08 VSウェルプト:アンペールX①
先に動いたのは将軍のアンペールXだ。
剣を持っていない左腕をアテルスペスに向けた。
指先の穴から小さなミサイルが立て続けにして発射される。
多数の迫るミサイルに、一真は焦らない。
「《つぶてのかぜ》」
アテルスペス周囲の地面から石礫が飛び出てミサイルを迎撃する。
横合いから衝突、あるいは正面にぶつかり、爆発。
神機にはダメージがなくとも、ミサイルなら有用だろうという予想は正解だ。
無為に終わったミサイル達は破片を大地に散らした。
ミサイルを対処しながらも、一真は思考を続けている。
勝つ方法を。
勝機を掴む方法を。
今それがないのなら、作り出さねば勝てない。
故に動かず、相手の出方を見る。
一真はそうした。
失策だと気付くのは直後だ。
「超電磁リング!」
アンペールXの角から電撃が迸り、その頭上で大きな光のリングを作り出した。
将軍は頭を振って送り出すように巨大な光輪を飛ばす。
大きなリングは放物線を描き、アテルスペスを輪の中に閉じ込めるように襲いかかった。
「ッ! 《まぼろしおくり》」
アテルスペスを中に入れ、胸当たりで一瞬止まる。
瞬間、アテルスペスは上に飛び上がり抜け出した。
それは幻影だ。
咄嗟に一真は作り出した幻影を飛び上がらせ、抜け出したように見せたのだ。
「うん、まぼろしだね」
将軍には通用しない。
幻影だということを見抜いている。
そのまま光の輪が閉じ、だが何も拘束することなく消えた。
「えっ!?」
将軍は驚愕の声を漏らす。
幻影は一つではない。
一真はもう一つの幻影をアテルスペスに被せて姿を消した。
そして姿勢を低くして光の輪の下に抜け、拘束を逃れたのだ。
一真はそのまま駆けだす。今なら、殴れるのではという淡い期待だ。
「そこか!」
だがアテルスペスほどの巨体が動いて、音が立たないわけがない。
響く足音を聞きつけてアンペールXが再び腕を向ける。
姿を消していた幻影がなくなると同時、アンペールXの額から光線が発射された。
一真は横に転がるように光線を避ける。
光線はアテルスペスが居た場所を凄まじい音を出しながら溶かし穴を開けた。
煙すら立たぬ超高熱の光線だ。
アンペールXの腕がアテルスペスを追いかけ、転がった先へミサイルを発射した。
「《はじくかべ》!」
転がりながら地面を殴り、その反動と魔術障壁の弾性によってアテルスペスは中に浮く。
その下にミサイルが着弾し爆発が巻き起こった。
爆発を受けてアテルスペスはさらに高く飛ばされ、その先の地面で受け身を取りながら立ち上がる。
「やるね」
将軍の軽口には応答せず、アテルスペスは構えを取った。
機体が一定のリズムで上下している。
「そんな戦い方が、いつまで持つ?」
攻撃の手を止め、将軍は言った。
アテルスペスは搭乗者とシンクロしする。
動きを同調させることで細かい動きや搭乗者の技を反映することが出来るのだ。
しかし、搭乗者の動きが機体に現れるのはメリットだけではない。
現に今、一真が肩が上下するほどに息が荒いことが、将軍にも見て取れた。
それに、シンクロしているのは動きだけではない。
「だからと、言って。降参は、できない」
一真はゆっくりと、言葉を絞り出した。
「わかるよ。僕だってそうだ」
「アアッ!!」
将軍の言葉を合図に、アテルスペスは走り出す。
アンペールXの右手に大きく回り込むような軌道だ。
「むむっ!」
剣を持っている方へ行けば、ミサイルを出す腕を向けにくい。
と、一真の考えは単純なものだ。
「まずは!」
接近しながら拳先に障壁の球体を用意する。
一真に切れる札は少ない。
相手にも強いれば、その分不利は減る。
アテルスペスに向き直ろうとするアンペールXに、一真は拳を振るった。
剣を持つ腕を狙ったパンチは、少し体を傾けることで避けられる。
半身を相手に向けた姿勢から、アンペールXは剣の切っ先をアテルスペスに向けた。
「そこっ!」
全身を使った刺突を、一真は体を捻って避ける。
剣を突き出した姿勢から、アンペールXは更にアテルスペスに剣を振った。
「《はじくかべ》!」
咄嗟に出した魔術障壁で剣を防ぐ。
防ぎ切れず、障壁の効果も相まってアテルスペスは大きく跳ね飛ばされた。
「うわっ」
体を回転させ、速度を殺しながらアテルスペスは着地する。
距離が、空いた。
「超電磁リング!」
着地の隙を将軍は逃さない。
再び頭の角から電撃で作ったリングをアンペールXは投げる。
アテルスペスはリングに囚われ――
「《まぼろしおくり》」
リングを抜ける様に上に跳んだ。
「甘い、ミニリング!」
アンペールXは超電磁リングより下辺りに腕を向け、ミサイルを発射。
同時に頭の角から小さいリングを無数に作り出し、アテルスペスに向け放った。
「ぐっ、《はじくかべ》《はぜるひのや》ッ!」
アテルスペスは至近に壁を作り出し、壁に向け炎の魔術を放って爆発させる。
爆風によりアテルスペスが吹き飛ばされ、無数のリングが空を通過した。
ミサイルは地面で爆発した。幻影で隠れた何かはない。
アテルスペスは飛ばされ落下、その勢いで地上を数回転がった。
回転の勢いを利用し、立ち上がる。
「そのブラフ、40年前なら引っかかったかもね、リング!」
立ち上がって移動しようとしたアテルスペスに一つの小さな超電磁リングが襲いかかった。
「うわっ!」
転がり立ち上がった直後で少しよろめくようなアテルスペスは避けられない。
アテルスペスの右腕に超電磁リングがはまり、すぼまった。
「こ、これは!」
リングは無理矢理アテルスペスの腕を上げるように動き、宙に固定された。
一真は右腕を動かすが、リングがその場から動かない。
「これで、終わりだよ!」
アンペールXは天道剣を両手で持って、大きく跳び上がった。
「天道剣! 一刀両断!」
アテルスペスの遙か上空から落下しようとしているを、一真は見る。
「《ちらすかべ》《つらぬくいかづち》」
一真は左の拳先に黄金の光球を作り出した。
光球を手首を拘束するリング/アテルスペス自身の右手首に叩き込んだ。
超電磁リングがはじけ飛び、右腕が大きく後ろに弾かれる。
「がっ!」
電撃のシビれと無理に動かされた間接が、一真自身に痛みを訴える。
「あああああああっ!」
痛みを叫びで押し殺し、脚を動かして転がった。
退いた直後、アンペールXが剣を振り下ろしながらその場に落下、着地する。
「あああああ!」
一真が叫びながらさらに転がり、アンペールXの剣が空を振り抜かれた。
そう、アンペールXは剣を振り下ろして地面にたたき付けたのではない。
アテルスペスが避けるのを見て、切り返せるよう地面の手前で振って横に向けたのだ。
一真/アテルスペスは立ち上がって構えて拳先をアンペールXに向ける。
「ハァ-! ぐっ、ぐぅうう!」
意識が飛びそうになるのを、一真はこらえた。
「手を抜いたわけじゃない。けど、ここまでやるとは思わなかった」
将軍は切っ先をアテルスペスに向け、言う。
「あきらめるつもりはないんだよね。わかるよ。だから、いくよ」
多彩な武装、老練の技、超電磁神機アンペールX。
強敵は、一真とアテルスペスを叩き潰そうとしている。
「まける、ものかああああ!」
「気合いだけじゃね!」




