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17 「0」


「どういうことだ?!」


 一真の混乱は収まらなかった。

 白いアテルスペス、いやアルブスペスに自分が乗っているとはどういうことなのか。


「お前が俺? アテルスペスの兄弟? 一体何を言っている!?」

「そっちの俺はラノベとかSFとか読まないタチか?」


 帰ってきたレイギの返答は一真が望む物ではなかった。


「そうだが! それと何の関係が」

「そっか。じゃあパラレルワールドとか分からないか」


 パラレルワールド、という言葉には一真は聞き覚えがあった。


「たしか、子供の頃アニメで聞いたような気がする」


 一真は埋もれかけた記憶を思い出す。

 ドラえもんのアニメだったような


「並行世界って言ってな。

 ある世界から別れて、並行して存在する別の世界のことなんだが」


 アルブスペスが小さく前にならえに手を揃え、上にあげた。

 2つ並んだ世界を表現しているのか。


「分かりにくいかな。そうだな。

 浦島太郎が玉手箱を開けて宝を手に入れた世界。

 玉手箱を開けずに思い出だけ抱えて生きた世界。

 その2つが並んで存在し続けている、って感じかな」


 レイギの出した例に一真は引っかかりを覚えた。

 内容を反復し、思わず口に出す。


「まってまって。浦島太郎は玉手箱を開けてお爺さんになったんだろ」

「え、お前の世界だとそうなの? こっちの絵本だと開けずに砂浜に埋めるんだよな」


 困惑気味の声でレイギは言った。


「ともかく、同じだけど違う2つ以上の世界があるって事だよ」

「別の世界、ってことは」

「そう。とある人物と同一の人物がいるってこと。

 俺とお前みたいにな。

 だから、俺とお前はどっちも金城 一真。

 同じ人物なんだろう。たぶん」


 レイギの言葉は段々と弱くなっていく。


「たぶんて」

「俺にも確信は持てない。

 実際に2つの世界を見比べた分けじゃねぇし。

 納得出来なかったら似たような人生のそっくりさんとでも思えば良いさ」


 アルブスペスが頭を掻くような動作をした。

 推測に推測を重ねた論か、と一真は思い、考える。


「じゃあ、なにか。

 たまたま親が金城剛史って格闘家で同じ名前の金城一真って男がいた。

 そしてたまたまその二人が揃ってこの世界に来て、戦儀にでた。

 そんでたまたま揃ってここまで来た、ってことか?」


 一真は言ってて変に思った。

 どれだけの偶然があればこうなるのだろうと。


「そうじゃねぇの?

 気付いた時は俺もビックリしたさ。

 笑うことしかできないくらいにな」


 レイギはそう言った。

 確かにあのときのレイギは大笑いしながら去って行ったことを一真は思い出す。


 ため息を1つ。お互い同時に。


「なんだ。真似すんなよ」


 レイギが言う。


「そっちこそ」


 一真が返した。


「「ふふ、ははははは!」」


 同時に笑い声を上げる。


「ホントにお前は俺と同じ人間みたいだな」


 一真は笑いながら言って、自分の言葉を腑に落とした。

 言葉に出して、改めて強く納得したのだ。


「はは、俺もそう思うよ」


 レイギも同じなのか、似たような声色で言う。


「で、なんでレイギなんて名乗ってんだ俺」


 一真はレイギに疑問を聞いた。

 一真は偽名を名乗ることはない。

 だからこその差異が余計に気になるのだ。


「お前はどうか知らんが、俺はアイツが嫌いでね」

「アイツ?」


 アルブスペスの両腕を広げて掌を上に向けてレイギが言い、一真が中身を聞いた。


「ああ。親父だよ。あんまり話したくはない。あのクズ」


 恨みがこもった言葉に、一真は無意識に足を退く。

 父が嫌いなどと、想像もできない。

 だが、目の前の自分は嫌いだという。

 何があったのか、だがレイギが聞いて話してくれるとは、一真には思えなかった。


「無理矢理叩き込まれた技は役に立ったけどな。

 荒事厄介事、悪い事。ロクなもんじゃない。

 貰ったモンは皆嫌になっても、技は使うしか生きていけなかった。

 だからせめて、名前を捨てようと思った」


 ようやく一真は理解した。

 目の前の自分は、自分と元来は同じ。

 だが決定的に、自分とは違う人生を歩んできたのだ。


 服装や髪型、言葉使いだけてはない。

 生きてきた道が、そもそも遠い。


「そう考えて、逆にした。

 一から零、真から偽。零偽。

 ちと変な響きだが、気に入ってる」

「そうか」


 一真は短く返した。

 他に何か聞けることもない。

 自分を語れば自慢になるかもしれない。

 一真にはもう、レイギと何を話せばいいか、分からなかったのだ。


「ああ、別にお前を羨んじゃいない」


 アルブスペスが首を横に振った。レイギの声は弾んでいて、暗さは無い。


「最後にゃ刺されて人生終わったが、それなりに思い返せば悪くない人生だったからな。

 ダチもいたしそれなりに稼いで生活も出来た。趣味もあった」


 両腕をバンザイしてレイギは高らかに叫ぶ。


「それにこの世界に来れた!」


 レイギの叫びに、一真の心が晴れた。負い目はない。


「だから俺は、レイギ! この名を高らかに名乗って、この世界で生きていく!」


 喜びに溢れたレイギの声に、一真は口元をほころばせた。


「そうか」


 先ほどとは違って、一真は明るく返す。


「なら俺も言おう。俺は父に感謝している。

 俺を立派に育ててくれた。もっと恩返ししたかった。

 自殺なんかしやがって、もっと長生きして欲しかった。もっと話したかった!」


 一真は両の拳を握りしめ叫んだ。


「だから、俺は金城一真! この名を高らかに叫んで、この世界で生きていく!」


 レイギを真似して叫び、同じように両腕を天に向けて上げた。


「良く言った!」

「おうとも!」


 二人の間に光球が出現する。この世界に来て5度ほどみた光の珠だ。


「「ならば!」」


 緑色の光の中に「3」と読める文字が書かれている。


「「あとは!」」


 緑色の光球が消えてまた現れる。次の文字は「2」だ。


「「戦うだけだ!」」


 一真はアテルスペスと共に/レイギはアルブスペスと共に/両者同時に構えた。


 腰を軽く落とし、両拳を軽く握って体の前に。

 右手を少し相手に突き出す。

 全くの同じ構え。


 光球が赤くなり、「1」を示し、両者は右手に力が入る。


「「いくぞ!」」


 光球が赤い「0」を残して消える。




 決戦が、始まった。


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― 新着の感想 ―
[一言] 同一人物だったとは!熱いですね。
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