第9話っ!あんさつ?
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「ちゃんと見ててね。一瞬で終わるかもだから」
そう言って、美優はスネイクのいる方向へ走っていく。花凛ほどじゃないにしても、十分速いスピードだ。
「あの運動音痴の美優ちゃんが...。こんなに速く走れるなんて...」
美優の体育の成績は五段階評価中の2がついている。
そんな彼女が物凄い速さで走るのを見て、花凛はゲームの凄さを改めて感じた。
そんなことを思ってるうちに、美優はもうポイズンスネイクの近くに身を潜めている。
「『シャドウ』!!」
左手に持った杖が黒く光り、美優は自分の影の中に入る。
ちなみにこの『シャドウ』、影が無いと全く無意味なのだが、美優はたまたまこの暗い森林で影ができる太陽の光が差し込む場所にいたスネイクを選び、戦闘を仕掛けたのだった。
だが、影になって姿を消せるのも一瞬だ。
しかし美優には、一瞬で十分である。
「『暗殺術』!」
唱えると、右手に装備していた黒い短剣の形が変わる。
美優は影から飛び出して、スネイクの"背後"を針のようになった剣で刺しにかかった。
ザクッ。
「流石に一発とはいかないか...」
美優は唇を噛む。
見事命中したのだが、HPバーは全く減っていなかった。
スネイクは不思議そうにしながらも、反撃を試みようと口を開き噛みつかんとする。
「ギシャアッ!」
「『黒蝶の小楯』装備!『堅牢防御』発動!」
反撃のタイミングを知っていたかのような反応速度で、黒い盾を装備する。
そして、盾でスネイクの噛みつきを防ぐ。
『スキル : 堅牢防御』のおかげで少ししかダメージが入っておらず、ノックバックも無い。
美優はすぐさま、
「『分身の術』!」
MPを消費し、自分の分身を作り出す。
本物の美優がどれか分からず、キョロキョロと見渡すことしかできないスネイク。
美優はスネイクが自分に背を向けた瞬間に 、すぐさま分身の術を解いた。
そして、再度スネイクの"背後"から斬りかかる。
「また『暗殺術』だよっ!」
今度もしっかり命中したが、やはりHPは減らない。
またもや反撃を試みるスネイクだったが、美優は「火遁の術」の炎で行方をくらます。
「今日は運が悪いな...。まあ、20回に1回の確率だし、こんなもんか」
『敵の"背後"から短剣で攻撃を通すと、敵は即死する。但し、発動する確率は5%』
美優は、『スキル : 暗殺術』の効果を思い出しながら呟いた。
ちなみにこのスキル、ユニークでは無い。
五層に到達して、ある特定のクエストをクリアすれば誰だって獲得できるのだ。
だが、その確率の低さからこのスキルをメインで使うプレイヤーはほとんどいない。
しかし、美優はとある才能に相当恵まれていたので、このスキルを使ってでトッププレイヤーに名を連ねている。
「....いいよ。発動するまで当ててやる。長期戦は慣れてるしね」
美優は三回目の攻撃を"背後"から当てようと、『火遁の術』の炎の中から跳び上がった。
それを見ていた花凛は、というと。
「攻撃入ってないみたいだけど...私みたいだ!」
若干、仲間意識が芽生えていた。