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16 VSティルド:GFハルファス モードC②


 厄介だ。


 跳ね起き、ハルファスの射線から横に逃げるように走り出しながら、一真はそう思った。


 全身に痛みはない。

 いや、右肘に少しだけ痛みがある。

 ということは、装甲を傷つけるほどの威力があの全身の無銃身銃にはない。

 にもかかわらず、アテルスペスは吹き飛ばされた。


 簡単だ。

 一つ一つの威力は低い。

 だが一度に大量の弾が当たることでその分衝撃が増える。

 それだけの話。

 それだけの話が、どうしようもなく、厄介だ。


 アテルスペス、つまり一真には魔法拳による攻撃しかない。

 魔術つぶてのかぜではあの装甲版には無力だろう。

 他の魔術を単純に使っても、そうだ。


 破壊の嵐が後ろから追いかけてくる。

 ハルファスが3連装ガトリングを撃ちながら腕を振るだけで撒き散らす弾丸の奔流だ。


「《はじくかべ》」


 追いつかれる前に一真は上に逃げる。

 上にしか、逃げ場はない。追撃は直後だった。


 体を覆う装甲版の、肩口から出た小さいキャノン砲だ。

 一真は体を捻って躱す。

 直ぐにハルファスが3連装ガトリングを向けて来た。

 重力落下に合わせて「《はじくかべ》」胴から魔術障壁落ちて横に飛ばされる。

 ガトリングの弾丸が魔術障壁に殺到し、2,3発跳ねてからパリンと割れた。


 飛ばされた先に「ぐっ、《はじく、かべ》!」右足をのせ大きく蹴っ跳ぶ。

 再びアテルスペスはハルファスの背後に立った。


 方法はある。用意していた戦法のうち、1つ。


「《はばむかべ》」


 前方に薄い魔術障壁を展開。


「無駄っちや!」


 ハルファスの背中から大量の弾丸が発射される。

 魔術障壁が砕け散るのに合わせ、一真は後ろに跳んだ。


「《まぼろしおくり》」


 自分を隠し、幻影のアテルスペスを振り返るハルファスの前方に向けて走らせた。


「逃げてンもあだしのハルファスが撃つ!」


 ハルファスは幻影に両腕のガトリング砲を向ける。


 今が、機だ。


 ハルファスの発砲に合わせ一真は魔術を行使する。


「《はばむかべ》《はじくかべ》」


 硬い障壁を板をL字に合わせて角をハルファスに向けるように。

 弾力で跳ね返す壁を足元に。


「まば、ちが、しまっ!!!」


 慌てるヘマの声と共にハルファスが左腕の3連装ガトリング砲を外に向け振る。

 アテルスペスを見つけたのかハルファスのカメラアイが赤く光った。


「ここだ」


 一真/アテルスペスが弾力のある障壁に脚を踏み出す。

 ガトリングの銃口がアテルスペスを捉えた直後、障壁と脚力を持って空中へと踊り出た。


「ハルファス、吹き飛ばさ!」


 ハルファスの装甲版表面の箱から無数の弾丸が発射される。


 弾丸は一真が用意した障壁に斜めから当たり、逸らされた。

 威力のあるガトリングなら、そのまま砕かれただろう。

 キャノン砲でもだ。


 アテルスペスが当たれば衝き飛ばされていただろう弾幕をかいくぐった。

 跳躍の勢いのままガトリング砲の上に着地する。


「おまん!」


 詠唱を初めては間に合わない。

 故に、一真は訓練の成果を出した。


「《双撃・雷震掌》」


 複合魔術。一真はアテルスペスの両手を広げ、手のひらに金色に輝く光球を生成する。

 左右の光球、それには莫大な雷の力が重点されていた。


「はっ!」


 アテルスペスが光球2つ共をハルファスの装甲版に押しつけ、後ろに飛び退いた。

 銃口から少しズレた位置に着地する。


「なんっ」


 ヘマが声を漏らした。雷撃は、ハルファスには届かない。


「お、おまん」


 弱気だったヘマの声に力がこもる。


「これでハルファスは倒れンち!」


 ハルファスがガトリング砲をアテルスペスに向けた。


 軽い、爆発音。

 爆竹がなったかのような、音がした。


 もう一度。

 更に一度。


 最初の爆発音が呼び水になったのか、立て続けに爆発が鳴り響く。

 ハルファスの装甲版から、立て続けに。


「なん? ちが、や、やめ、やめいハルファス!」


 ハルファスは撃たない。

 いや、ガトリング砲を撃たない。


「《はばむかべ》」


 一真は成功を確信し、魔術障壁を出す。


「やめっ! あだしは言っちなん! 言っちなん! それをやめろ!!」


 ハルファスは装甲版から、弾丸を発射していた。

 装甲版の小さい箱から、無作為に。無分別に。

 ただただネズミ花火を束ねたもののように、全身から銃弾の嵐を撒いていた。


 暴発だ。


 トリガーもなにもないただの箱が、どうして弾丸を何発も発射出来ていたのか。

 それはつまり、箱に詰めた銃弾を、電子制御で一つ一つ発射する装置なのだ。

 一真は友人にその動画を見せられ、機構に当たりを付けていた。


 莫大な電撃で電子制御を狂わせた結果の、暴発なのだ。


「やっ、動か! 動かんか! いまんば! いま撃たんば、勝つきん!!」


 ハルファスはガトリングの銃口を上げられない。

 上げて狙おうとすれば自らが放つ凶弾によって武器を壊してしまうからだ。

 恐らく、安全装置のようなものが作動しているのだろうと、一真は思った。


 撃ち尽くしかけているのか。

 ハルファスの嵐のような暴発が、疎らになってくる。


「《はじくかべ》」


 音の収まりを聞き、一真は再び跳躍した。

 装甲版に付いた弾体射出装置の弾がなくなれば、背後は安全だ。

 そう、考えてのことだった。


「あ、あだしは」


 空中に魔術障壁を作りだし、蹴る。ハルファスの頭上を越えた。


「負からん! 負けんいややが!」


 装甲版が、動く。


 アテルスペスは体を捻りながら着地し、一真は前のハルファスに目をやる。

 ハルファスの装甲版が展開し、表面を全て後ろに向けていた。

 そう、まるで機体を覆っていた翼を広げるように。


「ッ《はじくかべ》!」


 装甲版の銃口全てが自身に向いていたことに驚き、一真は障壁を展開する。


「もう、嫌! 嫌! 嫌!」


 ヘマの叫びが大きくになるにつれ、暴発は減り、無くなった。


「自棄やき! もう守っちなん!」


 ハルファスがアテルスペスから離れるように飛び退く。


「なっ!」


 今まで見せていた鈍重さが嘘のような素早さで、ハルファスは振り返った。

 その頭部、カメラアイの上にあった庇が伸びて鳥のくちばしのようになっている。

 装甲版、だと一真が思っていた翼の内側が、アテルスペスに向いた。


「ハナっちよんこしゃんとしとぅがようった!」


 折りたたまれるようにしていた、それらが全て。

 動きだし、銃口をアテルスペスを狙う。


 片翼上端にガトリング砲塔3小型キャノン砲2、

 下端にガトリング砲塔2小型キャノン砲1、

 間のスペースを惜しむようにロケット砲の弾頭がびっしりと。


「《はばむかべ》!」


 一真は体に走る怖気を抑え全力で障壁を作り出し横に走り出す。


「《はじくかべ》!」「逃がっしゃん!!」


 一真は跳躍。

 直後に爆発にもにた轟音。

 直下より吹き飛んだ土塊がアテルスペスの装甲を叩く。


「《はじくかぺ》えええええええ!!」


 あまりの物量に、一真は半ば悲鳴を上げながら逃げるための障壁を作り出した。


「もっと!

 もっともっともっと!

 寄越さン!

 寄越さンさ!

 ハルファアアアアアス!!」


 超火力弾幕、機動型破壊殲滅砲塔、焦土を作る凶鳥の悪魔GFハルファス。


 これがそのモード(Battle)


「ぜんぶ、もらっちうな!」


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