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デバッガ/革命魔法/たこわさ
「えーソイツ誘うの?」日時を示す女子の後ろから、嫌がる声。「プレイ超おせーし」
仕方ねーだろこちとら何アカ同時に動かしてると思ってんだ、と俺はあくびを噛み殺しつつ内心で反論。
複アカ禁止がデファクトスタンダードになった今日び、デバッガだけに認められたこの特権は最重要機密。
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革命魔法が放たれた。強い者は弱く、弱い者は強くなった。
その最高等魔法を世界に放ったのは、かつて神童と呼ばれ、先の英雄が放った革命魔法で全てを失った男。努力の末、元通りにした世界で、再び最弱となった魔法遣いは平穏に笑う。
その背を射殺さんばかりに睨む少年の姿には気づかずに。
***
「たこわさ……」
コールドスリープから覚めてすぐ、少女は腹部をおさえて力なく呟く。
有能な執事AIは古いデータベースを漁って蛸に変身した。たこわさはヒットしなかったがそのデータは図鑑に残っていた。
笑顔になった少女はたこわさを作って食べた。気づくと有能な執事AIはいなくなっていた。