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告白シリーズ  作者: くづもち
4/6

執着と想い-告白3-

キスを終えた後、俺は聞いた。


「完治・・・じゃないけど。なんでそこまで治すのに三年もかかったの?」


明らかにおかしいのだ。全身骨折ならまだしも、足や腕その他もろもろ折れたといえ治すのに三年もかかるなんて。


「あーそれはね・・・」


彼女は三年間のことを話し始めた。


___





三年前のあの日、あの場所で私は自殺を図った。


目を閉じて、覚悟はできていた。


落ちたらまずはグシャって嫌な音がするんだろうな・・・。とか考えながら落ちていった。


でも、実際は違った。


まず聞こえた音はバキバキ。骨が折れたのかと思ったが、骨の音にしては軽すぎる。


ま、まさか。と思った時、それは的中した。


折れていたのは木の枝。木の中に突っ込んだらしい。


少し痛い。


木の中で落下は終わった。


痛みをこらえつつ少しどうしようか迷った。


私を支えている数本の枝がもう少しで折れてしまいそうだ。


そう思ったのもつかの間、バキィッ!!!


私を支えていた枝は一気にすべて折れ、私は再び落下する。


地面まではだいぶ時間があった。


少し、恐怖を覚えた。





ドン。





鈍い音が聞こえた・・・。


それと同時に私の全身の感覚はなくなり、意識もなくなった。





目が覚めた時、見ていたのは天井。白い天井。


多分病院だろうか。しかし、よく生きていたなぁ。


我ながら少し感心。


少し横を向くと、目に入ったのはガチガチに固定され、包帯まみれの自分の腕だ。


動かすことはできない。痛みが尋常ではない。


今にでも死んでしまいそうなくらい。いや、死んでいいんじゃないのか?


実際、死のうと思っていたんだし。


そう考えていると自分の病室の扉が開く。


入ってきたのは両親だった。


今更何しにきやがった・・・。


そう思いつつ、親からの第一声が飛ぶ。


このバカ娘がっ!!


罵倒だ。心配なんてしていない。母親は少し冷めた目で私を見ている。


父親からすごく怒られた。私は無言で聞いていた。


いや、聞き流していたの間違いだ。


そしてそれが終わった後、父は病室を出ていき、母だけが病室に残った。


母は心配してくれていたらしい。


母は本当は父も心配していたということを話してくれた。


どうやら、仕事まで休みここに来たらしい。





こんなことを話されても特に嬉しくないし、死にたいって気持ちががなくなるわけでもない。


そのあとすぐに母も出ていった。





「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


死にたい・・・。


言葉には出さないが私の心は死への執着と憧れでいっぱいだった。


死んだっていいんだ。誰も悲しまない。誰も苦しまない。


苦しむには自分だけ、いや死は苦しい事じゃない。





ガラっ。


医者が入ってきた。


いろいろ私の体の状態を話してくれた。


腕、足は複雑骨折。腰も少しばかり骨折しているらしい。


顔も腫れている。頭から落ちたわけではないので、脳波や記憶には問題はないらしい。


時間が経てば治るらしいが、私の「治したい」という気持ち次第らしい。


今の私には治したいという気持ちどころか、生きたいという気持ちすらない。





この気持ちは誰にも言わない。





その日以降、私は密かに誰にもばれない死に方を考え続けた。


ずっとずっと。誰のことも考えず、死にたいという気持ちだけを信じて。





ある日、あの男の事が頭をよぎった。


そう、元である。


あいつには悪いことをした。嘘告白なんて。


今思えば少し笑えてくる。


あいつの事は今はどうでもいいが少し気になっている。


「何してんのかな・・・元」





私に生きたい、治したいという気持ちが全くないおかげでこの体の状態で二年が過ぎようとしていた。


痛みは消えつつあったがまだ痛む。


誰も見舞いは来ていない。この二年間ずっと。


外はどうなったのだろうか。あいつは今何をしている?


今になって元の事を考えている。気になって仕方がない。


二年前のあの時告白をして数か月嘘の付き合いをしても尚、あいつの事が頭から離れない。


私は元の事が好きになってしまったのか?


嘘じゃなくて?本当に?


私は静かに自問自答をする。


私の正直な気持ちに問いかける。





おい。今、私はあいつの事が好きなのか?


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


・・・そうか。好きになったんだなぁ。





その日、私は変わった。


死にたいとは思わなくなった。


考えていたのは元の事ばかり。


元に今の想いを伝えたい。その一心だった。





そうなって以降、私の体の状態は少しづつ良くなっていった。


腰は完治。


腕や足も少し治ってきている。





そして一年間耐え抜いた。





この頃噂で聞いたのは私の葬儀の話だ。 どうやら私は死亡者扱いになったらしい。


丁度いい。


この方が病院を出やすい。





私は自分の命日に向けて病院を脱走する作戦を考えた。


__





「成程・・・そんなことが」


俺は嬉しかった。


素直に嬉しかった。


三年前ここで完全にフラれて、心が壊れかけていたのに。 今は好きだという気持ちが。





「ありがとう」


俺は彼女に感謝を告げた。


彼女は少し赤面していた。


「・・・・・こちらこそ」


照れているようだ。





俺は彼女の手を握り、共に立ち上がった。





「行こうか」





今、俺達は幸せです。


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