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国立三葉異能力学園!!  作者: 山田の花子くん
新たな学園生活
2/24

1話

「いつ見ても大きいわぁ~」

「流暢なこと言ってる暇なんて、無いからな」

「ウイッス」



目の前には、巨大な白い建物。

これこそ、8:30までに来るようにと指定された音楽大聖堂である。大聖堂は高く高くそびえ立ち、自分達なんてありんこみたいだ。大聖堂の有名所と言えば、やはりサン・ピエトロ大聖堂だろうか。ああ言う、いかにもな感じであれば説明しやすいのだが、そもそも三葉の大聖堂は色々とおかしい。


まず、三葉は特にキリストさん祀ってない。

大聖堂が一般的に何の目的で建てられているのかなんてあまり詳しくない彩だが、なんかキリスト教が関係しているのは知っている。しかし、この学校特に宗教性はない。


次に、形が可笑しい。

巨大な塀に囲まれたこの建物は、彩の知識から持ってくるならば、サンタマリア・デル・フィオーレ大聖堂に近い。この説明だと、いかにもじゃないか!と難癖付けられそうだが、あくまで表向きの形だけだ。入ってしまえばあら不思議。なんと中にはコロッセオ~の状態。大聖堂とは似て非なる物だ。こんなん。


最後に、やっぱり大聖堂が大聖堂として成り立っていない。

最初のキリストさんに関連してくることではあるが、そもそもミサなんてしなければ、中に教会がある訳でもない。じゃぁ何で建ってるんだなんて思うが、そんなの知らない。建てた奴に聞け。


兎にも角にも、この大聖堂色々とおかしい。

見た目がそれっぽい為、学園の者はこの『どデカい白い建物』のことを、大聖堂と言っているが、実際なんの為に建てられたかは謎だ。


「さすが七不思議ですなぁ~」

「わかる」


2人は大聖堂の正門である、大きく頑丈な黒い門に自分のIDカードをかざした。


三葉学園において、このIDカードは命と同等にとても重要なものである。正門を通るとき、パソコン室など特別ルームを使う時の認証、今までの成績がカードに記録されていたりと、個人情報満載。ただの透明なプラスチック板だと言うのに、無くすと死を意味する。侮ってはならぬな。


「行くぞーい」


彩の呑気な声と重なり、ガガガガと門が開いていく。それを呆然と眺める――なんてことはせず、秒で数センチ開いた門の隙間から、中へ入って行った。


「先、しつれーしまーす」

「あ゛!?」


やり返しとでも言うのか、彩が入ろうとした瞬間に、圭が彼女を押し退け無理やり中に入る。


門から、大聖堂の中までは閑散とした一本道。

車4,5台は余裕で横に並べられるであろう道を、2人は全力疾走で駆け抜けた。


「あっ、彩ちゃん達だー! 遅い、遅いよ!!」

「……む、早く来い、そろそろ時間だ!」


少し先で、友人の声が聞こえる。焦りを含むその声は、どこか震えている。一人は眉を下げ、手を体の前で組み涙目でこちらを見る。一人は厳しく二人を見据え、ドスの効いた声で叫ぶ。ガチャガチャと金属が擦れる音がする。時間を見る暇はない。ただ、足を動かすのみだ。


「くっそ」

「やぁ~ばぁ~い」


地面を蹴る力が大きくなる。声こそ余裕だが、額には確実に汗が滲んでいた。顔を顰める。


早く酸素を回せ。

呼吸が足りない。

心臓が悲鳴を上げている。

足がはち切れそうだ。

息が上がった。


――あと、一歩


「なっ!?」


ドンッと背中が押された感触。

反射的に後ろを振り向くと、彩の口元が上がっていた。


「おまっ!」

「圭、私なら大丈夫」


お決まりのクサいセリフを吐いて、圭を見る。中門はもう彩の身長付近まで迫っていた。


間に合わない。

無理だ。

誰もが思った。

圭はたまらず手を伸ばす。


――ガタン


門が閉まる音がした。

格子の向こうで、彼女は笑っている。


笑うどころの話じゃない。

三葉はルールに厳しい学校だ。

違反は何があったもんか、想像がつかない。


しかし、彼女は笑っている。

不敵に、愉しそうに。


圭が瞼を伏せ、地面を見た。

――ダメだ、あいつ。


何故、こんな状況なのに笑っているのだろうか、俺のバカ姉貴は。


「なぁに、圭くん。

そんなにお姉ちゃんのこと、大好きなのー?」

「や、好きではねぇ。心配してるだけ――――」

「ばぁ」


声が聞こえて思わず顔を上げると、格子の後ろにいた彩がいつの間にかこちらに来ていた。いないいないばぁの形を作って、此方を見ている。


「は? 死ね?」

声がワントーン下がっている。

「ひで~」

「ムカつく顔してんのが悪い」

「君と同じ細胞組織~」


ニヤニヤ笑う彩を、ニコリと効果音がつきそうなくらい出来た笑顔で見る。その後「そういや……」と思い出した様にさっきのことを聞いた。


「お前、どうやって……?」

「そう言うところ、良いと思うよ」

まるでスイッチが変わった圭にウインクし、親指をかます。


「早く言え」

「なぁに圭くん、簡単な事さ」



怪しく三日月に光る口元。

歪んだ目。

至極楽しそうな声色。


彼女は、わらった。



「何、私の【異能力】で……って、ね?」



彼女の右目は、紅く妖艶に光っていた。



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