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国立三葉異能力学園!!  作者: 山田の花子くん
ゲームスタート
9/24

8話

「子供だなぁ~圭は」


極稀に見る餓鬼のよう圭を、彩はケタケタと笑う。そして二人が立っているのを見て、自分も立つことにした。


「よっ……と! 」


掛け声に合わせて、足を上げ振り下ろす反動で起き上がる。


「咲夜は? 」

「疲れてるから無理ですぅー」

「はーい」


いじけた様に言う彼女が面白可笑しくて、つい笑ってしまう。

そのせいでまた咲夜がいじけるのを見ると、笑いがこらえられなかった。


数秒笑った後、彩はとある犯人を見る。

――ここまで走らせた、犯人くんを。



「……んだよ」

「嫌ぁ~何、いきなり走れなんてさぁ~ねぇ? 理由教えてくれないと、もーこれ重罪だよ? 」

「そうだよ、ちょっと唐突過ぎると思うな! 」

「後ろで何かあったらしいが、それとこれに何か関係でもあるのか? 」


3人にジッと見られ、犯人君__圭は口を開いた。

「ちゃんと理由があんだよ」


すこし遠くの惨状を見ながら、圭は説明し始めた。



「さっき、女性の悲鳴が聞こえただろ。

俺は振り返ったんだよ。やっと殺し合い始まったか……ってな。


実際予想通りで、人混みの中心部で誰かが泡となって消えていた。殺された人だと思う。ルールからして、現実世界に戻ったんだろう。


……でな、別にここまでは良いんだよ。

少し輪の乱れから離れて、いい感じにこう、グサッと。な?

殺れば良かったんだけど……



俺がここまで走って、逃げて言いたいことは、この仮装訓練状態は、余りにも出来すぎているって事。

本当に死んだ人は現実世界に返ってるのだと思うけど、それ以前にこの世界が余りにも現実的過ぎるんだよ」


「つまり……どういう事? 」


仮装世界だから、それなりに近いのは当たり前だと咲夜は思っている。だから、圭の言うことがよく分からなかった。



「要は、全てが現実世界と一緒にしているって事。


人を殺せば血は出るし、殺したと言う感覚も残る。

走って息が上がるなら、きっと痛覚も作動しているハズだし、死への判定もシビアだろう。


ただの刺傷ならば、物凄い痛いだけ。

その後大量出血で死ぬかもしれないし、死なないかもしれない。

完全に殺すなら心臓一突きか、胴体と首を離すか、脳をスライスするかのどれかしか無い。


それに、もし、本当に現実世界と同じならば。

“殺された”と言う感覚もあるハズだ。


人は急所を殺られても、直ぐに死ぬわけでは無い。

少しの痛みを感じてから、死ぬんだ。


だからきっと、心臓を刺されたなら、刺された感触を。脳をスライスされたなら、された感触を。きっと、受けるハズなんだ。


これって、凄く怖いことだから。

人によっては、トラウマになることだから。



……だから俺は、必死に逃げろって言ったんだ。

この俺の……あくまで仮定だけれど、答えに近い真実を伝えて起きたかったから」


「……は何、それ……」


語尾が震える。周りに目配せして、無意識に彩は固く手を握る。


3人は息を飲んだ。言葉を失った。

再現がよく出来ていると言うことは、同時に恐ろしいことなのだ。


殺し合いをする。

“死なない”殺し合いをする。



その恐ろしさを、漸く、理解した。

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