18 決戦①
赤い「0」が消える。
同時に一真は踏み込んだ。
相手はアテルスペスの兄弟、同型機アルブスペス。
ならば、戦い方は自然と同じになるだろう。
つまり、格闘だ。
一真自身と同じく魔法拳を使うかも知れない。
接近して防御攻撃どちらも出来るように備える。
そう思ってのことだ。
対する白い神機は、動かない。
いや、右手を引いた。
一真は引っかかりを覚えながらも更に一歩踏み込む。
アルブスペスの右手が光った。
「波空拳」
レイギの声と共にアルブスペスの右拳が突き出される。
放たれるパンチより光を帯びる何かが飛び出した。
「な、ぁッ!」
一真は大きく腕を振って体を捻る。
光る何かがアテルスペスの胸装甲すれすれを飛び去っていった。
「まてまてまってストップストーップ!」
一真は、踏み込んで左腕を引き絞るアルブスペスに向けて手を振って制止をする。
「なんだ?」
レイギの苛ついた声が帰ってきた。
「それ、なに!?」
「何って、波空拳」
何でもないかのように、レイギは一真の知らない単語を出す。
「波空拳!?」
当然、何も分からない一真はオウム返しに叫んだ。
「丹田で練った気をチャクラブースターで増幅して拳打に載せて撃ち出す技だよ。
神機に教えてもらってないのかよ」
つまり、気を練って作った弾、気弾を撃ち出す技だとレイギはいう。
アテルスペス経由で一真は即座に理解した。
だが、それでも、言わずには叫ばずにはいられないこともある。
「知らん知らん! なんだそれずりー!!」
耐えられず一真はアルブスペスを指差しながら叫んだ。
「ずるくない!
お前、鍛錬が足りないんじゃないか?
こいつらは技量によって教えてくれるんだから」
「ぐっ」
一真は言葉に詰まる。
確かに一真はあまり鍛えてこなかった。
父に手ほどきは受けたが幼い時分に少しだけ。
立ち方と拳打の仕方だけだ。
「はっ、構えで警戒したが、なんてことはない。ド素人め、勝たせて貰うぞ」
レイギが強い口調で言い、アルブスペスが構えた。
「ぬぅ」
一真は呻き、構え直す。
「さあ、行くぞ」
再度アルブスペスが右腕を引いた。
まだ距離はある。
避けても攻撃に繋がらない。
障壁で受けるだけでもだ。
ならばと、一真は技を使う。
「波空拳」
「《鉄甲拳》」
一真は拳を覆うように障壁を作り出し、アルブスペスが放った気弾を殴って逸らした。
「なっ!」
レイギが驚愕の声を出す。
一真はその動揺をチャンスと捉えた。
駆け出しながら殴り砕くために魔法拳を準備する。
「《爆炎拳》」
一真の声と共に、アテルスペスの右拳先に赤く輝く光の珠が出現した。
「まてまてまってストップストーップ!」
アルブスペスが左の掌をアテルスペスに向けて上下に振る。
「なんだ?」
一真はアテルスペスの動きを止め、聞き返した。
「それ、なに!?」
レイギがアルブスペスの指で爆炎拳の光球を指差しながら聞いてくる。
「何って、爆炎拳」
「爆炎拳!?」
「爆炎の魔術と障壁の魔術を組み合わせた魔法拳だよ。習った魔術使って編み出した」
このやりとりやった憶えがある、と思いながらも一真は答えた。
「魔術!? 使えるかボケ! なんだそれずりー!!」
レイギの怒りを示すようにアルブスペスがアテルスペスを指差したまま地団駄を踏む。
「ずるくない! こっちに来て必死で習って使えるようになったんだから!」
一真は無理筋だと思いながら言い返した。
「いやでもおかしいだろ! こいつら格闘専用機だろ! なんで魔法使ってんだよ!!」
当然の疑問だと一真は思う。
レイギの言うことはもっともだと。
純粋な格闘だと思ってたら魔法を使ったのだ。
これはやられたら戸惑うだろうと一真自身も思う。
だが、だからといって使わねば勝ち上がれなかったのだ。
だからこそ、押し通さねばならない。
「おかしくない!
チャクラブースターで魔力も増幅するし。
攻撃だって拳に載せて殴ってる!
間違いなく格闘だ!」
「えぇぇぇ、納得出来ねえよ!」
レイギの声に力が無くなってきている。
もう一押しだ。一真は言い張る。
「納得してもらわなくても、俺の戦い方はこれだ!」
「ちっ」
舌打ちが聞こえた。
「そうかよ! もういいさ」
大きく息を吐く音。
その後に、アルブスペスが構えを取る
一真も、同様に構えた。
「もう、言い合うこともないだろ。コレで白黒付けようぜ」
レイギがアルブスペスの両拳を軽く挙げて、言った。
「ああ。勝っても負けても、文句なしだ!」
「応ともよ!」
一真の声に、レイギが応える。
息を吸って、吐いた。
と同時に、アテルスペスとアルブスペスは動く。
互いに駆けて距離を詰めた。
「「ぉお!」」
気合いの一声も同時だ。
距離は近く互いの速度も速い。
何か準備する時間はない。
互いの拳を空いた手で対する。
拳打を払い突きを避け横拳に流し打突を押して逸らす。
一瞬四合の応酬。
「ちぃ」「くっ」
やはり一真よりも地力はレイギの方が上だ。
一真の攻撃はレイギが全て処した。
レイギの攻撃を一真はいなしきれず、腕に痛みが残る。
「この距離!」
レイギの声と共に次の応酬が始まった。
打ち払い突き逸らし殴り流し。
「俺のが! 上!」
その通りだった。
金城流格闘術。絶望を寄せ付けぬ色。希望の白。
神前戦儀、決戦決儀最終戦。
フィルスタの優勢で始まった。




