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第24話っ!おおぐい!!!

隣で泡を吹いているロン毛がうっとうしいが、気にせず肉に食らいつく花凛。

7キロは下らない重量のどんぶりは、未だ底が見えない。


「ちょっとキツくなってきたかも....」


美味は美味なのだが、ステーキ単一の味だと飽きもあり、余計に満腹感を感じるらしい。


気分が落ちてきた花凛とは反対に、さっきの受付のお姉さんが元気に実況を続ける。


「さあさあさあさあ!脱落者は18名出て、残り2名となりましたよん!前大会優勝者の『デブデブ』さんと...かわゆい女の子、『カリン』ちゃんの一騎打ちです!!」


前大会優勝者、ひどい名前だ...。


ともあれ。

周りを見渡す余裕が無かったから気付かなかったが、花凛ともう1人(デブデブ)以外全滅だったようだ。

トイレに篭り席を外している者、意識が飛んでいる者(ロン毛を含む)など様々な地獄が繰り広げられている。


そうと気づくと、俄然やる気が出るモンだ。


「まだまだぁっ!」


「もきゅっ!」


花凛は箸をマリスラビットの口元に運ぶと、ふるふる、と体を振り嫌がる。


「一枚くらい食べてよぉ...」


嘆いても状況は変わらない。花凛はどんぶりを片手に、かきこみ体勢に入った。


ポニーテールを揺らす彼女の実況もすかさず入る。


「おっとぉ!ここでカリン選手!ラストスパートかあ!?デブデブ選手もかきこむ態勢に入った!」


花凛はデブデブがどんなヤツなのか確認する為、左を見やる。左一番端に、どんぶり片手のスキンヘッドを光らせる巨体が。


「でっかい......」


相撲取りもびっくりの肥満体型であった。白いタンクトップからは大根よりも二回り程太い二の腕が伸びている。


すると視線を感じたのか、デブデブもこちらを振り返った。糸目を更に細め、花凛をジッと睨む。


パチパチッ。


交錯した視線の間に火花が散ったような。


どうやら彼、使い魔が居ないらしい。単独参加も可能なのだ。


「負けられない戦いがぁ!!ここには、あるっ!!」


実況の声を口火に、再び箸をつける2人。声援にも熱が入ってきた。


「「KA・RI・N!「あそれっ!」KA・RI・N!「あよいしょっ!」KA・RI・N!「あふぅ!」・・・」」


合いの手が少々うざい野郎どものコールを背に受け、花凛はステーキを口一杯に頬張る。


どんぶりの底が見えた!


だが、喉が言うことを聞かない。

カラダがこれ以上体内に食べ物を入れるのを、拒否してるみたいだ。


しかし、応援の声は鳴り止まない。


「デブデブなんかに負けるなよ嬢ちゃん!」

「まだまだ行けるぜ嬢ちゃん!」

「カリンちゃん可愛い好きーっ!!」


開始前は花凛に対して半信半疑だったおじ様たちも、途中から腕を突き上げ応援していた。


声援がとんでもない活力になる事は、陸上部の大会の時に思い知っている。


(私は、負けないっ!)


ゴクンッ。


無理矢理飲み込む。少し戻しそうにもなったが、水で流し込んだ。「おおおおーっ!」と、野太い歓声が後方で起こる。店内は完全に花凛のホーム。少女応援ムードだ。


しかし。


「ヤバイっ!!デブデブのヤツ...もうあと一口だ!」


観客の1人が叫んだ。


箸を何枚かの肉に刺して口に運ぶ。

勝利を確信したようにニタリ、とデブデブは笑った。流石は前大会優勝者だ。


一方の花凛はまだ、水の入ったグラスを手放せない。肘を机につき、俯いた。もう限界と言わんばかりの苦悶に満ちた表情である。


(くっ、もうダメかぁ...)


オーディエンスは頭を抱える。


花凛も諦めかけたその時だった。



「もっ、もっ、もっ、モギギギュ!」


後ろで浮いていただけであった、丸々ふわふわ真っ白なマリスラビットが。


「モギギギギギィャァァァァッッッ!!!」


()()に、染まった。


顔の半分を占めるほど大きく広がった口からは鋭利な牙を覗かせ、目は紅く光る。


「マ、マリスたんっ!?」


マリスラビットの変貌ぶりに動揺している花凛には目もくれず、黒く丸い物体は、どんぶりに顔をうずめた。


そして1秒も満たない時間で。

綺麗さっぱり肉塊は無くなっていた。


「もきゅ?」


純白に戻ったマリスラビットが首をひねる。


一瞬の出来事であった。


微かな沈黙。




「....しょ、勝者!カリンさんチームぅぅううっ!!」


「「うおおおおおおおおおおおおおっっっ!!!」」


お姉さんがおずおずと軍配を上げると、オーディエンスは呼応する。


状況を飲み込めていない花凛は、ポカンと口を開けていた。


野太い声援は鳴り止まない。


「「KA・RI・N!「あどっこい!」KA・RI・N!「あそれ!」KA・RI・N!「はあどっこい!」・・・」」


やたらとガタイの良い応援団(ほぼおっさん)は、困惑している花凛に近づき、胴上げの準備。


「えっちょっちょ待って!いま胴上げさ...うぁっ!」


静止も聞かず、優勝した女の子を持ち上げる屈強な冒険者達。


ふわり。ふわり。


花凛と天井が近づく。また離れ、近づく。


「吐く!吐く!まじで吐くからぁ!もうやめて!お願い!吐くぅうううっ!.....おぅ」


花凛は泣き叫んだが、しばらく胴上げは続く。


「もきゅ!」


先程の出来事が嘘のように、マリスラビットは楽しげである。相変わらずふわふわ、と浮いていた。

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