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第1話っ!AGIってなぁに?

「うわっ!ほんとに動ける!」


現実世界の怪我は反映されないので、自由に足を動かせるようになった花凛。嬉しそうにぴょんぴょん、と跳ねた。


急に奇行に走ったら、生暖かいあるいは白い目で見られるのが世の常。

だが周りにもぴょんぴょんしたり腕を回したりしている人がいた為、花凛にそういった目を向ける輩は居なかった。


ここはNEW LIFE ONLINEをたった今始めた人が集まる、初心者ギルドと呼ばれる場所なのである。そりゃあみんな、ぴょんぴょんグルングルン身体を動かしている。


「初心者のプレイヤーさん。こちらへお越し下さい」


NPCの受付嬢が呼びかけると、花凛は旅館のフロントのような受付カウンターに向かった。日本家屋を踏襲した建築様式らしく、心地良い木の匂いで胸一杯になる。


「右手をパーにして上から下に振って下さい。そうするとステータス画面が出ます。ポイントを100ポイント付与してあります。振り分けてみて下さい」


花凛は金髪嬢の言われた通りに右腕を振ってみた。すると、ヒュッという音と共に空中に半透明のステータス画面が現れる。



カリン Lv.1


STR 0

VIT 0

AGI 0

DEX 0

INT 0


(未振り分けのポイントが100あります)



装備

【武器(右手)】無し

【武器(左手)】無し

【頭】無し

【体】無し

【脚】無し

【靴】無し

【アクセサリ】無し



スキル

無し






「おー。すごーい!...でも、ステータスって何?」


こういったゲームをプレイした経験のない花凛はNPCに問う。

でも、


「ステータスを振り分けて下さい」


と、機械的な対応が返ってくるだけだ。


「あ、これCPU(コンピュータ)かー」


家庭用ゲームを家族で少しプレイしたくらいしかゲームの知識がない花凛は、当たらずとも遠からずな理解をする。


とはいえ、彼女はSTRやVITなどの単語の意味も知らないので、花凛は隣で受付をしている黒ひげの男に聞いてみることにした。

ちなみに、ゲーム内のアバターは現実世界の姿が完全再現されている。この機能に関しては賛否両論あるのだが、それはまた別の話。


「あの、すみませんおじさん。ステータス振り分けってどうやったらいいですかね?」


花凛は彼に問う。

すると、彼は不満げに顔を上げた。


「おい俺まだ20代だぞ誰がおじさんだコラ」


少しムッとしたおじさん(お兄さん)であった。


そしてしばし考えたような顔をしたのち、不気味な笑みを浮かべながら答える。


「...数字が大きい方が強いんだぜぇ。ちんちくりんのお嬢ちゃん。何か1つに全部つぎ込めばいいさぁ。...ヘヘッ」


これは誤情報である。

初心者は基本大体均等に振るのが定石。

このゲーム内には「職業」という概念が無いため、戦闘スタイルが固まるまでは全てに振っておく方が断然有利だ。

しかし、哀れにも。信じてしまったのが花凛である。


「ありがとう!お兄さん!」


屈託無い笑顔でお礼を言う花凛。


「いいんだよぉ。困った時はお互い様。それがMMOっていうゲームだぜぇ」


どの口が言ってるんだろう。

と、突っ込みたいが、MMOにはこういう性格が些か捻くれた者も往々にして存在するものだ。


「じゃあ...これに..はい!終わったよ、お姉さん!」


花凛は真ん中にあったAGIに全て振り分けた。


俗に言う極振りである。

だが、このゲームで極振りへの待遇は芳しくない。


まず、STRが0だと普通の攻撃ではどのモンスターも倒せない。

武器を持てばダメージは入るが、武器を買うにはゴールドが必要である。ゲームを始めて配布される初期ゴールドでは武器を買えるまでの値段にはならないため、稼ぎに出なければならない。

だが、モンスターを倒せない。というスパイラルが起こる。


因みにSTRに極振りすると、なんと動かなくなるという特別仕様もあるらしい。


無双系小説か何かに影響されたのか極振りの前例はあったのだが、皆この状況に陥りそのデータを諦め初期化していた。


そんなことは露知らず、花凛はNPCの「それでは、NEW LIFE ONLINEをお楽しみ下さい!」という言葉を背中に受け、初心者ギルドの扉を開けた。



カリン Lv.1


STR 0

VIT 0

AGI 100(+1000)

DEX 0

INT 0



装備

【武器(右手)】無し

【武器(左手)】無し

【頭】韋駄天のバンダナ

【体】韋駄天のジャケット

【脚】韋駄天のレギンス

【靴】韋駄天のスニーカー

【アクセサリ】無し



スキル

〈韋駄天〉



ステータスを振り分けた後に配布されるベージュ色の初心者装備と色かたちは変わらないが、特異な装備とスキルが花凛に配布されていたのを、彼女はまだ知らない。

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