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オレハ、スマホヲテニイレタ  作者: 舘 伝斗
2章 勇者よりネコミミだよね!-ガロティス帝国-
9/39

2-1 ユウシャハ、《アク》カラメヲツケラレル

今月6話目。

新章突入!


現在文字数、37,100文字


残り文字数、16,900文字


他の作品を更新してる暇がない。

でも予定ではあと2話か3話で目標達成だから何とか月末に他に作品も更新したい・・・

「~~~~~~~~~~~。」


  ガロティス帝国、地下実験場ではこの国の魔法研究者たちがその瞬間を人目見ようとほとんど全員集まっていた。


  その瞬間とはつまり、勇者召喚(・・・・)である。

  人が100人は入れるであろう実験場は中央にデカデカと鎮座している魔方陣と、勇者召喚を見ようと集まった野次馬研究者たちでいつも以上に窮屈に感じられた。


「それにしても詠唱が長いな。これだけ後ろじゃ勇者召喚の魔方陣も見えないし、出るか。」


  その窮屈な空間と、響き渡る巫女による勇者召喚の詠唱で、ある種の閉塞感を感じた一人の研究者は好奇心とこの息の詰まる雰囲気とを天秤にかけ、途中退席を選択した。


  だが、この判断が研究者の命を後に救うことになるとは露ほどにも思わず。









 -ガロティス帝国が勇者を召喚した。-


  この報せは勇者召喚から一週間と経たずに世界中へと広がった。

  勿論、ウィンブルス王国からガロティス帝国へ続く街道を進んでいる4人の耳にも入る。


「はぁー、勇者召喚ねぇ。これから魔王でも攻めてくるのか?いや、有り得るか。最近クラトが倒したところだし。」


  そう言いつつ少し天パ掛かった黒髪に、見るもの全てに怯えているかの様に見える伏し目がちの、中肉中背、実は異世界人である16歳の好青年。

  他の人と変わらないその体は実は神様特製ボデー。

  その身に宿す魔力は世界最高品質。

  まぁつまり俺、根倉悠斗(ねくらゆうと)は隣の女性の手に持つカードを一枚引く。


「魔王はこの辺り、というか人口の多い都市の近く、かつ、人のあまり立ち入らない場所で発生しやすいからな。まぁ本当のところは星墜ち(・・・)が原因だろうがな。っと、上がりだ。」




  星墜ち。

  ウィンブルス王国近くの街道にある日正体不明の光が降ってきた。

  ウィンブルス王国はすぐに調査団を編成、調査に向かわせたが成果はゼロ。

  代わりに正体不明の少年を拾う。

  まぁぶっちゃけ俺のことだ。

  その光も俺がクソ神に召喚された時に発生したものだ。




  そう言って隣のスライムが器用に持つカードを引いた胸元まである綺麗な金髪の女性。

  ほっそりとした顎、薄い唇にスラッとした鼻筋。

  切れ長の黒と赤のオッドアイに整った眉。

  その纏う衣を内側からこれでもかと押し上げる主張の激しい胸元。

  そしてなにより、その綺麗な金髪に聳え立つシルバーの毛を持つ兎人特有のウサミミ(・・・・)

  そう、彼女は俺の女神、ヴィエラさんだ。

  実は彼女、まだ18歳らしい。

  正直に言おう。

  見えない。大人びて見えすぎる。



 ピコンッ


 「あ、そろったー。」


  そのヴィエラさんの隣に鎮座する水色の流動生物。

  この世界ではスライムと呼ばれる最弱の魔物であるクラト。

  だが驚くなかれ、このクラトは特別製だ。

  何て言ったって俺の魔力を動力源に生きているからな。

  魔王だってシュンコロだ!

  というか実際に最近魔王をパックンチョしたところだ。

  見た目は二十センチの小さい奴だが、これは仮の姿。

  本来は三メートル近い巨体の持ち主だ。


  何で仮の姿かって?

  考えても見ろよ。

  町中に見たこともない巨大なスライムが現れても見ろ。

  すぐに国から討伐隊が派遣されるぜ。

  あ、あと定位置である俺の首に巻き付かれたら俺が死ぬだろ?


「むぅーー。こっちにゃ。やった!あっがりにゃー!」


  手持ちのカードが全て無くなり大はしゃぎしている幼女。

  首まである茶髪に真ん丸で大きなおめめ。

  頭にはピンッと立った黒色の毛を持つネコミミ。

  小顔なお陰で人形みたいな印象を与えるこの子は、ネコミミ、幼女、語尾ににゃ、ドジっ娘、しっかり者、妹属性と属性過多な女の子、ニアちゃん12歳だ。


「くっ、まさか僕がニアに遅れをとるなんて。これで残るは兄ちゃんと僕の2人だけ。兄ちゃん如きに負けられないっ。ニアの貞操は僕が守るっ!これだっ!ぐはっ。」


  この若干面倒くさそうなニアちゃんと同じ茶髪の少年。

  少しつり上がり気味の強気な瞳。

  ニアちゃんと兄妹だと誰からも分かるほど整った顔立ち。

  頭に生える茶色の折れ曲がったイヌミミ。

  ニアちゃんの唯一にして最後の家族。

  ニアちゃんのお兄ちゃんのウル13歳、シスコンだ。


  こいつは何だかんだで天然で毒吐いてくる。

  俺に対してだけなのでわざとだろっ!

  と叫びたくなるがどうやは本人は無自覚らしい。

  だが俺は大人だ。

  ニアちゃんの笑顔のため、俺は怒りをグッと我慢するのさ。

  まぁ兄弟の力関係は、

 ニアちゃん>>>>>>>ウル

 だから強気に当たれる俺の存在が嬉しいんだと思う。


  そんな俺たち4人と1匹が何をしているのかと言うと、まぁババ抜きだ。

  この世界、マナスにもトランプなるものが存在し、それを今日町で見かけたので暇潰しにやってるってところだ。

  過去の勇者、よくやった。


  そんなこんなで何度目かのババの引き合いの末、見事ウルを下した俺はぶつぶつ恨み言をいいながらカードを纏めているウルを他所に宿の外からガロティス帝国を眺める。


「勇者が気になるのか?」


  俺の視線に目敏く気が付いたヴィエラさんは窓を眺める俺の横へと移動する。


「まぁ、勇者が気になる、というよりはあの声が(・・・・)、ですけどね。」






 -ユグドル神の手先よ。

  今回はほんの挨拶だ。

  我はお前を見つけた。

  近く、この世界を変える催しが行われる。

  我が復活するまで我の配下、五星魔(ペンタプル)を見事退けてみせよ。

  勇者の召喚により、我は目覚めるっ!

  くくく

  くっくっくっ

  はぁーはっはっ!-




  魔王ヒゲヅラを倒し、ニアを助けた後、鼻血の出しすぎで倒れた俺の夢に()が現れそう言い放った。

  初めは、三段笑いだとっ!?

  とか馬鹿なことを考えていたんだが、目が覚めてからガロティス帝国を中心とした魔力の奔流により勇者が召喚されたと知り、俺は夢が夢でないことを悟った。


  あの黒がクソ神が言ってた邪神だとすると本当に厄介なことになる。

  邪神に目をつけられたお陰で、クラトの成長と俺の成長は、より急務となった。




  みんなが寝静まった頃、俺は一人部屋を抜け出す。

  クソ神との通話は通じない。

  前に本人が言っていたように忙しいようだ。

  だから俺は邪神に目をつけられたと言うメッセージのみ送っておく。


  そして俺は、遂にスマホの見覚えの無いアプリケーションマークに手を伸ばした。

  まだ見ぬ俺の力(・・・)を目覚めさせるために。











  所変わってガロティス帝国。

  執務室で皇帝と黒ずくめの服装に覆面という如何にもな男性が密談していた。


「ナダクよ。報告を。」


「はっ。

 光の正体は依然不明。ウィンブルス王国からはそのことに対する書簡を持った大使を送るとのこと。我々が調査した限り落下地点に何の変化もなく、ウィンブルス王国側の調査隊も不自然なくらい動きが少ないです。


 次に先日発生した魔王らしき謎の魔力波ですが、近隣住民によると発生していたのは一時間に満たないとのこと。また、発生原因、消失原因については何も手掛かりが無い状態です。


 最後に召喚した勇者の様子ですが、歴代の勇者と同様に訓練に励んでおります。・・・ですが、召喚の折、部屋にいた研究者全員(・・・・・)及び召喚を行った巫女は未だに意識不明とのこと。魔力の流れを見ることの出来る者に見てもらったところ、意識不明者全員から勇者へ、ある種の魔力バイパス(・・・・・・)が形成されているとのことです。」


  一息に報告される事態に皇帝は頭を悩ませる。


「つまり、星墜ちについては不明。魔力波についても不明。勇者召喚に付随した現象も不明。と。」


 ガシャァンッ


「お前は私を舐めているのかっ!」


  皇帝は淡々とガロティス帝国の無能さ加減を報告するナダクに八つ当たりする。

  だがナダクはそれを意に介した様子もなく言葉を続ける。

 これこそ本命で(・・・・・・・)あったかの様に(・・・・・・・)


「先ほど申しました、ウィンブルス王国からの大使についてですが、お耳に入れたいことが。」


「・・・・・聞こう。」


  豪華なテーブルをひっくり返してある程度心がスッキリしたのか皇帝はナダクに続きを促す。


「はっ、目撃者の言なのですが、大使はどうやらあの(・・)魔女兎のようです。それとその供に見覚えの無い少年が1人。いえ、最近同行者2人が増えたので計4人ですね。」


「あの、魔女兎だと?ウィンブルスめ、何か企んでいるのではないだろうな!」


「いえ、それがどうやら従魔を連れていないようなのです。それどころか神器(・・)も持っていないとか。」


「なにっ、それは真か?何故あの魔女兎がその様な馬鹿な真似を?」


「これは私の予測ですが、供の少年に何かあるのではないのかと。また、魔力波ですが、発生した日、近くの町の宿に彼らが宿泊した記録もあります。時間的に考えてこの4人が解決したのではないのかと。」


「ふむ、魔力波は彼らの仕業、いや、彼らが沈めたと考えるのが自然か。となると魔女兎だけでなくその少年も英雄級(・・・)の実力を持っていることになるな。まだ勇者では歯が立たんな。

 ・・・よし。今回はこちらから仕掛けぬ。ネロが近く、魔王討伐に勇者を連れて向かうというからこの国には英雄級がナダク、お前だけとなる。流石に1人ではウィンブルスの英雄級二人を相手取れないであろう。出来るだけ早くお帰りいただくか。万が一の場合は。」


「はっ、私が命に変えても二人を殺します。」


  ナダクはそう言うと霞のように姿を消す。

  だが皇帝はこの光景に眉ひとつ動かさない。

  彼の能力がそういうものだと知っているから。


  執務室に1人になった皇帝はメイドに命じて部屋の掃除をさせ、自分は備え付けのソファに腰を下ろす。


 突然発生したイレギュラーな魔王は神殿で復活を予想された魔王より強力である。

 その魔王を討伐できるものを英雄級と呼ぶ。

 現在ウィンブルス王国にはレグルス、魔女兎、ライスボール、そして正体不明の少年。

 対してガロティス帝国にはナダク、ネロ、レゴール。


「これでは再びパワーバランスが傾くではないか!何としても勇者を英雄級まで育てねばならんな。」


  皇帝はソファに腰掛け、備え付けのテーブルにいつのまにか置かれた資料に目を通し、召喚された勇者を思い浮かべる。



  180センチの長身に赤のメッシュが入った黒の短髪。

  柔らかな瞳、少し低めの鼻。

  彫りの深い顔が好まれるガロティス帝国の女性ですらため息を漏らす物憂げな雰囲気を持つその横顔。

  地球(・・)という異世界から召喚された勇者。

  剣の実力はまだまだ並みの兵士程度であるが、魔力に関して言えば召喚時で既に常人の50倍以上。

  召喚の折にその場にいた者たちと魔力バイパスが繋がっているという話からすると本人の才能はそこまでではないのだろう。

  だからこそ、この常人離れした魔力量は運が良かった。

  その名を・・・











「はぁぁぁ!」


  ガロティス帝国の訓練所。

  その一角で兵士に混ざって訓練を行う異世界人。


「まだ甘いっ!」


 ガキンッ、ガランガラン


「くっ。」


  新兵ではないにしろ実力的には下位の方に位置する兵士に手に持つ剣を叩き落とされ、訓練は終了する。


「お疲れさまでした。アキラ様。まだ剣の扱いに慣れていないようですね。」


  地面に落ちた剣を拾うアキラに声をかけるのは審判を勤めていた第一騎士団の団長。

  長身のアキラより更に頭ひとつ大きい顎髭を生やしていて、騎士団の中では随一の愛妻家と噂されるほど奥さんと仲が良い人当たりの良さそうな中年男性。

  騎士団の団長を任されるだけあり、その優しげな瞳からは想像も出来ないほどの実力者だ。

  なにせ彼は世界に10人しか居ない強者、英雄級と呼ばれる人物。


「ネロさん。・・・そうですね。つい先週までは剣とは無縁の世界で過ごしてましたからね。魔王と対峙してこのガロティス帝国を守るにはまだまだ実力が。」


「はっはっはっ。

 そう卑下なさるな。その気持ちさえあれば勇者はどこまでも強くなれます。これまでの先輩方がそうでしたからな。なに、勇者というものは実戦で於て急激な成長が成るもの。三日後の魔王討伐でもしかしたら私もあっさり抜き去られるかもしれませんな。はっはっはっ。」


  そういうとネロは相手の兵士の元へアドバイスに行く。


「魔法とか魔物とか、まだ実感はないけど召喚されたんだ。どうにかこの国を守れるくらいには強くなってみせる。まずは三日後の実地訓練だ。・・・悠斗(・・)。君ももしかしてこの世界に居るのかい?」


  アキラ、本郷(ほんごう)あきらは自分が召喚される二日前に行方不明になった、唯一親友と呼べる少年を思い浮かべる。




 ドクンッ


「ぐっ!」






 -力が・・・・か?-






「はぁ、はぁ。この世界に来て三度目か。頭に浮かぶあの影は一体なんだ?」




作品の感想・誤字脱字等の報告お待ちしております。

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