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 幕間 塩の国の料理


 ぱちぱちぱち。じゅわぁぁぁ。


 炭に脂が落ちて音を立てて弾ける。

 コンロに金網を載せ、網には食材が所狭しと並べられていた。


 コンロは大型の七輪に近く、中には成形された炭が素が据えられている。

 コンロと網はゼクセリアから持ってきた物だが、炭はティルドで仕入れた物らしい。

 セコンダリアで使われている炭はお隣であるティルドやフィルスタから仕入れている。


 食材はすべてセコンダリアで手に入る物だ。

 豚肉とキノコ類。そして魚。

 魚は干物にされた物だ。

 豚肉と魚は脂が浮き、キノコは炙られ香りが屋外だというのに強く立ちこめている。


 豚は何でも食べるから育てやすい。

 キノコは塩害に強く、造水所の地下で栽培されている。

 魚は海や川で採れるのだ。

 セコンダリアの川はほぼ汽水ではあるが、適応しているらしい。


 一真はセレンとキンシィと、コンロを囲んでいた。

 折りたたみの小さい椅子に座り、焼けるのを待っているのだ。


「焼けたか?」

「もう少し待った方が良いだろう」


 味付けは塩だけだ。

 香辛料の在庫はあるが、セコンダリア料理ということで使っていない。

 造水所の副産物でいくらでも出来る塩は輸出品にもなっている。


 一真達が造水所からキャリウス車に戻ると、このバーベキューの準備がされていた。

 御者達はもうすでに食べ始めていて、セレンは一真達を待っていたという。


 そうして焼き始めたが、一真はあたりに漂う匂いに、辛抱するしかなかった。

 焼けるのにどうしても時間がかかるからだ。

 セレンのこだわりで、薄切りはバーベキューではないと、すべての肉は分厚い。

 一センチくらいある。

 異世界とはいえ、豚肉に寄生虫が多いことは変わりない。

 入念に火を通すべきだろう。


「魚はもういいんじゃないか?」


 セレンが箸を使って焼けた魚を皿に取った。

 熱せられた脂がパチパチと泡になって弾けている。

 一真はそれに習って魚を取った。

 遅れてキンシィもだ。


 かぶりついた。


「あふっ、あふっ」


 一真はほこほこと熱い魚を口に空気を入れて冷ます。

 甘い。砂糖のような甘さではなく、脂と魚の肉から感じるほのかな甘さだ。

 そのあとに旨みがぐわっと一真の舌を襲う。

 少々の塩がそれらすべてを引き立て、「うま」と一真は呻いた。

 熱さで顎を速く動かすと魚肉は細かく噛まれ、さらに味をにじみ出す。


 十分に味わって、のみ込んだ。


「うっっっま……」

「はっはっは」


 一真の感想に、キンシィは大いに笑う。


「そりゃよかった。

 塩が地面を覆うようになってから、こんな大雑把な飯が増えてしまった、と聞いている。

 小さい漁村じゃ、毎日こうやって食うそうだ」

「毎日!?」


 キンシィの補足に、一真は驚いた。

 続く説明で、納得する。


「ああ。燃料の節約でな。住人が一とこにあつまってやるらしい」

「ああ、そうか」


 焼くにも煮るにも、とにかく料理には燃料が必要だ。

 木が育ちにくいセコンダリアでは薪は貴重品である。


「街じゃあ泥炭や型炭を使っているがな。魔法を使うやつももちろん多い」


 魔法で適度に火を通すのは難しい。

 火力を高めるのは楽だが一定の火力を長時間維持するのが難しいからだ。

 それなりに練習が必要だ。

 無論、魔法を習得できる才能も。


 皿が空になったころ、豚肉もいい色になってきた。

 焦げがついたところで脂が弾けている。

 何度かひっくり返したあとで、全体的にいい焼け具合だと、一真は見た。


 皿に取る。かぶりつく。


 脂があふれ、慌てて肉から口を離した。


「熱い! 脂!」

「おいおい、焦って慌てるなよ」


 呼吸を速くして口を冷やそうとする一真をセレンがたしなめる。


「ま、こういうのも醍醐味よな」


 はっはっはと笑って、キンシィは自分の皿に取った肉に息を吹きかけた。

 何度かそうしないと、食べられない程度には熱くなっている。

 一真の落ち度だ。


「水を飲め」

「あ、ああ」


 事前に渡されてたコップの冷たい水を一真は煽った。


「ふぅ……」


 口の中が冷え、残った獣脂の余韻が一真を幸せな気持ちにさせる。


「これ絶対美味い肉だ」

「アマル! 水もっとくれー」


 セレンが後ろを向いて声を出した。

 するとアマルがやってきてピッチャーに水を満たす。魔法で。

 丸い氷もいくらか入っている。


 アマルの魔法は一真からみてとても手際の良いものだった。


「ほう、手練れだな」


 キンシィが小さく言う。一真は頷いた。


「あまり、褒めないでください。その、恥ずかしいので」


 表情をあまり変えずに言うと、アマルは背を向けて歩き離れる。


 一真はやはり彼女に魔法を習いたいと思いを新たにした。


 ピッチャーからコップに水を注ぎ、一口飲む。

 魔法で出した水は水オンリーなのであまり美味しいものではない。

 不純物やミネラルで水の味は豊かになるのだ。

 だからセコンダリア以外なら通常、普通の水と混ぜて使うのが普通である。

 今回、アマルは混ぜてないらしい。


 だがそれでも氷で冷えた水は美味い。


 気を取り直して一真は豚肉にかじりつく。

 時間が経って幾分冷めてはいるが、それでもアツアツだ。


「うまっ」


 もう一真はそれしか言うことがない。

 若干の塩っ気と豚肉の味、焼きたての熱々。

 それだけで最高なのだ。


「ああ、しいたけもあるぞ」


 キノコは椎茸に似た笠が茶色いものや、細長い物、平たい物など。

 網に載せられた物だけでも豊富である。


「はっはっは、存分に食ってくれ。全部美味いぞ」


 キンシィの皿にはキノコ類が沢山載っていた。

 好きなのだろう。

 セレンの皿には豚肉が多い。


 一真は取った豚肉を食べきると、次は何を食べようか、網の上を見て少しだけ迷った。

誤字指摘、ありがとうございます

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