォーーー』


 身体に青白い光のラインが灯ると鎧内部からも同様の光を発し、本格的に動きだす!


「先制攻撃を仕掛けてくれ!!」

「…………へ?」


 眼鏡女は、すっかり怯えて座り込んでいた。


 ボスにじゃない……あの男に怯えてしまっているんだ。


「良いか、お前は自分の身を守れ。俺がアイツを倒すまで、自分を守り続けるんだ。出来るな?」


 肩を掴んで、しっかりと言い聞かせる。


「わ、わがっだ……」


 震えたまま、彼女は立ち上がった。


「全力で終わらせる!」


 ”グレートソード”を後ろ手に、四本腕に向かって駆ける!


 すると上段の二本の腕が輝き、青い炎弾を撃ってきた!


 脚に瞬間的に力を込め――炎の弾を避ける!!


「冷たい?」


 躱した瞬間、ヒヤッとした。


 ――炎が着弾した場所が凍り付いている!?


 炎のように見える氷、だから炎に弱いって事か。


 俺が一定以上ボスに近付くと、剣による攻撃を放ってきた。


 “壁歩き”を一瞬だけ発動し、足の裏が地面に吸い付いたのを利用して――地面を蹴る力を上げる!


 右手の湾刀の攻撃は外れ、その隙に一直線に接近!


「――ハイパワースラッシュ!!」


 身体が浮いている四本腕の真下から、”大剣術”による一撃を放つ!


『ボオオオオオォォォォォ!!』

「あれ?」


 股部分がほとんど壊れた?


 剣を交差するように構え、俺を狙う四本腕。


 ――危険攻撃、もう放ってくんの!?


 回避している余裕は無い!


『ボオオオオォォォ!!』

「ハイパワーブレイク!」


 クロススラッシャーに対して、”大剣術”で応じる!


 バツ字の斬撃を剣に纏わせた衝撃で吹き飛ばし、そのまま四本腕が上空に押し上げられた。


 ――身体が、さっきの衝撃でビリビリ震えている。


「フレイムバレット!!」


 眼鏡女の魔法の散弾が、四本腕に次々と直撃していく。


「フレイムカノン!!」


 何度も放たれる、激しい魔法の数々。


「MPが足りない! なんとかして!!」


 “壁歩き”で四本腕よりも高く壁を登り――思いっきり跳ぶ!!



「――ハイパワーブレイク!!」



 タゲが眼鏡女に向いたのか、気付かれずに頭上から攻撃――四本腕の、胸より上が吹き飛んだ。


『ボオオオオオオオッッ!!!』


 狂ったように暴れ出した!?


「これで終われ! ”火魔法”――フレイムカノン!!」


 四本腕の胴体に炎弾が直撃し、魔神が沈黙。光となって消えていく。



○おめでとうございます。魔神・四本腕の討伐に成功しました。



「あれ? 本当に終わったのか?」


 最初のボスだとしても弱すぎるんじゃ……。


 取り敢えず、呼吸を荒げている眼鏡女に駆け寄る。


「大丈夫か?」

「ハアハア……そっちこそ、死んだかと思ったわよ」


 さっきまでと違い、大分余裕を取り戻したらしい。


「あ、Lvが上がった。サブ職業の装備可能数が三つ? 意味無いじゃない」


 俺と違って、彼女はサブ職業を二つしか持って無いのか。


 俺の場合は、一人で苦しむを選んだ時に一つ手に入れていたからな。


「あの……助かった、ありがとう」

「こっちこそ、ありがとう!」


 唇をニィーっとさせて笑うユ……ユ…………名前が出てこない。



○ボス撃破特典。以下から一つをお選びください。


★四本腕の大湾刀 ★氷炎魔法のスキルカード

★二刀流使いのスキルカード ★四本腕の石鎧



「撃破特典なんてあるのか」


 選ぶなら、大湾刀か”二刀流のスキルカード”かな。


「なに、まだ選んでんの?」


 眼鏡女はさっさと選んだらしい。


 まあ、この内容だと、彼女には一つしか選択肢が無いようなものだからな。


 ……やっぱり、この女とは絶対に合わない!


「予備武器にデカいのじゃ困るし、二刀流使いを選んでおくか」



○これより、第二ステージの始まりの村に転移します。



「ん?」


 そんな文章が表示された数秒後、身体が光に包まれ……あっという間に視界を覆った。


作者はリアルに、本当に名前が覚えられない人間です。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ