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影姫と御転婆姫

キシ…キシ…

廊下をゆっくりと踏みしめながら3人は歩く

屋敷の中もどこか厳かな雰囲気に包まれていて古風の木造住宅、それも豪邸ならではのビリビリとした空気を帯びていた


『案外すんなりと通してくださるんですねぇ…』


メルが庭の景色を見ながら口を漏らす

その後ろでは失が歩きながら何やらメモに書き込んでいた


『シャドウズの皆さんに抵抗だなんて滅相もございません…』


屋敷の女は俯きながら小さくそういった




『何かきこえないか?』

メルの言う通り他の二人にも何か綺麗な音が聞こえ始めていた


『わ…私はこの辺で…影姫はこの先突き当たりの襖を奥に進んでいただければ会うことができるでしょう…ですが気をつけてください…あの子は…呪われています…』


言い終わると何かに怯えるように影姫の母だと思われる女はそそくさと来た道を戻り始めてしまい、すぐに見えなくなってしまった


『呪われてる…ねぇ…』


メルは何か思うところがあるらしく自分の頭をつかむように右手で金髪をくしゃっと抑えていた

失も哀れむような目で十六夜の月を見上げていた



『あ……た………ひ』


襖に近づくにつれて先ほど聞こえてた音がより鮮明に聞こえてくる

どうやら声のようだ

それも綺麗に透き通った少女の声

メルは何重にもなっている襖を開けてどんどん奥に進んでいく


『せんばやまには…』


どうやら手毬唄のようだ

耳に心地よい高音の響

可愛らしくもあり美しくもあるその甘美に酔いしれたくなるような声


『お邪魔しまーす』


両手で豪快に最後の襖を開けるとそこは広い和室であった

しかし灯りはなく真っ暗な空間になっていてメルはよく目をこらす


『…あら、お客様でございますか。すみません、今灯りをつけますね』


シュッとマッチを擦る音

蝋燭に火が灯され、さらにそのまま行灯にも火を灯してふぅっとマッチを吹き消す音がした

行灯が照らしだしたその少女の姿はとても美しいものであった

黒薔薇の様な可憐な黒色の髪と眼

和服も黒が基調とされていてまさに名の通り影の姫、そのものであった


『お話は御趣味に合いませんか?…お嬢さん?』


『素敵ですね…御茶菓子代わりに一つ芸でも披露させていただきましょう…』


たわいもないものですが…と呟くと影姫は眼をつむり言葉を紡ぐ


どうやら童唄のようだ


【かごめかごめ

籠の中の鳥は

いついつ出会う】


影姫の唄に誘われたように部屋の隅から”文字”がメルを中心に集まってくる

わお、と驚きの声を漏らしながらもメルは一歩も動こうとはしなかった


【夜明けの晩に

鶴と亀が滑った

後ろの正面だぁれ】


唄が進むにつれてメルの足から頭をめがけてじわじわと文字が縛り付けてくる

つま先から足に絡みつくように脹脛(ふくらはぎ)、太もも、順々に縛られていってじきにメルは指先一本すら動かせないようになってしまった


『お分かりいただけましたか?私は呪われているのです…あまり長い間ここにおられますと貴女様も呪われてしまいますよ…?』


『これは大したものだ…だがまだ”足りないな”…!』


メルが右腕を思いっきり振り、文字を引きちぎると次いで左手、右足、左足と解放していき最後に髪をまとめるために頭を左右に振ると体にまとわりついた文字は全て落ちていった


『私達はその能力の専門家みたいなものさ、見慣れてるんだよ』


影姫は信じられないものを見たように眼を見開いて両手で口を隠していた

その横には失がいて何やらメモを彼女に見せたがっているようだった


(怖がらなくていい、メルは優しいから危害加えない)


影姫が読み終わると同時に失は無表情で影姫の頭を撫で始めた


『あぁ!ずるい!私もナデナデしたいぞ!』


失は早い者勝ちと勝ち誇ったようにも見える無表情をメルに向けていた


『あ、あの…お二人はどうしてここに…』


『あ、そうだった…

…影姫さん、貴女に協力していただきたいのです』


メルは先ほどまでとは打って変わって厳格(げんかく)な雰囲気を纏い影姫にそう語りかけた後ニヤリと口角を吊り上げた



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