第22話っ!おおぐい?
何度か『ルー=ガルー』の性能チェックを行ったのち、再び街に舞い戻った。既に日は登り始めている。
「何か食べよー!マリスさん!」
「もきゅ!」
〈毒無効〉を獲得した程ポイズンスネイクを食らった花凛の口内は、何だか苦い感じが残っていた。口直しをしようと、美味な食い物を求めて彷徨う。
早朝だというのに、往来は様々な年齢層の冒険者達で活気づいていた。
「うーんこれもおいしそー。あ!あっちにも!」
玩具屋を歩く子供のようにキョロキョロ。ここいら一帯はレストラン街らしい。
洋食屋、和食、ラーメン屋、やファストフードまでなんでも揃っている食文化の見本市。
ショーケースに飾られた食品サンプルが所狭しと並べられ、見るだけでも楽しくなっていた花凛であった。
と、そんな中。
「いらっしゃ!いらっしゃ!『大喰らいバトルフェス』はっじまるぜぇ!!」
『キッチンジャイアント』と、木彫りの看板が掲げられたお店の前に、ポスターを広げ、声を張り上げ客を呼び込むオヤジの姿が。
てゆーか、花凛がお世話になった、鍛冶屋のおっちゃんだ。
「おーい!おじさん!また会ったねー!」
花凛が手を振ると、おっちゃんも片手を挙げ、人好きのする笑みを浮かべた。
「おぉ!さっきの『心臓』の嬢ちゃんじゃねーか!どうしたこんなところに!」
褐色スキンヘッドは持っていたポスターを丸めながら、雑談に興じようとする。鍛冶屋で腕を通していたツナギから紺色のスーツに着替えたらしい。あまりにもミスマッチなので、花凛はこみあげてくる笑いを噛み殺すのが大変だった。
「なんかおいしいモンたべたくてねー。おじさんは何してるの?」
「バイトだ!」
「バイト??なんで??」
歯をキラリと輝かせながらドヤ顔で答えたおじさんに対し、花凛は疑問符を浮かべた。
「お金が無いからなぁ!鍛冶屋の経営も大変なんだよ!ガッハッハ!」
快活に笑っている鍛冶屋の主。花凛は「あはは...」と笑うことしかできなかった。
花凛の反応を見て、おっちゃんは少し咳払いをした後、話題を戻そうとする。
「ところで美味いモン探してるんだって!?ならこの店で食べてくといい!」
「ここって何屋さん?」
聞くと彼は持っていた紙をクルクルと広げた。
「ここ、『キッチンジャイアント』はな...大食いの店だ!」
ポスターには、『ペットと一緒!大喰らいバトルフェス』と書かれていた。
「あと10分くらいで大食い大会が始まるぜ!参加費は1000ゴールド!成績上位者には報酬も用意されてらぁ」
「ほ、報酬!?」
興味をあまり示していなかったが、現金な花凛は目を輝かせる。
「出てみようかな!ペットも一緒に出れるんでしょ?」
後ろでフワフワしていたマリスラビットを指さした。
「もちろん!1人と1匹で1組エントリー可能!」
「もきゅ!」
嬉しそうに一回転する白い球体。
それを楽しげに見つめる花凛は、はにかんだ。
この子とは、お別れが近い。今日の午後にはもう。
預かっている、だけなのだ。
「よーし!頑張ろーね!マリスたん!」
抱きついて頰をスリスリする。胸一杯に獣特有の、かといって不快感は感じない香りが広がった。
「おー頑張ってこい!じゃ、中で受付してきな!」
「うん!」
両開きの扉を開けてくれるおじさん。暖色系統の電球に照らされた店内は、人でごった返してるみたいだ。
最後の思い出づくりに、優勝したい。
少し切ない思いで、花凛は店内に足を踏み入れた。




