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101.ネガティブクライシス

「パワースラッシュ!」


 ”偉大なる英雄の短剣”に神代文字を三つ刻み、”グレートオーガの短剣”との二刀流で、駆けながら竜化し始めたレプティリアンの喉をかっ切る!

『クッ……じょ……』


 力無く倒れたのち、光となって消えていく男。


「それにしても、酷い有様だな」

「ご主人様……これはなにが?」

「愚かな」


 目の前の光景に混乱するトゥスカと、侮蔑の視線を向けるノーザン。


 俺も、ハッキリ言って呆れている。



 なにせ、レプティリアン同士による殺し合いが行われているのだから。



『よこせ! それは俺のもんだ!』

『私によこしなさいよ!』


 ”竜化の宝珠”を取り合って、レプティリアン同士で殺し合っている。


 つまり、コイツらの仲間意識なんてその程度。


 人種やコミュニティを言い訳に差別するような奴等に、本物の親愛の情なんてあるはずもないか。


『ノールディックゥぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!』


 四足歩行し始めた巨体のレプティリアンが、俺達に飛び付いてきた。


「ハイパワーブーメラン!」

「”土星斧術”、サタンブレイク!」


 トゥスカが”荒野の黄昏の目覚め”で左腕を切り落とし、ノーザンが”ゴルドサタン”で頭を潰し殺す。


 そこでようやく、仲間を殺してまで宝珠を奪っていた奴等が俺達に気付く。


『ノルディック、よくもーーーッ!!』

『許さない!!』


 さっきまで殺し合っていたのに、同族を殺された途端に自分達がしていたことを棚に上げる。


「イカレてるな」


 もう、これ以上コイツらを理解したくない。


「”隕石魔法”、コメット!」


 メルシュが、発動から着弾まで時間の掛かる魔法を発動。


『俺が殺してやッッッ!!!?』


 隕石接近に気付かず、翼が生え始めていたレプティリアンの男は圧死した。


 その隙に、俺は武器を二振りの大剣に持ち変える。


「Lvは、最低でも10は上だと思った方が良いよ」

「二手に別れて素早く撃破。行くぞ!」


 俺とトゥスカ、メルシュとノーザンで別れた。


「”黒精霊”――インフェルノ!」


 ”シュバルツ・フェー”に紫炎を纏わせ、剣が額から生えた竜に斬り掛かる!


『”竜剣”!』


 両刃の黄金と青緑の大剣が出現し、独りでに斬り掛かってきた!?


「”瞬足”、パワーアックス!」


 トゥスカが先行し、”古生代の戦斧”で飛ぶ大剣を叩き伏せる!


「ご主人様!」

「ああ! ――ハイパワーブレイク!!」


 紫炎纏う左の大剣を、剣竜の剣角に叩き付けた!


『がああああああああああああああああああああッッッ!!!?』


 剣角は砕け、頭が半分吹き飛ぶ。


『”竜気”ィィッ!!』

「ク!?」


 黄金のオーラのような物が迸り――吹き飛ばされた!


「無事ですか、ご主人様!?」


 飛ぶ剣をシールドバッシュで吹き飛ばしたのち、こちらへと駆けてくるトゥスカ。


「大丈夫だ」


 おそらく攻撃技ではなく、防御系の能力を牽制として放ったのだろう。


『”竜技”――ドラゴンブレス!!』

「大地の盾!」


 六角形の大盾を指輪から出現させ、閃光を受け止める!


「ぐぅ……ぅ!」


 このままじゃ……受けきれない!


「――ハイパワーコントロールブーメラン!!」


 青い燐光煌めかせ、頭上へと飛んでいったブーメランが戻ってきて――剣竜の胴を切り裂いた。


 剣竜の身体は、光となって消えていく。


 トゥスカの手に戻ってきた”荒野の黄昏の目覚め”には、俺の剣と同じ三文字が煌めいていた。


「本当だったんだな、文字を刻めるようになった話」


「消耗が激しいですけれどね」


 精神の消耗が凄まじいのは、俺にも分かる。


「そんな事より急ぎましょう、ご主人様! さっきの奴以上が出て来られたら……」


 速攻を仕掛けているからこそ、今はまだ少ない消耗で倒せているだけ。


「だな。でも、無理はするなよ」

「はい!」


 確かに、これ以上Lv差を広げられる前に、多少無茶をしてでもレプティリアンを全滅させないと!



●●●



『グアアアアアアアアアアアアアア!!』


 完全に竜と化した男が、私達三人を執拗に追い掛けてくる!


「ダウンバースト!」


 サトミの風の圧も、一瞬動きを止めただけで、さしてダメージが無さそだ。


『裏切り者!! 俺は、貴様のせいで大恥をかいたのだ! 絶対に許さん!!』


「貴様、あの時の男か!」


 私を仲間だと勘違いした奴!


「ハイパワーブーメラン!」

『”竜技”、ドラゴンスキン!』


 リンピョンの”ソーサーシールド”が防がれた!?


『その程度の攻撃など、効くものか!』


「生半可な攻撃は通らないか!」


『”飛針”!!』

「”拒絶”!!」


 虚空に生まれた大針を巨腕で弾くも、地面を大きく穿つ……なんて威力だよ。


「……今の攻撃」


 アヤの手を奪った物と同じ!!


「メグミちゃん、アレをやるわ!」


 サトミの声が頭上か響く。


 第二ステージで、宝箱から入手したスキルを使う気か!


「よし、任せろ!」


 竜の前に立ちはだかる!


「”氷属性付与”、”回転”!!」


 翠の巨腕に冷気を付与し、高速回転!!


『大人しく死ね!! ”竜技”、ドラゴ――ゴオガガゴがぁぁ!!!!』


 突撃しながら開かれた顎へと、凍てつくドリル拳を突き込む!!


「――”拒絶”ッ!!」


 口内から衝撃波を叩き込み、完全に動きを止めた!


『ぐおおぉぉお!?』


 これだけやっても、口内をズタズタにした程度とは。


「”魔法玉”――”暴風魔法”、ダウンバースト!!」


 ”魔法玉”に魔法を込めると、威力を二倍にしてくれるというレアスキル! 



『ギャああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!』


 

「くそ!」


 ダウンバーストを凝縮した”魔法玉”が命中したのは、竜の左前脚!


 脚一本と胸を幾ばくか吹き飛ばしただけでは、絶命にまでは至らない!


『貴様ぁぁぁぁあああッッ!!!』


 奴の狙いがサトミに!


「やめろ!!」

『邪ぁぁぁぁ魔ぁぁぁぁぁッッ!!』


 頭による薙ぎ払いに対応出来ず、吹き飛ばされてしまう!


「ガはッ!!」


 肺から空気が!


「”瞬足”――ハイパワーランス!」


 リンピョンが、第六ステージのボス戦で手に入れた”駿馬の蹄甲脚”の効果で接近し、”駿馬の騎槍”で”騎槍術”を発動。竜の右目に向かって深々と突き刺した!


『がぁぁあああああああああああああああッッッ!!!』

「キャアアアア!!」


 リンピョンまで、痛みに悶え、荒れ狂った竜に薙ぎ払われた!!


「リンピョンちゃん!! ――”魔力砲”ッ!!」

「”光線魔法”――アトミックレイ!」


 ――白とピンクの二つの光芒が、損傷した部位を起点に竜の身体を吹き飛ばしていく。


 攻撃を放ったのは……サトミともう一人の女……メルシュ。


『俺……は……レプティ……リアン……なのに』


 頭だけとなった竜が、最後に口にしたのがそれだった。


「……恥ずかしい奴」


 血にこだわることで自分の価値を信じたかった愚か者が、また一人……天へと召されていく。


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