終焉と幸せ-告白・終-
その後、私の体は順調に快復していき、完治まであと何日というところまで来ていた。
病院にはしっかり行った。 元も連れて。
元は私の体が良くなっていくのを自分の事のように喜んでくれていた。
そんな元を見ていると少し笑えてくる。
そんな元を見ていると少し笑えてくる。
数日後。 私の体は完治した。
自殺する前の時の体の状態まで回復した。
元は、「祝いとして何処かにイイものを食べに行こう」と言い出した。
私はすぐに了承して、すぐに二人で歩いて、とある料亭まで行った。
「乾杯」
お互いに酒の入ったジョッキを持ってそれをした。
私は多分、酒は弱いほうだと思う。
小さい頃は大きくなったらお酒飲みたいなんてちっぽけな夢を掲げていたのに。
しかし、何故『酒に強い人』と『酒に弱い人』はいるのだろうか。
体の問題?
はたまた、本人の気だったり?
分からないなぁ。
元にも聞いてみたが、やはり分からなかった。
「さて、元。本題に入ろう」
私は急にそう言った。
「なんだい?」
元はきょとんとすることもなく、冷静にそう聞いてきた。
私は深呼吸をした後、口を開く。
「体も治ったから、『復讐』をしようと思う」
「誰に?」
元はまたもや冷静にそう言う。
私は3年前死のうと思った理由を説明した。
虐められていたこと。
その虐めに耐えられず、「嘘告白」をしようと思ったという事。
そしてその虐めっ子達に復讐しようと思っている事。
詳細をすべて話し終わった後、元は「そんなことがあったのか・・・」と少し驚いていた。
私は元のその反応を気にせず話を続けた。
「奴らが今何をしているのか、何処にいるのか。全て知っているよ
リハビリをしながらずっと調べていたからね。もちろん、連絡先も」
「何時いつ決行する気なんだい?」
私は少し考えて。
「2週間後、深夜に奴らを埠頭に呼び出す。
そこで決着をつけるつもりだよ」
元はその後からこの話には首を突っ込まなかった。
私はコツコツと準備を始めた。
人を完全に殺さず、傷つける方法とか。
必要な道具、必要な気持ち。
とにかく集め続けた。
自分に集められるモノを全て。
そして決行の日まで残り1週間。
過去の事を思い出していた。
虐められていたことは私にとってトラウマになっている。
思い出すたびに体が震え、吐き気を催し、軽度の人間不信に陥る。
こうなったのはあいつ等のせいだ。
肉体的だと、私は元のもとへは戻れなくなるので。
社会的、または精神的に。
殺してやる。
言葉で言っても通じない連中なので、少しばかり怪我を負ってもらおう。
殺しにならない程度に殺す。
誰にもバレず、静かに。
こうして私の「決意」は固まった。
決行当日。
私は元とデートをしていた。
もしかすると帰ってこれなくなるかもしれないから、やりたいことを全部やっておこうと思った。
いろんなところを回った。
カラオケ、ボウリング、水族館、動物園。
とても楽しい。
二人でデートをしたのは初めてだと今気づく。
そしてこの三年間の事を振り返る。
入院生活、死にたいという気持ち、元への好意。
後悔することも多い。
が、なんだかんだ楽しかった。
私の人生は今日で終わるのだろう。
さようなら、元。
さようなら、最愛の人・・・。
さて、行こうか。
私はタクシーで埠頭へ向かった。
あいつ等はもうすでにいる頃だろう。
私は覚悟を決めた。
拳を握りしめて。
数分経って、タクシーが停車する。
着いたようだ。
外は雨が降っていた。
私は降りる準備をしながら、窓越しに見えた三人を見ていた。
相変わらずうざい顔をしている。
吐き気がする。
持ってきたナイフをポケットに入れて、私はタクシーを降りた。
「久しぶりね・・・。私のこと覚えてる?」
私はその三人にそう言った。
「忘れるわけないでしょ。咲野・・・。
会いたかったわよ」
リーダー格の奴がそう返してくる。
「また虐めてほしいの?」
「単刀直入にいうわ。今日はあんた等を殺しに来たのよ」
私は覚悟した顔でそう言った。
「は?何?あんた。頭大丈夫?
殺す?無理に決まってるでしょ。高校の時、弱虫で抵抗もしなかったあんたが。
おまけに自殺未遂?笑わせるわね」
ケタケタと笑う女。
私は無心でそいつのそばまで歩いた。
ゆっくり、ゆっくり、普通に。
そして、
ドッ
少しばかり鈍い音が聞こえる。
私の目の前は刺したところしか見えない。
「作戦変更・・・」
私はそいつの腹からナイフを抜き、残りの二人に先が血で染まったナイフを見せつけた。
もちろん、二人はおびえている。
刺されたあいつは自分の傷を見ながら倒れていた。
嗚呼、実に滑稽だ。
私はおもいっきり走りながら、残りの二人の腹も刺していった。
地面が三人の血で染まる。
心地がいい。
あの三人が今、私の目の前で倒れている。
私の事を「助けてください」と言わんばかりの目で見ながら。
もちろん助けるつもりはない。
三人の事を気にせず、私はその場を去った。
きっとあの傷では死なないだろう。
しかし、救急車が呼べればの話。
返り血の付いた服を焼いて、証拠を消した。
数日後。
私が起こしたあの事件はバレていない。
良かったと思う。
やっと復讐ができた。
清々しい気持ちだ。
世間様は「復讐なんて意味はない」なんて言うけれど、あるじゃないか。
これで私は「本当の幸せ」を手にすることができる。
そう思いながら、私は元にこう言った。
「元、結婚しようか」