第10話っ!ぽーしょん!
「美優ちゃんのSTR、結構あった気がするけど...なんでだ?」
しばらく経って。
美優がもう30回程スネイクの背中を攻撃しただろうかという時。
花凛はふざけてるのか何なのかと最初は思っていた。
が、どうやらそうでもないらしいことに気付く。
「もしかしてスキルかな?」
美優とムカデが教えた甲斐あって、少しゲーム慣れしてきた花凛の予想は当たっていた。
花凛は『火遁の術』で出した炎の中でスネイクの隙を伺っている、美優に目を向ける。
最初、炎の中にいるのに何で大丈夫なんだろう?と疑問に思った花凛だったが、そういうスキルなんだと理解していた。
「もうすこし近くで見てみよう!」
80メートル程離れている美優とスネイクに向かって、花凛は歩き出した。
「『暗殺術』!!50回めっ!」
美優は何度も形を変化させてきた短剣で、右から左へと切り裂く。勿論スネイクの背中に。
「キシュゥゥ....」
「よし!...結構時間かかったなぁ。運悪っ」
50回目の『暗殺術』がやっと発動してくれた時にはもう、美優のMPはほんの少ししか残っていなかった。5%の確率は伊達ではない。
満タンだったスネイクのHPが急激に減り、0になる。それと同時に青白いエフェクトと共に消えていった。
「おー。お疲れ!」
思いの外近くに来ていた花凛が、美優に労いの言葉をかける。
「ありがと。結構疲れた...」
美優はMP回復のポーションを飲みながら疲弊しきった様子だ。
「なにそれおいしそう!ちょっとちょうだい!」
美優が飲んでいた青色のビンを指差す花凛。
ちなみにポーションは、HP回復のものやその他パフ系のものまで様々存在する。
「あんたMP満タンじゃん...まあ、おいしいし。ちょっとあげる」
先程スネイク相手に『蜈蚣ノ毒塗』を使って少し減っていた花凛のMPだったが、今はもう『MP自動回復』のおかげで回復していた。
花凛は「やったー!ありがと!」と感謝しながら美優からMPポーションを受け取る。
「美味しっ!あれ、ブルーハワイみたい!」
花凛に言わせればカキ氷のシロップのブルーハワイを水で溶いたみたいな味らしい。
「ちょっ、全部飲まないでよ!?」
凄い勢いで飲んでいく花凛を見て少し焦る美優。このMPポーション、意外と安くないのだ。
「美味しかったぁ!...あれ?もうないよ?」
「あんたが飲んだんでしょーが!」
首をかしげる花凛と底をついたビンを見て絶叫する美優。
「ごめんて。今度おごる!」
花凛は手を合わせて謝る。
ちなみに学校での2人もこんな感じのやりとりをしている。
「....仕方ないなぁ。で、どうする?これから」
美優は渋々新しく取り出したポーションをちびちびと飲みながら問う。
「一旦、町に戻ろ!『暗殺術』のことも聞きたいし...あと、私の杖も!」
魔法を使ってみたかった花凛はわくわくしていた。
「第一層の町には、良い杖あんまり無さそうだけど....。ま、いいか。」
五層の町の品揃えの良さを知っている美優からすると、第一層の城下町は少々貧相に映る。
だからといって花凛を五層に連れて行く訳にはいかない。
なぜなら、二層、三層と階層ボスに挑まなければ、五層に到達できないからだ。
今の花凛ならおそらく第四層ボスを倒せる、と美優は踏んでいたが、それではあまりにも時間がかかってしまう。
「あと、花凛に何があったのか、も詳しく聞きたいしね」
「じゃあ!街にれっつごー!!」
花凛は右手を高く上げる。
そして2人は森林のフィールドを抜け、町にたどり着いたのだった。