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国立三葉異能力学園!!  作者: 山田の花子くん
新たな学園生活
5/24

4話

「殺し合いってどう言う事だよ!!! 」

「命を軽く見すぎです!! 」


一瞬静まり返ったこの場は、直ぐに息を吹き返す。至るところから反論の声が上がり、先生の周りに駆け寄って行く。先生……否、学校に降りかかる多くの罵詈雑言。普段なら誰も言わないであろうその言葉達は、スラスラと生徒の口から流れる様に発せられている。


困惑していた。困惑せざるを得なかった。

そりゃそうだ。いきなり殺し合いだなんて言われ、寧ろしない方がいないだろう。


ザワザワ……ザワザワ……


不安、恐怖、好奇心、そんなたくさんの感情が入り交じり、大きな波紋となって広がっている。友達と話す者。先生に文句を言う者。地面に蹲る者。はたまた、何も気にせず大聖堂にあるピアノを引いている者。多くの音が入り交じり、不協和音となって大聖堂を埋めつくしていた。


「殺し合いって……意味不」

隣で、彩が一笑する。顔をめいいっぱいに歪ませ笑う様は、さほど学校の言っていることに興味は無く、寧ろ馬鹿にしている風に見える。

その反面、咲夜は「どうしよ、どうしよ。殺し合いなんてマンガでしか見たことない」と目を回し、挙句の果てにはフラァッと軽い目眩を起こして一輝に倒れかかっていた。



――そんな中、藤が口を開いた。


「……チッ……うっせぇなあ……。

私は、言うことが聞けない犬は嫌いなんだ……。

なぁ?お前らは、私を怒らせたいのか? 」


シン。

場が静まり返る。

チャキと音がし、彼女を見れば手には大鎌。あの、ホラー映画でよく見る死神が持つような鎌だ。無駄な装飾は一切なく、シンプルに鋭い刃が一つ。生徒(こちら)側に向けられている。

彼女の異能力だろうか。持ち手辺りからは白い玉がポゥと飛び交っていた。


ふつふつと、静かにでも確実に藤の殺気は生徒達を刺していた。息を吸うだけで汗が出る。口を開くものなら首が飛ぶ。それは安易に想像できたことで、圭は思わず身震いした。これぞまさに、蛇に睨まれた蛙。瞬きすら危ない、かたまったこの場は、藤本人によってまた動かされる。


「ハハ……静かになったなあ……ちゃぁんと、この言葉の意味を教えてやっから。そう、急かすんじゃねぇよ……殺しちまうだろ? 」

「藤先生!! 生徒を脅すような事はやめてください! 」


ニコリと微笑み、鎌をふり上げる彼女を平川が止める。

凡そ教師だとは思えない行動に、周りは一瞬で冷や汗が垂れ、ゴクリと喉を鳴らした。



「藤先生、またそう言う事を言ったら、僕が強制的に能力を潰しますよ」

「……分かった、分かった。嘘に決まってるだろ……? そう、本気(マジ)になさんな」


藤を見据える平川に、直ぐに彼女は下がった。

彼もまた、怒らせてはいけない部類だ。


「よかったぁ……」藤の答えに、平川は安堵のため息をもらす。

胸をなでおろし、にこりと微笑むと藤に「さぁ、説明して下さい」と促した。



「説明する。一度しか言わないからな、集中して聞くように。


そもそも、殺し合いと言ったが、正確には違うぞ。

三葉から死者が出たら、理事長と校長が大変なことになってしまうからな」


「自分は大変なことにならないんだね……教師のクセに」

「やめろバカ、聞こえるだろ」


ニヤニヤと言ってくる彩を、圭が叩く。

思っても口に出さない方が良いときもあるのだ。


「私は耳がいいのだが…………な」


「oh……」

「マジっすか」


口を引き結んで、向かい合う。

目線はこちらじゃないのに、殺気が完全に体に突き刺さっている。有り得ないと鳥肌がたった。


「やばい」

「な」


うんと頷き、今度こそは静かになった。

やっぱり、余計なことは言わない方がいいのだ。


コホンと分かり易い咳払いをし、今度はじっと2人を見た後、また話出した。




「この、国立三葉異能力学園では、異能力の練習を最大限に出来るよう【仮装訓練】と言う方法が用いられる。


この学園には『仮装を現実に、現実を仮装』に出来る言わば仮装世界(バーチャル)を作れる異能力干渉系異能を持った者がいる。そいつの能力を機械(テクノロジー)化し、いつ何処でも、仮装世界を作れる様にしているのだ。


今回の戦いも、これを使った物の1つであり、その事を私達の中では【仮装訓練】と言う。


つまり、殺し合いと言うのはこの仮装訓練状態での、“死なない殺し合い”の事だ。


まぁ、お前らは幾ら中学から居ようと、今まではずっと勉強しかしてねぇからなぁ……? そうそう自分の異能力を扱えられるとは、こっちも思っていない。


じゃぁ、何故こんな事をするのか……

馬鹿じゃなければ、分かるだろ……?


いいかお前ら、試験はまだ終わってないからな」



話終わったのか、ニヤニヤと悪どい笑みを浮かべながら台からおりる。入れ替わる形で今度は平川が出てきた。


平川は特に何も言わず、生徒を眺めた。藤の言葉に困惑する者、意味が理解出来た者、そう言った奴らを観察しているかの様に。


そんな中、彩達4人の答えはこうだ。



「試験って何……!? 」

「え、彩覚えてねぇのかよ……」

「彩ちゃん!? ついこの前の話だよっ? 」

「はぁ……進級試験のことだろ…どう捉えても」


ちょっとよく分からないとでも言うのか、口元に手を当てて頭を振る。過去の事を思い出そうと、明後日の方向を見つめだす。


「あ」

――思い出した



中学三年の終わり、高校に上がる為にあったのは、多くの進級試験。異能力者養成学校として、世界に名を馳せる三葉だが、それは高校のみの話で、中学の頃は勉強しかしていなかった。

それ故に進級試験は、全て筆記しか無かったのだ。

普通は可笑しいのだ。異能力を第一と考えるここで、高校に上がるとき、一度も異能の力を測らなかったのは。


そうだ、そうだった。

忘れていた。


頭の中には、当時の担任が放った一つの言葉。

中学最後の日、ホームルーム中に担任は言った。あの言葉を。


『良いですか、貴方達の本当の試験はこれからですよ。

きっと、一番最初に、洗礼が来るでしょう』


可哀想にと柔く笑って、先生の話は直ぐ終わった。一瞬で終わったが為に、ほぼ頭に残っていなかった。

あの時彩は、洗礼って先輩から戦いでも挑められるのかなぁ……?

とか、アホみたいな事を考えていたが……そうか、そう言うことだったのか。


つまりこの殺し合いは、進級試験の延長。

異能の素質を見抜く試験。



「思い出したぁ……」


彩は、ニンマリとわらった。

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