第14話っ!ぴーぶいぴー?
今日から毎日投稿頑張ります。
「PVPってマジかよ...」
お祭り騒ぎの翌日。
美優は1人、竹下通り並の混雑を見せている掲示板の前で呆然としている。
イベント内容発表を待ちきれなかったため、花凛との待ち合わせ時間よりも数十分早くログインしたのだった。
掲示板に記載されていたのは、『PVPトーナメント!!!対人最強は誰だ!?誰なんだ!?おい!』という見出しで始まる字面。
肝心な内容だが、まずイベント参加者を32のグループに分け、各グループ1人5戦行う。勝率が最も高かった者が代表となり、強者の集うトーナメントへと足を運ぶことができる。また勝率1位が複数人同率である場合は、最終決戦、或いはミニトーナメントで代表を決めるらしい。
「これかなり試合数あるんじゃ...」
優勝するには、最低でも11試合。当然予選グループでの同率決戦も多発するだろうから、それ以上の試合数は見込まなければならない。
イベントは2日間。
土曜日に各グループで代表を決め、日曜日に最強を決めるトーナメントを開催するらしい。
「まあ、急な発表で2日間開催。いくら休日であるとはいえ、流石に参加者はかなり絞られるだろ」
不幸中の幸いといったところだ。
夏休み中ではあるもののお盆休みに差し掛かっている訳ではない為、学生の参加が多いだろう。
「はあ....」
美優はため息をついた。
彼女の闘い方は、対人戦においてかなり不向きである。
背後を刺さなければ『暗殺術』は発動しないため、相手は背中をケアしてれば問題無い訳だ。いくら美優のスピードが速いとはいえ、人間の反射速度には劣る。
加えて、美優と美優の変わった戦闘スタイルは有名だ。
「おっはよー!みれいゆちゃん!...どした深刻そうな顔して」
落胆していると、美優を見つけた花凛が小走りでやって来た。息を荒げている様子から察するに、急いで来たらしい。
「みれいゆ言うな。いやそれがさ、イベントがPVPなんだって」
「ぴー、ぶいぴー..?なにそれ?」
ゲーム歴が浅すぎにも程がある花凛の知る由もないワードだ。なんせ当初はAGIの意味さえ知らなかったのだから。
「...ああ。PVPってのは対人戦のこと。1対1のケンカ、タイマンみたいなもんだよ」
実際はデスするまで闘う為、殺し合いの方が近いかもしれない。
「ほーん...そりゃ美優ちゃんが落ち込んでる訳だ!だってコミュ障だもんね」
花凛は閃いたっ!と言わんばかりの表情だ。
「そーゆーことじゃないんだけど、否定しずらい...」
美優は対人、という言葉に苦手意識を感じてしまう。
どうやら自分がコミュ障気味であるという自覚はある模様。
美優は花凛に、〈暗殺術〉が対策されやすい旨を説明する。
背後からの攻撃のみだし、美優は有名プレイヤーだし。
「...ってことで、私の闘い方が対人戦に向いてないんだよな」
花凛はうんうんと頷き、
「確かに!..いやでも、私の方が不向きだと思うの」
美優は首を傾げる。
花凛は超スピードで、敵を『蜈蚣ノ毒塗』で切りつければいいだけのはず。
「だってさ、『蜈蚣ノ捕食』発動するんじゃない!?」
「た、確かに」
瞬殺したプレイヤーの頭をかぶりついている花凛を想像してみる。
それはもう、R-18の世界。
「..いやでも流石になんかしら対策されるでしょ」
10歳以上対象のMMOだし大丈夫だろ、と美優は思い直す。
「そうだといいな...。ま、あとで運営さんに問い合わせてみるよ!」
花凛はステータス画面の下に表示されている『お問い合わせ』の欄を確認しながら言う。
「そうした方がいいかも。...それで、今日からイベントまでのコトなんだけど」
美優は急いでいるかのように、話を変えた。
なんせ時間が無い。対人の経験も無い。
「うんうん!どーする!?どこ行く??」
目を輝かせながら花凛が問う。
まだ行った事のない所ばかりだ。無論、ワクワクしている。美優と一緒にゲームできる事も相まって、かなり楽しいそうだ。
だが、当の美優は苦笑していた。
『せめてゲームだけでも、何事も本気でトップを狙いたい。』
美優はそういう信条で、NEW LIFE ONLINEをこれまでプレイしてきた。
そして今回のトーナメント戦。
不利な状況。
優勝を目指すには、短い時間で新しい闘い方を模索しなければならない。それも、誰にも知られる事なく。
当然花凛にも、だ。
なんたってまだ始めて3日目。彼女の特異な闘い方は周知では無いし、手強いスキルだってある。強力なライバルになる可能性があるのだ。
そんな現在の最適解は。
「花凛さん。...今日から、別行動をします」