3話
「遠いね~」
「意外とねぇ~」
「ここも久しぶりだよな」
「何悠長なこと言ってんだお前ら」
彩、咲夜、一輝がキョロキョロ辺りを見渡し呑気に歩く中、圭はそんな3人を見てため息を吐く。そんな圭を見て、彩は悪どい笑みを浮かべる。
「ため息すると幸せ逃げるんだよ? 」
「んな迷信あるか、ばーか」
「あるんだよ、それが」
パチンと指を鳴らし、聞こえない様にあることを呟いた。
「――――――して」
その瞬間――――
「なんか言ったか?――――っ!? い゛っだぁ!」
突然足元が軽くなり、何も無いところで圭は前に転び、見事に額をクリーンヒット。
「お前っ!」
直ぐに立ち上がり、彩に掴みかかる。また何か自分にしてきたな。ワイシャツのえりに手を伸ばす――が、彩はそれを軽々躱した。
「あ」
掴みかかる勢いで、また地面に転落する。
「大丈夫~?」
背中越しにそんな弾んだ声が聞こえたが、無視して立ち上がり早足で彩に近づく。
「異能だろ?」
お前の考えなんてお見通しだ、と憎たらしいほど爽やかな笑みで笑い返す。
「さぁ? でも異能だったとして、アレをどう使ったら、イタズラに変えられるんだろうね?」
「チッ」
片眉上げてそういう彩は、自分の姉ながらとてもムカつく奴だ。
だが、彩の異能の性質を知っている自分からしたら、さっきの現象をに異能をどう使えば出来るのか、検討がつかなかった。だってアレは、扱いづらい異能だと記憶していたから。
「迷信は案外信じた方がいいんだぞっ」
「うるせぇよ」
バチコーンと☆が付きそうな勢いでウインクをかました彩に、笑顔で立ち上がりながら軽く彼女を小突く。
そんなこんなで、ようやく中心に到達。無事、人混みの中に紛れる事に成功した。
「多いなあ、人!」
見渡す限り、人、人、人。辺り一面が人だらけ。一体何人居るのだろうか。さすがマンモス校。規模がでかい。何となく全生徒では無いと分かるが、それにしては人が多い。
「何学科だこれ」
ざっと辺りを見渡し呟く。
「な、彩――――」
「あ~多いな~ホント気持ち悪いほどいる、ねぇ!?」
「あーー、うん。そうだな」
彩に聞こうと思ったが、人の多さに楽しそうにはしゃいでいるので、華麗にスルー。近くの生徒をチラリと盗み見し、ピンバッジを見た。銀色の小さなピンバッジだ。
三葉は制服意外の、自身の異能力が最も活用出来る格好で来てもいいとされている為、服装は様々だ。だからそれが付いている所も人それぞれだが、大抵は襟か胸元にある。
近くの生徒のそれを見ると、1と✳のマークが彫られており紫色の石が埋め込まれてあった。
三葉はマンモス校だけに、生徒を見分ける工夫が幾つか施されている。その1つがこのピンバッジ、数字とマークと石の色で学年と学科が分かる。
✳なら高校生。☽なら中学生。
数字はその学年。
石の色が紫なら異能力科。
橙なら開発科。
黄緑ならサポート科。
水色なら普通科だ。
どの学科も人数が多い為、こうしてピンバッジを付けることが義務づけられていのである。だから見れば一瞬で分かった。
あぁ、異能力科の人か。そう断言して、周りも見る。すると全員同じピンバッジを付けていて(勿論自分達も)、集まった生徒全員が一学年の異能力科だと言うことが推測出来た。
「何するんだろうね~」
「そうだな」
ほわほわ話す咲夜と一輝。
4人とも、中心部に来たはいいものの、一体どうしたら良いのか困惑してきた。何分か経ったところで、大聖堂の中心にある台の上に誰かが立った。
「生徒諸君、早急に静かにするように」
声が反響し、静かでリンとした音でも十分に拡大される。
キツイ言葉で放つ声の主は、同じくキツイ目でこちらを見下ろしている女教師だった。唐突な先生の登場に、辺りは水を打った様に静まり返る。
「偉いなぁ、言うことを聞けて。私は、躾がなっている犬は大好きなんだ」
そう言って高らかに手を叩く。
「藤先生。分かりましたから、話してください」
「あぁすまない」
女教師――藤の近くに居た、もう1人の男教師――>平川に注意され、めんどくさそうに生徒を見た。
「……あぁ平川が私に指図した事は、後でみっちり問うからな」
顔面蒼白になる平川。彼女の質問は、みみっちいのだ。
ギロりと平川を睨んだ後、ようやく口を開き出した。
しかし、彼女から発せられたものは、凡そ想像出来ない有り得ない内容だった。
「お前らにはこれから、
殺し合いをしてもらう」