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 幕間 少し昔の話

 ゼクセリアの王子であるセレン。

 彼は、神前戦儀控え施設の食堂での記憶を思い返す。


 今思い返しても不躾であった。

 セレンはその時、彼が持っている物を指差して疑問をぶつけたのだ。


「その料理は?」

「これか。これはな、スカイドという。我が国に伝わる料理、らしいな」


 腰に剣を佩いた体格の良い男の返答に、セレンは疑問を抱いた。


「らしい?」


 四角い器に盛られた、肉と穀物。

 肉は薄切りを煮たもの。

 そして穀物はセレンがよく知る者だ。


「作り方も材料もウチの国にはなくてね。

 なんでこんなのがと思う」


 コップのお茶を一口啜って、金髪の男は答えた。


「味も、たいしたことないしな。美味いは美味いが、好みじゃない」

「そうか。では試してみるとしよう」

「ああ、そうしろ。右から二番目の戸の、一番上右から二つ目にある」

「ありがたい」


 セレンは棚から取り出し、調理器へ入れてボタンを押す。


「ところで貴方はどこの国の奏者なのですか? 私はゼクセリアのセレンです」

「セレン? ひょっとして、神童とかって噂の、王子様か?」


 男は器から顔を上げてセレンを見た。セレンは正面から見返す。


「神童かどうかは分かりませんが、王子です」

「へえ。いい人脈ができそうだ。

 こっちはセコンダリアのキンシィ・ディマドゥスっていうんだ」

「ディマドゥス? セコンダリアの大貴族、大公家ディマドゥス!」


 セレンはちょっと大袈裟なくらい驚いた様子を見せた。

 面識がないとはいえ、この場で先に挨拶をしないのは良くない。


「ただ生まれがいいってだけさ。お陰で何するにも面倒でね。

 普段から剣振るぐらいしかやることがない。お陰で今回、戦儀に出られたんだがな」

「これはこれは。失礼を」

「よせやい。貴族なんざガラじゃねぇ。仕事や交流も兄貴に任せっきりさ」


 ため息を1つして、キンシィは食事に戻った。


 セレンも温めが終わったのを知り、調理器から取り出してキンシィの前に座る。


「しかし、セコンダリアでコメ料理とは」


 袋を開けながらセレンは呟いた。


「コメ? この白いの、コメっていうのか」


 呟きを聞いたキンシィが反応を返す。


「ご存じ、無かったので?」

「ああ。弟がここに来たら絶対に食べて感想を言えってうるさいから食べただけさ。

 俺個人はスカイドになんの想いももっちゃいない」

「なるほど」

「ムギかソバがあれば十分だろうに。

 コメなんざ作ってる余裕、セコンダリアにはないだろうよ」

「いえ、そもそもコメは寒さに弱く、耕作には水を沢山使います。

 セコンダリアでは作れないでしょうね」

「ああ、そうなのか。ウチは寒いからな。水も冬に雪が沢山降るくらいだ。

 春のうちに貯水池に貯めておかなきゃいけないくらいだ」

「ゼクセリアでも一部地域で作って居るぐらい。

 お隣の国では大規模耕作してます。

 手間の割りに大量の可食部が出来るので、そこは羨ましいですね」

「はっ、ゼクセリアはコメに頼る様な農業してないだろう」

「こちらはご存じでしたか」



 その後も話が弾み、セレンは生涯の友を得た。


 奇しくも、次の戦儀はゼクセリアとセコンダリアの組み合わせである。

 セレンの計画に乗ってくれた遠くの友に、彼は思いを馳せた。

第二章終了です。

おつきあいいただきありがとう御座いました。

引き続きよろしくお願いいたします。

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