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17 VSティルド:GFハルファス モードB


 弾性のある魔術障壁で上に逃げた一真は即座に切り札を使う決意をした。

 しかしそれは少し構成に時間が掛かるものだ。


 ハルファスに目を向ければ、計16のガトリング砲は動かない。

 それらを抱えるハルファスの頭部はアテルスペスに向けられていた。

 カメラアイが不気味に庇の影から光っている。


 何故動こうとしないのか、一真には分からない。

 だが一真は上空にいる時間を利用し、新たな合成魔術を構築し始める。


「ふ、ふるどらいぶ? やるっち!」


 ヘマの声。一体誰に聞き、誰に言っているのか。

 不穏な響きを一真は感じた。

 嫌な予感を押し殺しながら、魔術の構築を急いだ。

 同時に、ハルファスの動きに注視する。

 攻撃動作があれば、魔術を中止して回避に移らねばならない。


 ハルファスの翼に据えられた計10のガトリングが再び畳まれていく。

 翼も同様に、ハルファス自体を覆うように閉じ始めた。

 その足元で、土煙が湧き起こり周囲へと広がっている。


「ふるばれる? なんでもいい!」


 翼が完全に閉じると同時、ハルファスは飛翔した。

 塔のようなシルエットの下部、翼の下端から火を噴いてロケット上昇したのだ。


 一真の目前を一瞬で上に通り過ぎ、上空でハルファスは翼を開いた。

 その一瞬後、ガトリングは全て下に――つまりはアテルスペスに向けられていた。


「ふるふぁいあ? それでやれンなぁ!」


 まずい。

 一真は魔術を少しだけ変更して実行する。


「《飛跳陣》!」

「すりーえふ、デモリションストーム? やっちまぁ!!!」


 発生した魔術障壁を一真が蹴るのとハルファスの一斉射は同時だった。


 激しい雨のような密度の弾幕は逃げ遅れたアテルスペスの右足を破壊する。


「ぐぅ!」


 激痛が走った。

 アテルスペスと一真は同調している。

 損傷は痛みとなって一真に伝わるのだ。

 だが一真には少しの安堵と共に、弾性のある魔術障壁を殴って反射で移動した。


 破壊されたのは右足だけだ。

 アテルスペスはまだ動けるのだ。


「にがんな!」


 飛跳陣は簡単に言えば弾性のある魔術障壁を複数作り出す、それだけの魔術。

 ただし用途は防御ではなく回避及び移動だ。

 複数の《はじくかべ》を周囲に作り出し、飛び跳ねて動き回るための、陣だ。


 右へ、上、左、右、蹴ると見せかけ落下、掴んで一時停止。


 ハルファスのガトリング群がアテルスペスを追う。

 アテルスペスは予測されないように右へ左へ魔術障壁を伝って跳ね回った。

 アトランダムに見えるように動きながら、一真は目的の場所をにらむ。


「あたっち! はよう!!」


 火線を出し続ける音に、ヘマの焦る声が混じった。

 一真は痛みを意識しないようにして、ハルファスの隙を探し続ける。

 弾は無限ではないはずだ。


「あてい! あてい! あてい! なンぜあてな!?」

「《飛跳陣》!」


 追加の障壁を作る。


 左、上、後ろ、上、左、前、少しでも近づけ。


「こうち? こがよか!? ハルファス! もっと!」


 ハルファスの射界が広がり始めた。

 当てることを優先しだしたのか。


 完全な隙ではないが、ここを逃せばやられてしまう。

 一真は障壁を大きく蹴った。


「あっ!」

「《はじくかべ》」


 囲い込むように動いていた火線の檻から一真は上に逃れる。

 もう1枚障壁を用意して、再び上に。


「ッここだ!」


 ハルファスの高度を抜いた。


 目前にハルファスの背が見える。

 翼にびっしりと着いた箱は穴だらけで、もう弾を出すことはない。


「や、やだっ」


 上昇の勢いを使ってアテルスペスを前に一回転させる。


「うわりゃあああっ!」


 その勢いのまま、一真はアテルスペスの左のカカトをハルファスの背にぶつけた。


「きゃうっ!」


 ハルファスのスラスターの火が消え、落下する。


「まだ、まだっ! やらんち!」


 翼が動き、ハルファスが自身を回す。


 またこちらに体を向けて一斉射をする気か。

 させない。

 一真は頭上に障壁を作り出して両腕で殴って落下速度を上げる。


 半回転したハルファスの懐に入り込み、膝を腹部に押しつけた。


「やっ! はなれっ!」


 密着するアテルスペスに、ハルファスは翼のガトリングを向けようとする。

 ガトリング砲の長さと角度が足りず、銃口を向けられない。


「この距離じゃ!」


 一真/アテルスペスが腕を振り上げる。

 ハルファスが3連装ガトリング砲から手を離して振り上げた。


「まだっ、終わらんきに!」


 前腕に折りたたまれていた近接用の手斧が開き、ハルファスの手に収まる。


「させなっ!」


 一真/アテルスペスはハルファスの両腕を掴んだ。


「ぐぎ、は、はなさ! はなさンさ!」

「この、ま、ま、落ちろおおおお!」

「やだっ! やだやだ、!」


 動こうと抵抗するハルファスを一真は力尽くで押さえ込む。


「やあああああ!」「うわああああ!」


 2機はそのまま、地上に落ちた。


「ぎゃっ!」「ぐっ!」


 落下の衝撃で土煙が立ち込む。

 お互いの近さにも関わらず、一真からはハルファスは見えない。


「ぐぅうううう!」


 両手と、左膝、そしてアテルスペスが失った右足から激痛が走る。

 まだ、勝負は決まっていないのに。


 土煙が収まっていく。アテルスペスの左右に、壁があった。


「あだしの、勝ち、やね」


 壁ではない。

 ハルファスの翼だ。

 ガトリング砲は全て外したのか、無くなっている。

 小型キャノン砲は落下の衝撃か、全て破損していた。


 その翼の内にびっしりと抱えられたロケット砲弾。

 それがまだ、無事だった。


「ぐうううう《はばむ……、かべ》ッ!」


 一真は痛みを抑えて左右に魔術障壁を貼る。


「無駄ンさ! ロケット弾すべてに耐えられんち!」


 1枚では無理だ。

 そして無限に貼ることもできない。


「そン腕と脚で、あだしとハルファスからン逃げられンちな!」


 ロケット弾が、発射される。

 一発ずつだ。

 爆発で発射されたロケット弾が誘爆しないように。


「これで! あだしの勝ちや!」


 3発耐えて、障壁は割れた。


「《はばむ、かべ》!」


 割れた隙に打ち込まれないように即座に障壁を貼る。


「まだ、まだまだあるちに!」


 一目では数え切れない程のロケット弾が左右にあった。


「まだ、まだだ」

「なんさ!?」


 一真が呟いて、ヘマが聞きとがめる。


「まだ負けてない!」

「ひっ、は、早く認めンよぉ!!」


 怯える声に、一真の心のどこかで、ちくりと痛んだ。

 それでも、負けるわけにはいかないと一真は勝ちの一手を使う。


「《爆炎け――》いや、違う。《爆炎ヘッドバット》オオオオ!!」


 アテルスペスの額先に光球が発生した。

 赤く、輝く光の珠だ。


「あっ、やっ、やだっ!」


 ハルファスの頭が逃げるように激しく動く。


「やめてやめてやだやだやだああああ!」


 一真/アテルスペスは悲鳴を聞きながら、頭を振り下ろした。




 神前戦儀、序戦一組第6戦。

 勝者、ゼクセリア。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

いかがでしたでしょうか?

少しでも良いなと思っていただけたら幸いです。

ついでに評価・ブックマーク等もしていただけたらなと。


引き続きおつきあいください。

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