第20話っ!かうんたー!
また短め。
五分程度経った後。
再び花凛は鍛冶屋の暖簾を退かす。
「おー来たか嬢ちゃん!今しがた、完成したぜ」
快活に人好きのする笑みを浮かべながら男が掲げているものは。
「な、なにこれ....」
円形の盾であった。
いや、盾というには差し支えがある程の柔らかさがあるように見える。薄茶色に汚されたゴムで創られたような...。そして円の中央には血の色に似た鮮やかな赤で狼の顔の紋章が描かれていた。
「『ルー=ガルー』っつー盾だ。俺も噂には聞いたことはあるが、実物は初めてお目にかかるなぁ」
なんせ〈心臓シリーズ〉は素材自体かなり希少な上に、完成する武具は完全にランダム。コンプリートは至難の技だ。トッププレイヤーでさえ3種類持ってれば多い方らしい。
加えて、〈嘘吐き狼男〉は非常にレアなモンスターで。
「ほーん。そんなに珍しいのか...見た目は微妙だね。あと、柔らかそう、盾なのに」
「そう。そこだよ嬢ちゃん。この『ルー=ガルー』は世にも珍しい"吸収型"の盾だ!」
花凛の疑問に待ってましたと言わんばかりの勢いで答える鍛冶師。
「きゅーしゅー型?」
「そうさ!受けた攻撃を柔らか素材で吸収に吸収!そして任意のタイミングで...」
テレビショッピングのようにジェスチャーを大きく使いながら説明する。どうやらテンション最高潮みたいだ。
「カウンター!!バーンと今まで受けた攻撃の威力を一気に放出!」
自慢げな表情の男は、効果音と共に両手を大きく広げる。
「なるほど!攻撃型の盾だ!かっこいーじゃん!!」
花凛も理解したらしく絶賛する。自分が使う姿を想像し、ワクワク。
「「イェーイ!!」」
そして二人は手を高く挙げ、机越しのハイタッチ。
周りの客たちが一斉に振り返ったが、花凛たちは気にも留めようとはしない。
「そんでだ、嬢ちゃん。明後日あたりにあるらしいイベントには参加するのかい?」
咳払いをしてからPVPトーナメントの件について問う男。
「もちろん!」
勢いよく即答する花凛。
鍛冶師は「だよなぁ」と納得したように頷いてから助言をする。
「良い素材を扱わせてもらったお礼だ。少しアドバイス」
ピン、と人さし指を立てた。
「なあに?」
相槌を打つ花凛。
ムカデといいゲームマスターのミチルといい、なぜか頻繁に色々な人からアドバイスを受けやすい。彼女の愛嬌や雰囲気がそうさせるのだろうか。
「まあ大したことじゃないんだが..。この盾の事は秘密にしといた方がいいんじゃないか?試運転も人目につかないところで」
「切り札にしとくってことだね!」
NEW LIFE ONLINEを始めてからというもの、閑散としたプレイヤーがいないフィールドでしか戦闘をしていない花凛は、もう人目のない場所は慣れていた。
「そーゆーこっちゃ!応援してるぜ!」
花凛は声を張り上げエールを送る男に大きく頷き、背を向ける。
「色々ありがとー!ま、頑張るよ!」
礼を言い、暖簾をはらう。
いかつい容姿とは裏腹に気のいい野郎であった。
「さて。早速、お試しと行きましょうか...!」
空はもう暗闇。だが、活気あふれた街の灯りと道行く楽し気なプレイヤーの影響か不思議と寂しさを感じない。
夜はまだ長い。目指すは人気のない、森林フィールドだ。




