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第18話っ!少年との出会いっ!

昨日の更新忘れてました。すみません。

一通り食し終えると、異様に剛毛な心臓が残っていた。

ヒトは外的接触から身体を守る為に体毛が生えているというが、この毛の生えた物体も同様の理由なのだろうか。どうやらまだ動いているらしく、鼓動が波打っている。


まあ、端的に言うとキモかった。

そろそろR-15(残酷な描写あり)のタグにチェックを入れた方がいいのかもしれない。


「うわっキモ。触りたくないよ..」


だが、「収納」するには手のひらで掴まなければならない。

ぷにっ。

花凛は恐る恐ると人さし指で触ってみる。


「いやっ!むりだわー」つ


パッと手を離した。

そしてもう一度。やっぱ無理。もう一回!と繰り返していると。


タッタッタッと、軽快に駆ける足音が聞こえてきた。

花凛の前で、ぴたり立ち止まる。


「あのー、ここいらで狼の顔をした人型を見ませんでしたか?」 


モハメド・アリもびっくりの指先ヒットアンドアウェイを繰り返している花凛を見つけた少年は、プレイヤーであった。半袖短パンは如何にも小学生らしく、頰のそばかすも愛らしい。


「狼男さんなら今さっき倒したよ〜」


花凛は呑気な声で応え、心臓を指差す。

少年はくりくりっとした目を更に見開いて、まじまじと波打つ物体に見入った。


チッ。


そして花凛に聞こえない程度の舌打ちをかます。


「そうですか。先を越されてしまいましたね」


少年は怒りを抑え、意識的に平坦な声音で話した。


「なんかごめんねー。これ、クエストのやつだったんでしょ?」


花凛はぺこり、と頭を下げる。

しかもかなりの希少素材。いくら花凛だって、申し訳なさくらいは感じるようだ。


「隠しクエストの、ですよ。しかも月に一回しか出現しない、中々レアなやつです。まあ、早い者勝ちですからね」


気味の悪いほど無機質な少年であったが、花凛は意に介した様子も無い。


「それがさー。なんかクエストとは気づかないで適当に倒しちゃったんだよね」


楽しそうに花凛が言うと、少年はわずかに目を細める。が、直ぐに無表情に戻った。


「はあ。それは運がよろしいことで」


「そだねー。...あっ!なんかきた!」


会話に勤しんでいると。お互いの目の前にピコンっ、と半透明のシステムバナーが表示された。


〈イベント『PVPトーナメント!!!対人最強は誰だ!?誰なんだ!?おい!』に参加されますか?〉


下には開催日時と「YES」と「NO」の欄がある。


「あ、このタイトル正式名称なんだ...」


思わず花凛は苦笑する。それは少年も同様だったらしく微笑をたたえていた。


「はは。それで、カリンさんは出るのですか?これ」


少年は『YES』に指を置きながら問う。


「とーぜん!!」


花凛も勢いよく『YES』を押す。

するとまたもやシステムバナーの表示が。


〈抽選の結果、あなたの予選グループは『E』です!〉


「E、ね。美優ちゃんと被らなければいいけど」


美優とはトーナメントで闘いたいという気持ちが、花凛には芽生えていた。


「おや、カリンさんもEなんですか?僕もですよ」


少年のバナーにも、Eという文字が。


「お、まじ?負けないからね〜」


花凛が冗談交じりに言うと、少年はふっ、と笑う。


「お手柔らかにお願いしますよ。あなた強いんだから」


「ふふ、まあね。...と、こうしちゃいられない!特訓しなきゃ!」


会話に夢中になっていた花凛は我に帰り踵を返そうとしたが。少年はニヤッと笑ってから花凛を引き留めた。


「そうだ。ちょっと待って下さい。隠しクエストのお詫びをして欲しいってワケじゃないんですが、頼まれて欲しいことがありまして.....召喚(サモン)っ!」


召喚(サモン)

使い魔を呼び出すために唱える言葉。

入手方法はモンスターが稀にドロップする卵を孵す。またはクエストの報酬なんかでも獲得できるらしい。


能力や適正は使い魔によって様々。サポートをこなすモノもいれば共に闘う武闘派まで幅広い。


「えっ、ちょーかわいいー!!!モフモフしてる!」


少年が召喚したのは、アンゴラウサギとポメラニアンを足して2で割ったような使い魔だった。表示をみると、〈マリスラビット〉となっている。


「で、頼みごとっていうのはこの子を預かって欲しいんです。今から一泊二日で家族旅行なんですよ」


外見からして、家族旅行に繰り出すような年頃だろう。


そして、PVPトーナメントの予選は2日後。


「いいよ!」


花凛は白い毛に覆われた愛くるしい生物をモフモフとモフりながら即答した。マリスラビットは大きな目をパチクリさせて「もにゅ?」と鳴いた。


「本来は預けなくても大丈夫なんですけど、今まで毎日会ってたからかわいそうで...」


悲しそうな表情をつくる少年。

演技かどうかは定かでは無いが、花凛は同情したらしくマリスラビットを抱きしめる。


「そうなんだ...私、多分ずっとログインしてるし任せて!」


「お願いします。多分明日の夜にはログインできるので、メッセージ飛ばします」


少年は帰ってきたらすぐ、ログインするらしい。


「了解!じゃ、フレンド登録しよっか」


「はい」


二人はフレンドになった。フレンドはパーティと違い、特にこれといったメリットがない。個人のチャットができるくらいだ。


フレンドチャット欄の表示によると、どうやら少年はルイという名前らしい。


「では、急ぐので。さようなら...『ワープ』っ!」


別れの挨拶もそこそこに、黒い杖を装備して唱えると一瞬にして少年が消失した。


「うん行ってらっしゃ..消えた!?」


この〈ワープ〉という魔法は、ドラクエでいうルーラ。行ったことのある場所であればどこにでも瞬間移動できる優れものだ。

だが、便利過ぎる魔法故に獲得条件がかなり厳しく、使えるプレイヤーは両手で数えられるほど。美優すらもまだ獲得できていない。


「すごい魔法だな..」


「きゅるるっ!」


花凛の独り言に、マリスラビットが応えた。

〈嘘付き狼男の心臓〉もドクドク、と音を立てていた。

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