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07 VSデカドス:ゲティンドーラ

 アテルスペスに乗り込みながら、一真は考える。


 大丈夫、一撃をまずしのぐ。

 そのために用意した合成魔術もある。

 《はばむかべ》を一度に六枚、重ねて出すものだ。

 接近戦ならまだしも、砲撃ならば、防げる。

 防ぐタイミングも、アテルスペスが勘として教えてくれる。


 デカドスのバルドが駆る神機については、背中の大火力砲しか情報が無い。

 だから、一真の準備は万全とは言えないまでも対抗出来る。

 そう考えた。


 体の各部に金色の輪を付け、搭乗シークエンスが終わる。


 そういえば。

 ソーラは無事だろうか。

 一真は彼女の笑顔を思い浮かべる。


 石化病の進行は速くはない。

 個人差や、部位によっても石化が進む速度は変わると、一真は聞いていた。

 戦儀がある二週間ほどに致命的なことにはならないだろう。

 それでも、一真は心配だった。


 大きく顔を振って、思いを振り払う。

 後ろをみては、負ける。

 前を見ろ一真。

 そして、勝つのだ。

 一真は息を大きく吐き、拳に少し、力を入れた。


 光の渦が、アテルスペスを包もうとしている。


 目をつむり、もう一度息を吸って、吐いた。

 見開いて、声を出す。


「勝つ!」


 アテルスペスを光が包み込み、待つこと数瞬、既に周囲は戦場となる平原だった。


 少し遅れ、もう一つの光の渦が目の前、数十メートルのところに湧き上がる。

 その中からデカドスの神機が現れた。


 独特の、そして大きなシルエットだな、と一真は注意しながら考える。


 まず目に付いたのは巨大な頭部だ。

 頭としては巨大で、肩幅と同じ幅、縦がそれの半分くらいの大きさをしている。

 横向きにスリットが三本あり、それぞれからカメラアイが覗いていた。

 胴体も太く角張っており、硬そうだ。

 脚も太く真っ直ぐで、間接らしき切れ目でようやく柱ではなく脚だと分かる。

 腕は普通に見える。

 角張った硬そうな装甲を付けた普通の、ロボットの腕だ。

 右に銃を持っている。

 背中の砲とやらは、正面からは見えない。


 全体的に大きく、アテルスペスの頭2つ分くらい、アテルスペスより大きい。


 現れてから少し間があって、バルドの声がした。


「ふむ、待たせてしまったかな」

「いや、俺も今来たところだ」


 軽口のような、言葉が行き交う。


「それがゼクセリアの神機か。よい神機なのだろうな」

「だろう?」

「だが、期待はできんな」


 期待出来ないとは、二日前の会話だろう。

 初撃を凌げるか。


 大きく息を吐いて、一真は言い返す。


「言ってろ」


 正直な所、一真の胸中は不安しかない。

 準備はしてきた。

 だが、バルドがどう撃つかは、そしてどれほどの威力があるのか。

 それ以外にも不明な点は多い。


 一真は魔力を練り始める。

 準備できる時間が多ければ、咄嗟に使うよりも強固な防壁ができる。

 一真の練度では心なしか、程度ではあるが。

 と、そこまで考えて一真は策を変えることにした。


 目の前の神機は特に何かする様子はない。

 よもやさほど大きくない銃からの一撃で今まで終わらせてきた訳ではないだろう。

 一真は確信を持って選択肢から外した。

 右腕の銃は筒の径が小さく、どんな神機も一撃とはいかないだろうからだ。


 とすれば、噂の背中の砲とやらだが、正面からは見えない。

 大きな頭部を持つため、肩から前に出す、という分けにもいかない。


 ならば、初撃には必ず準備が必要だ。

 その徴候を見て、対処すればいい。

 いや、そもそも何かされる前に爆炎拳を叩き込めばいい。


「ふふ、大した自信だ」


 何かを察したのか、笑いを含みながらバルドが言った。


「そっちこそ」


 軽く言い返しながら、一真は構える。アテルスペスが構える。


 これは油断だ。


 このとき一真は無意識に油断していた。


「では、やろうか。そして刮目せよ、天下に轟く号砲を!」


 バルドがそう言った直後、アテルスペスとデカドスの間に光球が現れる。


「なら、アテルスペスと俺が、迎え撃つ!」


 光球が2を示した。


「やってみせろ!」


 1。

 一真は魔力を練り、脚に力を込める。デカドスの神機は何もしない。


 0。

 光球が赤い字を示すと同時に一真は走り出す。デカドスの神機は両手を挙げない。


「《爆炎拳》!」


 一真はアテルスペスの拳先に爆炎を込めた赤い光の珠を作り出した。

 飛び込むように肉薄、振りかぶって、叩きつけようとこぶしを繰り出す。


 後ろ向きに、デカドスの神機が倒れた、ように一真からは見えた。


「っ!?」


 拳は空を振り抜き、爆炎は炸裂しない。


 デカドスの神機は両足を投げ出し腰を地面に付ける格好になった。


「な」に、と言い切る前にバルドが

「では、また神域の談話室で会おう」


 言うと同時、デカドスの神機は後ろ向きに猛スピードで走り出す。

 脚の裏の、無限軌道が高速で駆動し、砂煙を巻き起こした。


「貴様はどうぞゲティンドーラの砲弾を味わってくれ」


 唐突な脱兎の如き後ろ向き走行に一真は思考を止めて見送ってしまう。


「え、えぇぇぇッ!」


 思わず一真は叫んだ。


 無限軌道を用いたゲティンドーラは速く、先制を取ることは不可能になっている。


「なんで、だ?」


 疑問型で口には出したが、一真にはバルドの目的が既に分かっていた。

 離れて撃つ。

 大砲を使うのなら、当然ではあった。

 思い着かなかった事に一真は歯を食いしばって小さくなる敵をにらむ。


 アテルスペスにはブースターやらスラスターやらの移動装置はない。

 二本の脚で駆けるしかないのだ。

 《はじくかべ》で跳ねれば速度も出るが、これでどうにかなる距離ではない。


 唐突に、一真の脳裏に1つの事が思い浮かぶ。


「あっ」


 戦車。

 一真がいた世界であった兵器の1つ。

 強力な大砲と強力な装甲とそれを支える速い足をもつたたかうくるま。


「ああああああああああ!!」


 砲は見えなかったが、彼のゲティンドーラは、おそらくそうなのだろう。

 一真は結論付けた。


「まずい!」


 遠くから、手の出せない位置から、強力な大砲を撃つ。

 豆鉄砲如き関係の無い装甲と、距離によって一方的にだ。


「まずいまずいまずいまずい!!」


 距離を離せばアテルスペスには攻撃手段がない。


 一真/アテルスペスは爆炎拳の光球を消して直ぐに走り出し、魔力を練った。

 攻撃の為では無く、防ぐために、準備をする。


「あ、アテルスペス! 頼む!」


 口に出しながら、一真は強く祈った。


 アテルスペスのセンサー類は一真に感覚や勘として情報を伝える。

 魔術障壁は出してから時間が経てば立つほど、脆くなる。

 少しでも防ぐ確率を上げるために、砲撃と同時に、出来れば着弾と同時に出したい。


 タイミングは、アテルスペスが一真の勘として伝える警告だけだ。


 時は直ぐに来た。背中に走る怖気を受け、一真は右手を前に出す。


「《六華障壁・二重》!!」


 アテルスペスの前に12の魔術障壁が出現した/遠方で何かが光った。


 展開が終わると同時に爆発。怖気は終わらない。

 恐れのままに一真は横に飛ぼうとする。


 12の障壁、その中心を次々に鉄杭が砕きながら貫いた。

 アテルスペスの右腕を貫き砕き、二の腕からはじけ飛ぶ。


「があああああああああああああ!!!」


 痛みが一真を襲った。

 損傷は痛みとして一真に伝えられる。

 今、一真は腕を丸ごと失った痛みを味わっていた。


 そう、砲撃は一真が出した渾身の防壁12枚を貫通したのだ。



***********************



「ほう、初撃を凌いだか」


 神機のコックピットで、スコープを覗きながらバルドが呟いた。


 デカドスのゲティンドーラは脚裏をキャタピラとして接地している。

 それだけではなく脚の各部からアンカーを出し、自らを固定していた。


 そして、足先は標的を向けながら、腰から上を一八〇度回して背中を前に向けている。

 胸部ブロックとなる胴体の上から真っ直ぐと、脚より長く砲身が突き出ていた。

 そう、一真からは見えていなかっただけだ。

 背中の大砲は、最初から背中にあった。

 そのままの形で後ろを向いていたのだ。


「ははは、やるではないか。次も、爆槍弾で良いかな」


 後ろ側、直立状態では胸だった部分の装甲が展開し、煙と共に穴を外に露出させた。

 腰にあったサブアームが脚部の弾倉から巨大な砲弾を取り出す。

 左腕が後ろ手に砲弾を受け取り、穴に装填した。


 巨大な頭にあるカメラは既に敵を捕らえている。

 直立すれば後頭部に位置するそこは、巨大なカメラアイが付いていた。

 頭が大きいのはコックピットと観測機器とコンピューターを1つにしたからだ。

 つまり、かなりの遠距離からでも正確な射撃が出来ると言うことを意味している。


 砲兵は戦場の神という。そして戦車は戦場の主役だ。


 ならば、これは正しく、戦場の主神なのだろう。


 機動力と装甲、そして火力を併せ持つ、正しく戦場の神。


 高速自走式超大火力砲、戦場を支配する神の如きもの、鉄血の女神ゲティンドーラ。


 彼女は今ここに、降臨している。


「ふは、ははは、何発凌げるかな?」


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