第12話っ!ぶきや!
お久しぶりです。
久しぶり過ぎて小説の書き方忘れてました。
「「おい...あいつ、昨日の動画の....」」
「「しかも、隣にいるのは『くノ一』...?何故一層に..?知り合いなのか?」」
往来を闊歩する2人に奇異或いは羨望の眼差しが向けられる。
美優を先頭に、武器屋に向かっていた。
「私たち、なんか有名人みたい!」
嬉しそうに囁く花凛。例のスパイダーから逃げ回る動画で一躍その名を轟かせた少女である。
「..あんまり目立つのは好きじゃないんだよね...」
そういいながらも、まんざらでもなさそうな表情である。何だかんだで、カッコいい(?)美優の通り名、『くノ一』を本人は気に入っているのだった。
「美優ちゃんってホントにゲームだと人気者だよね!学校ではド陰キャなのに」
「花凛って、よく『一言多い』って言われない?」
いやまあ実際ド陰キャなんですけどね。
普段の付き合いでも、花凛はしばしば余計な一言を付け足す傾向にある。でも、そんな彼女がクラスで人気者なんだから、きっとそれがキャラとして成立しているのだろう。
と、そんな他愛のない雑談を交わしながらの道中であった。
「よしっ。ここのはずなんだけど...。あっ、リニューアルしたんだ」
歩くこと数分、目的地に到着した2人。
美優が以前、一層の武器屋を訪れたのはかなり昔だったので、リニューアルしていたことに気づいてなかったらしい。店の前に立っている看板には、『品揃え豊富にリニューアルオープン!!」と可愛らしい手書きポップ体の文字で書かれている。
「じゃ、入ろー!やっと魔法が使えるようになる..!」
杖を求めて、スキップで店の中に入っていく花凛。
それに美優も続く。
「イラッシャイマセー」
小太りの中年らしい店主が片言で迎え入れる。白い大きめのTシャツにチノパンというシンプルな服装は、とても武器屋の店主には見えない。
だが、2人は意に介した様子も無い。
「うわ...すご....」
長短さまざまな剣や杖、ナイフやメリケンサックまでが壁一面に並んでいる光景に、花凛は言葉を失った。
「んー、まーこんなもんか。一層は」
リニューアルオープンがされていたのだが、五層を拠点にしている美優には少々貧相に映るらしい。
そう言いながら、机上にある青色のポーションを取る。
「アンタに半分飲まれたから買わなきゃね」
「あっ!それおいしいやつ!」
目ざとく花凛も反応し、美優の方へ向かう。
「私も買おーっと!」
3つ青い瓶を抱えた花凛は楽しげな表情だ。
「〈捕食〉で回復できるでしょ...。で、杖は決まったの?」
「おいしいから買うの!..あっ、そーそー、杖はあれにするよ」
指を指した方向には、真っ白に塗られている杖で、薄いピンクのリボンがあしらってあった。
「あー、うん。なんか花凛らしいね...」
普段から彼女はカワイイ物好きな、ザ・女の子って感じの趣味をしている。ピンクとか好きそうな。
対して美優は、シンプルでシックな落ち着いたデザインの物を好む。真逆である。
「じゃ、買ってきな」
「うん!」
花凛はお目当ての杖を取り、店主がいるカウンターへ向かった。
「おじちゃん!これ下さい!」
杖と瓶を割らないようにそっと置く。
「ハイヨー。〈キュートロッド〉ト〈MPポーション 〉3コネー」
店主が指を折って数えている。
ちなみに、ゲーム内の通貨は『ゴールド』と呼ばれるもので、クエストクリアやモンスター撃破なんかで入手できる。
尚、課金システムは存在しない。
「10900ゴールド......ダケド、オジョチャンカワユイカラマケテアゲルヨー」
おじさんはしわくちゃな顔をさらにしわを寄せながら笑って、手で「6」「0」「0」 「0」と数字を作った。
「えっ!いいの?ありがとっ、おじちゃん!」
花凛は、駄菓子屋とか行ったら十中八九まけてもらえる、そんな愛嬌の持ち主だ。小柄で人懐っこい表情を浮かべる花凛は、クラス内でも人気を博している。
件のムカデのクエスト報酬で得たゴールドで支払った。
「ハイ、タシカニ。アリガトネー」
「こちらこそありがと!また来るよ!」
杖を装備し、ご満悦だ。
魔法を使っている自分の姿を想像し、胸を高鳴らせる。
「はい。ポーション」
後ろに並んでいた美優が続いて、ポーションを購入する。
「ハイヨー。〈MPポーション〉10コネー。...3000ゴールドデス」
「はいよ」
彼女は最古参のプレイヤーなので、これくらいの出費は痛手でもなんでもない。
なのに、
「みれいゆちゃんはまけてもらえないんだー?」
と、ニヤニヤしながら花凛はこちらを見ていた。
「べ、べつにいいでしょ。うるさい」
少しムッとする美優。
彼女自身が愛嬌のある方ではないし、本人もそれを自覚している。
「ソダネー。胸ナイカラネー。胸」
「今、胸無いとかほざいたたかぁぁあ!?」
私が一番気にしていることをッッ!?
美優がカウンターに身を乗り出し、店主に飛びかかろうとする。
彼女が一番コンプレックスに思っている部分であった。
それを必死に抑える花凛。
「やめたげてよ!おじちゃん!美優ちゃんの慎ましいどころか真っ平らの、関東平野もビックリな胸のことは言わないであげてよ!」
「それ、全然フォローになってねえからぁ!」
・ ・ ・
一悶着あった後、2人が店から出た時にはもう辺りは暗くなっている。
美優は絶対にあの店には行かない、と固い決意をしたのだった...。
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一方その頃の開発チーム
「よしっ。今回のイベントはこれでいいんだな?」
「ああ、過去最高に盛り上がるだろうな」
「新しいシステムに加えて、景品も豪華だしな」
「ソダネー。タノシミダネー」
「店主のマネ流行ってるの?」
「じゃ、19時にアナウンスするぞ」
「「「はーい」」」