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年齢詐称/銀行強盗/英雄の村
遠くで予鈴が鳴る。
埃っぽい旧校舎の一室、俺は学ランの下に隠した仕事用端末を取り出す。
と、頭上から声。
「正体みたり!やっぱ大人だな、学校から出てけ!」
天井裏から降ってきた生意気な同級生に、俺は告げる。
「この高校からの依頼でな。お前とは違うんだよ、中坊」
息をのむ年齢詐称の少年を笑う。
***
人質をとって立てこもる銀行強盗の側頭部に何かがぶつかった。泡を吹いて昏倒する強盗。タイルの上をからからと滑る拳銃。
悲鳴をあげて駆け出す人質を、特殊部隊の一人が保護する。
その背後から「百点!」と元気な声。
銀行の入口、学ランの少年が靴下だけの片足を揺らして、得意げに笑っている。
***
獣退治の英雄が発狂して処刑された。流行り病の村人を獣だと言って次々に殺したのだ。英雄の婚約者は泣いた。
数年後、王都から来た魔術師が村を見て驚く。
「これは病ではない。不可視の獣が憑いている。しかし奇跡的に数が少ないな、幸運な村だ」
英雄の婚約者は泣いた。村人たちも泣いた。