第11話っ!てぃーぶれいく!
更新再開します。
「疲れたあぁぁ...」
長時間スネイクと戦っていた美優は疲弊しきったらしい。
「なんか、うん...。やらしー戦い方だった!」
杖を買う前に、しばしの休憩。
2人は今、城下町の中にあるカフェに来ていた。
看板には緑と白で洋風のおばさんが描かれている、大手のオサレなカフェ。
ちなみにゲーム内にも現実世界にある店舗などは出店している。ゴールドで食べ物などを買うことができるため、非常に人気もある。2人が話に花を咲かせている、一層のスターバックスも満席だ。
「気にしてるんだから言わないでよ..それ...」
花凛の言葉に嫌な顔をした美優は、カフェオレが並々と入ったグラスを傾ける。
うん、おいしい。
「ごめんて。でも、かっこよかったよ!」
当の花凛はパンケーキを頬張っている。
実際、花凛は学校での雰囲気とは全く異なる美優に圧倒されていたところがあった。
「おいし!ス○バがここにあるなんて...。このゲームから抜け出せなくなりそう..」
「あー、めっちゃわかるわ」
激しく同意。
ほんとゲームって怖い。
美優はこのNEW LIFE ONLINEにて身をもって知っていた。
「それにしても」
と、一呼吸おき、
「何があったの!?」
一番の疑問を、美優は口にした。
「ムカデさんとお会いしたよ!!」
「意味わかんねぇ!」
・ ・ ・
それから美優が耳にした花凛の言葉は、俄かに信じ難い事実であった。
伝説のムカデと遭遇、イベント発生。運営がお遊びで作ったとしか考えられないユニークスキル。
そして何より驚いたのは、花凛のアホみたいなステ振りだった。
「まさか極振りとは....」
ならばあの速さも頷けるというもの。
正直、その速度は羨ましい、と美優は妬んだ。
「あと、極振りした人用の装備があるなんて知らなかったよ」
そんな情報は全く出回っていなかったのだ。この世界で常にトップクラスの美優の耳にも入らないから、その存在を知っている者は0に近いだろう。
それこそ、極振りした阿呆な輩は即、攻撃が入らなかったり歩くのが物凄く遅くなったりと不便過ぎる状況に気付きデータをリセットしていたから、知る由も無かったのだ。
いやまあ。
美優は改めて冷静に考えてみる。
ユニークスキル複数持ち。
極振りによる速過ぎるスピード。
運営さえも予想だにしなかったイレギュラー性。
「羨まし過ぎんだろぉぉぉぉおお!」
厨二病の美優は、咆哮せずにはいられなかった。
ちなみに彼女、「運営も予想だにしないイレギュラーな存在」とかいう言葉が結構お気に入り。
それは彼女の戦闘スタイルにも通じるものがある。
「うんまず落ち着いて美優ちゃん。あと、キャラが少しブレてるよ?」
オサレなカフェにいらっしゃっる方ほとんどが、こちらを見ていた。
はっ、と我に帰る美優。
私、クールキャラだったはずだろ。
コホン、と気を取り直すように咳払い1つ。
「で、これから杖を探しに行く訳だけど」
と、少しわざとらしくにこやかな笑みをたたえ、会話を変えた。
「おお。今正直美優ちゃんの切り替えの早さに驚いているけど」
やっぱり美優ちゃんはすごいや。
と、純粋な花凛は思うのであった。
「ここら辺でなんか良さげな武器屋みたいなのあったら、紹介して欲しいなーって!」
と、花凛は続ける。
美優は少し思案顔で、
「...うーん。ここら辺だとあんまり良さげーみたいな所はないかも」
まあ、1層だし。
「そっかー。じゃあ、武器屋ならどこでもいいや!」
花凛は早く魔法が使ってみたかった。何よりも。
別に魔法を主軸とした戦闘スタイルにするつもりも無かったし、実際の用途は回復魔法くらいのものだ。
だから、あんまり良いやつじゃなくてもいいのでは、と美優も思い直す。
「じゃ、こっから一番近いとこに行こうか」
美優は席を立って、カフェから出た。
「うん!..って、ちょっと待ってよー!」
花凛は良い返事をして、美優を追いかけた。