第25話っ!擬態に期待?
「カリンちゃん、PVP出るんだって??」
「頑張ってなぁ!応援してるぜぇ!」
「カリンちゃん好き!」
30人を超えるおっさん達に見送られ、花凛は『キッチンジャイアント』を後にする。
彼らが遠くない未来、『カリンちゃんを応援する団』、通称『KOD』の中心メンバーとなるのだが....それはまた別のお話。
それよりも、花凛のコトだ。
「き、気持ち悪い...」
なんとか嘔吐せずに済んだものの、顔色が悪い。既に日が昇りきった繁華街を千鳥足で進む。
時刻は12時半を指していた。取り敢えず人目のない山フィールドに再び向かっている。
「あ、そーだ。報酬...」
花凛の手には、金色の巻物が握られていた。
銅、銀、金、虹。希少さの順番で区分けされている巻物はスキルを覚えるためのモノである。〈百足連撃〉とかは虹。ユニークスキルだ。
ちょっと前、虚な意識のまま受け取った優勝報酬は15000ゴールドとその2番目にレアな巻物だったのである。
「よし、なんだなんだ...?」
歩を進めながら、クルクルと広げようとする。
ポニーテールのお姉さんに「新しく実装されたの!ちょー強いよ!まじで!」と期待を煽られた為、結構ワクワクだ。
〈『スキル:食ラウ者』を獲得しました〉
巻物が青白く光り、消失。
そして不穏なスキルの獲得を告げるシステムメッセージが表示された。
「『食ラウ者』....?全然想像つかないや」
タップして詳細を見る。
「『モンスターをおいしく食べられます♪...ってなんだそりゃ!」
「もきゅ!?」
花凛の突然のツッコミに、マリスラビットは驚いていた。
だが、説明文にはまだ続きがあるみたい。
「『モンスターをおいしく食べられます♪...加えて、一時的に食したモンスターへと擬態する。尚、常時発動』...ぎたい、擬態...」
『常時発動』の単語が目に入り、またまた可笑しなスキルを獲得してしまった事を悟る。
擬態、つまり、変身ってことかな?
花凛は簡単に想像してみた。
例えば...。
1.スパイダーを発見!
2.〈蜈蚣ノ毒塗〉で討伐!
3.〈蜈蚣ノ捕食〉で美味しく食べる!常時発動!
4.〈食ラウ者〉の効果でスパイダーに変身!常時発動!
「えぇ...」
たかが雑魚モンスター1匹倒すだけで、踏まなければならない手順が多過ぎる。花凛は溜息を漏らした。
「強いって言ってたけど、どこが強いんだろ」
お姉さんの言葉を思い出し、疑問に思う。
まあ、実際のところの有用性は嫌でも分かるだろう。常時発動だから、モンスターを倒せばすぐに強制変身だ。
後で要確認、と心に留めておく。
そんなこんなで通行人が少なくなってきた細道をえっちらおっちら歩いていると、ピコンッ、とメッセージを受け取ったことを知らせる音がした。
唐突な通知に驚いた花凛は、道の端に寄りウインドウを開く。
差出人はマリスラビットの主人、ルイくんだ。
『カリンさんへ 15時に私達が初めて出会った場所で、あなたを待っています ルイ』
「告白の呼び出しみたいだ...」
少女漫画脳の花凛は、何かと恋愛ごとに物事を持ち込む癖がある。
しかし、まさか本当に告白な訳が無いだろう。
花凛より大分小さい金髪の少年を思い出し、考え直した。
「...そっか..マリスたんとはお別れだね...」
「もきゅぅ...」
約束の時間とはお別れの時間。
マリスラビットも花凛も悲しそうだ。
「色々ありがとうね!さっきのお肉とか!」
大食い大会、花凛はマリスラビットのお陰で優勝できたようなものである。
最後の最後、黒く怖く変化した事に疑問は持ったものの、畏怖感は感じなかった。助けられたことには変わりないのである。花凛は感謝を伝えた。
「もきゅう!」
お礼を言われて嬉しそうだ。
そして花凛は、『私達が初めて出会った場所』である山フィールドの最端へと向かう。新たに獲得したスキル『食ラウ者』の実験も兼ねて、だ。
感想や辛口意見等、お待ちしております!




