第26話っ!ファンモン?
山フィールドへの門に入るや否や。
「ウキィィャャアアッ!」
「ウッキャウッキャッ!」
「ウキウキウキャャッ!」
猿型のモンスターが三匹、襲いかかってきた。ニホンザルのように顔とお尻は紅潮している。ただ違うのは、眼球も赤く染まっているという点だ。
「うわっ!いきなりだなぁ...どれどれ」
花凛を取り囲むように四足歩行で走り込む。歩幅が狭い割には、意外に速いスピードだ。
だが、花凛の敵では無い。相変わらず凄まじい速度で猿の合間を縫って回避。
マリスラビットは空高く浮かび上がり、猿が届かない位置に留まる。
「『ファンキーモンキーベイビーズ』...って名前なんだ..。なんか聞いたことあるなぁ」
猿の上の表示を確認して、花凛は苦笑する。
どうやらこの『ファンキーモンキーベイビーズ』、3匹で1つのモンスターのカウントらしい。だから『ベイビーズ』、複数系なのだろう。
その猿達は、自慢の奇襲避けられた事に当惑している様子だ。
「っし!取り敢えず倒そう!」
「もっきゅ!」
花凛の方に警戒しながらも距離を詰めてくるファンキーモンキーベイビーズ。
花凛は右脚を後ろに持っていき、構える。
足の裏で思いっきり地を蹴り一気に加速。
そして十八番であるスキルの名を口にした。
「〈蜈蚣ノ毒塗〉っ!」
左から右へ。居合斬りの要領で薙いだ一閃は紅。
中央に陣取っていた猿1匹の胸元を切り裂いた。
「キイィ!...アアッ」
悲痛な叫びと共に、横転する猿。
すると、花凛の身体は自動的に猿の方に吸い寄せられ、かぶりつくことを余儀なくされる。〈捕食〉が始まった。
残りの猿2匹はなにが起こったか理解できておらず、呆然としている。
「おいしっ!なにこれ!さっきのステーキレベルで美味ぇ!」
猿肉。見た目はかなりグロテスクだが、気にしないのが花凛。
〈スキル:食ラウ者〉の効果に、『おいしく食べられます♪』と書いてあったことを思い出した。
「最高っ!!」
満面の笑みで食い散らかす。骨から丁寧に肉を取り出していた。
マリスラビットは空からその様子を凝視している。
そして完食すると。
「ごちそうさまでし.....ってなになに!?」
花凛のカラダが気味悪い黒色の霧を発した。
そして1秒も経たずに霧散する。
「な、なにこれぇぇぇぇええ!!!」
花凛は先程食した、ファンキーモンキーベイビーズの1匹に変身していた。
自分の体を舐め回すみたいに見ても、猿が二足歩行をしているようにしか...。
不思議な感覚だ。何故だか物凄く馴染んでいる。自由に四肢と感覚器官を動かせるのだ。遥か昔に猿として生を受けた、と勘違いする程に。
「やだやだ気持ち悪い!!」
いくら大雑把な花凛とはいえ、自分が毛むくじゃらになる事件については不快感を覚えるらしい。
ただ、残った2匹のファンキーモンキーベイビーズ達が。
「キィィッ♡」
「ウキキッ♡」
と、花凛(猿)にすり寄って来たのだ。どうやら仲間だと思われてる様子。
「えっ?...ウキィ?(こんにちは?)」
意思を込め、見様見真似で鳴いてみた。裏声と地声を混ぜる感じ。
「ウッキャ!(イェーイ!)」
「ウッキャ!(ウッキー!)」
花凛は猿語が理解できるのだ!
ファンキーモンキーベイビーズ(2匹)は飛び跳ねて、頭の上で手を叩き喜んでいた。
花凛もなんだか楽しくなってきたらしい。雑談に興じようとする。
「ウッキャ!(最近どお?)」
「ウッキャ!(いやはや地球温暖化が進んで暑いのなんので困ります)」
「ウッキャ!(夏が過ぎ去るのが待ち遠しいですね...猿だけに。アッハッハッ!)」
自分の体が毛まみれな事についても嫌悪感は薄まっていた花凛は、雑談を続けた。
ジェスチャーや鳴き声のトーンで意思疎通を図る2匹と1人。
「もきゅ?」
そんな状況に、マリスラビットは首を傾げていた。
・ ・ ・
3分程経過した後。
再び黒霧を纏い、元の〈韋駄天シリーズ〉を着衣した、冒険者のカラダに戻っていた花凛。
「顔も、手足も....うん!おっけぃ!」
自分の顔をペタペタと触り、元通りになっているかどうかを確認する。ついさっきまで顔を覆っていた毛は、綺麗に無くなっていた。
猿2匹は呆けている。
「ちょっと楽しかったよ!じゃあね!」
討伐しようという気は失せていた。花凛は、ばいばい、と手を振る。
するとお猿さん達は。
「ウッキャウッキャ!(さらだばー)」
「ウッキー!(再会できること、祈っておるぞ)」
花凛にはもう、彼らの言葉は通じない。だが、敵意が無いことくらいは分かる。
少し後ろ髪引かれる思いで、その場を後にした。
ルイくんとの約束時間まではあと1時間とちょっと。全力で走れば余裕で間に合う。
「で....コレのなにが強いんだ?」
受付のお姉さんが『強いよ!』とかなんとか言ってた記憶があるのだが....。
走りながらも、ふと疑問を感じた花凛であった。
本人は気付いていない。〈捕食〉中の隙が、ほぼ無くなっていることに。
カクヨムの方で短編の執筆を始めるので、少しお休みします。




