第6話っ!上手に食べました〜♪
あけましておめでとうございます。
キョロキョロと獲物を探す花凛。
現実世界にある食材に似ているモンスターを狙っていた。例えば牛型のモンスターとか。
大体の事に適当な彼女だが、流石に先程追いかけられた、クモ型のアレを食べるのは嫌らしい。
だが、中々条件にあった獲物は見つからず。
「ヘビさん、ヘビさん、1つ飛ばしてヘビさん...」
溜息をつく。
〈スキル : 望遠〉を使って遠くを見渡すが、ポイズンスネイクと呼ばれるヘビ型のモンスターしかおらず、花凛はヘビを進んで食べたい珍味好みの人間ではない。
なので、森林を隈なく探していたのだが。
「ほとんどヘビしかいないっ!」
この森林フィールドにはヘビと、稀にスパイダーしか出現しないらしい。
花凛は〈望遠〉でスパイダーを見つけると怯えるように逃げていたので、実質ヘビだけのようなものだが。先程の出来事が尾を引いている様子だ。
〈日付が変わりました。8月7日です〉
落ち込んだ様子の花凛の目の前に、システムメッセージが音声と共に表示された。
ちなみに、この日付の変更を伝える機能は設定でオフにできる。
何かと邪魔なのでプレイヤーの過半数以上がオフにしているらしいのだが、初期設定ではオンになっている。
「..うわ!びっくりした..。あれ?もうそんなに経ったの!?」
なんだかんだで10時間以上インしていた花凛は驚愕している。時間の経過がとても早い事にもだが、何より自分がこんなに長時間、ゲームにのめり込んでいたという事実に驚いたのだった。
「こんなにゲームやったの、何年振りだろ...。めっちゃ楽しいな!」
とはいえ、健康的な生活を夏休み中も送り続けていた花凛はそろそろログアウトしようと思い、
「...えーっと。あった!ログアウト!」
この森林フィールドのど真ん中でログアウトをした。
当たり前だが、町に戻ってからログアウトするのが定石である。なぜなら次にログインした時、いきなりフィールドにいることになるからだ。
そんなことは知らず、花凛はログアウトの表示ををタップする。
窓の外は真っ暗だ。
現実世界に帰ってきた花凛は寝る支度をする。
「〜♪〜♪」
ご機嫌な様子だ。
そしてベットに潜り込もうとしたその時、花凛のスマートフォンがブルッとメッセージを受けとったことを知らせた。
「あっ。美優ちゃんからだ」
彼女の親友でありクラスメイトの、石井美優からであった。
「何々...?『花凛って、NEW LIFE ONLINEやってるの?』だって..なんで知ってるんだろう?」
以下、2人のメッセージのやりとりである。
――――――――――――――――――――――――
美優『花凛って、NEW LIFE ONLINEやってるの?』
花凛『やってるよ!なんで知ってるの~?』
美優『これ』
美優『(花凛がスパイダーから逃げ回る動画)』
花凛『うわわわっ!何故それが....』
美優『wwwwww』
美優『この界隈じゃ、今ちょっと花凛有名人だよw』
花凛『まじかぁ!まあ確かに、あれは異常だと思ったけど!』
美優『あの速さはやばいww』
美優『私もそのゲーム結構やってるから、明日一緒にやろー』
花凛『いいね!』
花凛『私は今日始めたばっかだけど笑』
美優『それであのAGIなんだ...まあとりあえず、明日9時で!』
花凛『はーい』
花凛『私、第一層の森林のフィールドで終えたから待ち合わせそこでいい?』
美優『おっけ』
花凛『おやすみー』
美優『おやすみ』
美優『ん?ちょっと待って。森林フィールドでログアウトしたってこと?』
美優『やばくない?』
美優『おーい』
美優『おーい』
――――――――――――――――――――――――
翌日。
「...やばっ!もうこんな時間!?」
目を覚ました瞬間に枕元の時計を見る花凛。
時刻は8時57分を指していた。待ち合わせ時間まであと3分。
「急がなきゃ....。カリン、GO!」
急いでヘッドセットを装着し、起動の合図を唱えた。
刹那、眩い光で覆われる。
そして、森林のフィールドに花凛が現れるや否や、
「グガァッ!」
襲いかかるスパイダー!奇襲である!
右手で一閃、切り裂く!
「うわっ!」
パシンッ!それを反射神経で叩き潰す花凛!
目を開けた瞬間だ。あまりにも急すぎたので避けるという選択肢がとれない!
「グゥ...」
HPが尽きるスパイダー!
雀の涙にも満たないHPだ!
「...なんだったの?今の...ごぶぅぅっっ!」
スパイダーを食べ始めた花凛!常時発動の『スキル : 蜈蚣ノ捕食』が、意思とは反対に発動していた!
花凛の口内に苦味が走る!
「じぃぃ......」
そんな花凛を呆然と見つめる親友の姿が、そこにはあった。
「....っ!」
花凛は、捕食しながら目の前に美優がいるのを視認する。
「見ないでぇぇぇぇぇぇぇえええ!!!」
花凛の悲痛な叫び声が、森林に響き渡った。