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討伐隊の女隊長と竜乗りの少年/魔王と勇者と転生者/才能の村
警鐘が響いた。女が頭上の兜を下ろし、剣を手に駆け出す。女の部下が戦況を報告する。追ってきた少年が弱音を吐くのに、女は鋭い顔で檄を飛ばす。
翌日。穏やかな空気が流れる村の広場。冷たい鱗の下にある金色の瞳に笑いかけ「昨日は頭を撫でれたから今日は背中に乗ろう」竜乗りの少年が言う。硬い表情の女が弱音を吐くのを励ましながら。
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魔王は言った。「勇者よ、お前は勘違いをしている。世界で最も残虐な種は、我々ではなく異世界転移者だ。彼らは別の世界を持つ故に、この世界を壊すことに一切の躊躇いがない。我々の縄張り争いとは違う。我々の標的は彼らだけだ」
ちょっと考えた地元出身の勇者は、魔王と手を組むことにした。
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その男以外の村人たちは、みな一芸に秀でている。凡人の男は彼らの雑用を全て引き受けていたが、無駄飯喰らいと罵られ、やがて村を追放された。
数年後。
男は、都の官吏に万能で気の利く小間使いとして重用されていた。ほかの村人たちは炊事洗濯掃除をし、農耕と狩猟で食べていくので精一杯。皆凡人になっていた。