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オレハ、スマホヲテニイレタ  作者: 舘 伝斗
3章 武闘大会より精霊幼女!ー武闘大会ハロルディアー
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3-10 オレハ、ケイカイスル

 ウルの試合が終わり、参加者の中に手強そうな人が居ないかと観戦していたが、残念ながら、いや、この場合は幸運なことにと言うべきか、皆多少の強弱はあるが、アテゥマと同じくらいのレベルだった。

 今日の対戦カード、32試合を全て観戦し終わり、ウルと合流したあと俺たちは宿に向かって歩いていた。

 

 「うーん、今日の参加者の中にそこまで強そうな人がいなかったけど、ハロルディアってこのくらいのレベルなんですか?」

 

 俺は今日見た感じそこまでの強者が居なかった参加者たちを思い出す。

 

 「そうだな。大体ベスト8くらいまでは実力は似たり寄ったりな奴が多いな。」

 

 俺の言葉に去年も観戦したヴィエラさんが答える。

 

 「ユウトお兄ちゃん。あの人たちめちゃくちゃ強かっ・・・」

 

 「そうだな。あのレベルなら優勝も出来るかもな!」

 

 俺たちの会話にニアちゃんとウルも入ってくる。

 ウルいわくアテゥマとの試合は準備体操程度にしかならなかったそうだ。

 まぁ攻撃は最後の一発だけだったし、試合終わった直後も汗一つかいてなかったもんな。

 

 「はわわ。ウルまでおかしなレベルになってるにゃ。」

 

 ニアちゃんが珍しくアワアワしてる。

 取り敢えず頭撫でとくか。

 

 「はふぅー。」

 

 「そういえば、今日スパールタさんどうしたんだろうな?」

 

 「スパールタがハロルディアを蹴るとは思わなかったな。」

 

 「あ、それならおっちゃんが毎回使ってる宿に行ってみるか?実は昨日兄ちゃんが抽選会場から出ていったあと聞いたんだよ。」

 

 「おぉ、流石ウル。じゃあちょっと様子見に行くか。ヴィエラさんはどうします?知り合いなんですよね?」

 

 「いや、私は今回はやめておこう。もし体調を崩したとかなら大勢で詰めかけてもな。ニアと宿で待っているよ。」

 

 「じゃあ俺とウルの二人で行ってきますね。」

 

 「こっちだぜ、兄ちゃん。」

 

 俺とウルはヴィエラさんとニアちゃんと別れてスパールタさんの居るという宿へと向かう。

 

 

 

 

 

 「えっ、スパールタさん昨日から戻ってないんですか?」

 

 「えぇ、そうなのよ。昨日の夜に自己鍛練に向かうって言ったきり帰ってきてないのよ。」

 

 スパールタさんの利用している宿の女将さんに話を聞くと、スパールタさんは行方不明とのこと。

 こんなあっさりと個人情報を漏らしてもいいのかと思いもしたが、女将さんはハロルディア観戦歴が長いらしく、ウルの顔を覚えていてブロックも近い、というか隣だったということもあって教えてくれた。

 

 「わかりました、また探してみますね。お邪魔しました。」

 

 「そういえば、スパールタさんは自己鍛練は町外れの岩場でしてるって昔言ってたわ。詳しい場所はわからないけれど何かあるかもしれないからもしよかったら探しに行ってみてくれないかしら?」

 

 結局スパールタさんに会うことはできないと帰ろうとすると、女将さんは去り際の俺たちを呼び止め、そう教えてくれる。

 なんかRPGのおつかいクエストをやってるみたいになってきたな。

 いや、元々ハロルディアに出場したのもクソ神からのおつかいが理由だったっけな。

 俺、そのうちクソ神のパシリとかにならねぇよな?

 いや、別に面倒なら断ればいいのか。

 

 「わかりました。何か見つけたらまた来ます。」

 

 俺たちはそう言って宿を後にする。

 

 「・・・というわけなんですよ。」

 

 宿に戻った俺たちはさっき聞いた話をそのままヴィエラさんたちに報告する。

 

 「なるほど。その岩場なら心当たりがある。ドラちゃんに乗ってすぐのところだから見に行ってみるか。今から行けば日暮れ前には帰ってこれるだろう。」

 

 

 

 

 

 ハロルドからドラゴンに乗って僅か5分。

 こんな近場に癒しの鍛練スポットがあるんです。

 利用料金は何と無料!

 自然のものなので多少地面が削れても大丈夫です。

 では、鍛練スポットのようすを見てみましょう!

 

 「何かめっちゃボコボコなんですけど。この辺だけ地形違くないですか?」

 

 俺たちはヴィエラさんの提案でスパールタさんが自己鍛練していると思われる岩場の上空をドラちゃんで旋回していた。

 空から見る岩場は、岩場と言うよりむしろクレーターだった。

 その光景に思わず変な脳内ナレーションが流れてしまった。

 

 あのおっさん、自己鍛練とか言ってやってること憂さ晴らしじゃねぇだろうな?

 

 「これだけ荒れてるってことはスパールタはこの辺りで鍛練していたっていうのは正解みたいですね。」

 

 「とりあえず下りてみるか。ドラちゃん、頼んだ。」

 

 「キュアーーー。」

 

 ドラちゃんから降りるとウルとニアちゃんが眉をひそめる。

 

 「どうした、二人とも。」

 

 「兄ちゃん、少しだけど血の臭いがする。」

 

 「ニアも感じたにゃ。」

 

 二人の言葉に俺とヴィエラさんの頭にもしかしてという可能性が過ぎる。

 

 「ヴィエラさん。」

 

 「あぁ、あいつが自己鍛練とかで傷つくとは思えない。可能性としては襲い掛かってきた魔物を返り討ちにした時の返り血だが・・・」

 

 「二人とも、臭いの元まで案内できそうか?」

 

 「こっちだ。」

 

 俺とヴィエラさんはウルの案内で血の臭いのする方へと歩いていく。

 だが、歩みを進めるごとにウルとニアちゃんの顔色が徐々に優れなくなっていく。

 

 「具合でも悪くなったか?」

 

 「いや、これはマズイかもしれないな。二人だけじゃなく私の鼻にも血の臭いが漂ってきた。」

 

 「それは場所が近くなってきたからじゃ無いんですか?」

 

 「違うよ兄ちゃん。それもあるけど、この臭い、かなりの出血量だ。急いだ方がいいかもしれない。」

 

 余りの血の臭いにこの先で何かが起こっていることが確実なので、歩くのを止め走って臭いの元へと向かう。

 そこから更に3分ほど進むと、俺の鼻にも独特の鉄っぽい臭いが漂って来る。

 

 「あそこだ!あの岩の裏辺りだと思う!」

 

 臭いに顔をしかめていると先導するウルがクレーターの端辺りにある巨岩を示す。

 

 「ニアちゃんは待ってる?」

 

 「・・・そうするにゃ。」

 

 「臭いがあれなら離れてていいよ。クラト、ニアちゃんを守ってて。」

 

 血の臭いに青い顔をしたニアちゃんを体内のクラトに任せ、俺、ヴィエラさん、ウルは岩場を回り込む。

 

 「何だ、これ。」

 

 回り込んだ俺たちの足元には大量の血痕。寧ろ血の水溜まりという光景が広がっていた。

 だが問題はそこでは無かった。

 

 「おかしいな。これだけの血液を流した大元はどこだ?」

 

 「そうだな。それにこれだけの血溜まりなのに血を踏んだ後や何かを引きずった後も無いぜ。」

 

 俺達はこの血痕はあるのに傷付いた生物が近くにいないという不思議な光景に困惑する。

 

 「辺りには、他に何も無いみたいですねスパールタさんのものじゃなく鳥形の魔物か何かの血か?ならスパールタさんはどこに行ったんだ?」

 

 岩場の裏は身を隠せるほどの障害物は無く、岩の上にも誰も居らずあるのは不自然な血痕だけだった。

 

 「いや、兄ちゃん。よく見るとこの岩、元々この場にあったんじゃなくここまで動かしたみたいだ。もしかしてこの下に何かあるんじゃないか?」

 

 ウルの言葉に岩の接地面を見ると、確かにわずかに引きずったように岩に沿って地面が削れていた。

 

 「動かしてみるか。クラト、持ち上げてくれるか?」

 

 ピコンッ

 

 「任せて。」

 

 俺の指示にクラトは4本腕のゴリラのような魔物の形になる。

 

 「ほう、カイザーコングか。また魔王を倒したらしいな。」 

 

 その姿にヴィエラさんが呟く。

 ゴリラ型のクラトは一軒家ほどある岩に手を掛け、力を込める。

 が、その岩はびくともしない。

 少しの後、クラトはその岩から手を離し、近くの小さい岩を持ち上げては器用に腕を組み首を傾げている。

 

 「ん?クラト、どうした?」

 

 ピコンッ

 

 「何かね、この岩ね、他の岩と違って動かないんだよー。」

 

 「重くて持てないってことか?」

 

 ピコンッ

 

 「重くはないはずなんだけど、何ていうのか地面にガチッてなってて動かないの。」

 

 ふむ?

 どういうことだ?

 

 「なるほど。どうやらこの岩、何かの魔法がかかっているな。」

 

 俺とウルとクラトが首を傾げていると、ペタペタと岩を触ったヴィエラさんがそう告げる。

 

 「魔法で動かなくしてるんですか・・・何のために?」

 

 「さあな。目的は知らないが持ち上げてみればわかるだろ。」

 

 「クラトでもダメだったこの岩を?あ、壊してみます?」

 

 「いや、そんなことをしなくてもユウトがクラトと一緒に持ち上げれば行けるはずだ。どんな魔法にしろ、より高質な魔力の前では無意味だからな。本来はそこまで差が出ないから解除魔法を唱えないと難しいが、ユウトの魔力なら力業で可能だろう。」

 

 「へー、魔法って魔力で無効化できるんですねぇ。んじゃ、クラト。」

 

 ピコンッ

 

 「はーい。」

 

 クラトは俺の声に反応して手早く俺を包む。

 今回は戦闘じゃなく作業なので蒼天の戦鎧(ブルーハイランダー)ではなく普通に体に沿って纏わり付いているだけだ。

 

 「ふむ、パワースーツ的な感じだな。」

 

 「兄ちゃんどうした?」

 

 これ案外便利なんじゃね?と、俺が物思いに耽っているとウルが顔を覗き込んで来る。

 

 「ん、あぁ。このパワースーツがなかなか便利なんじゃないかって思ってさ。」

 

 考えるのは後にしてまずこの岩を動かすか。

 

 クラトを纏った俺は岩の表面を少し傷つけ、取手を作り手を掛ける。

 

 「よい、せっ!!」

 

 取手に力を入れて一気に持ち上げようとするが、岩に重力以外の何かの力が掛かっているようでビクともしない。

 

 なるほど。

 これが固定化の魔法かな?

 

 俺はその力を包むように魔力を広げる。

 魔力が岩を覆う魔法を侵食するとともに、岩がズズッと持ち上がりはじめる。

 

 いけるか?

 

 「せーのぉっ!!」

 

 ズボォッ

 

 俺は一気に岩を持ち上げ、その岩の置場を探し、見つからなかったのでしょうがなく持ち上げたまま岩の下を覗く。

 

 「っ!?スパールタさんっ!!」

 

 岩の下には全身傷だらけになり、手足もあらぬ方向に曲がったスパールタさんが地面に埋もれるように倒れていた。

 

 「おっちゃん!?」

 

 「スパールタっ!何があったんだ!」

 

 ヴィエラさんは回復魔法を掛けつつスパールタさんを岩の下から引きずり出す。

 岩の下に何もなくなったことを確認した俺は、すぐに岩を元の場所に戻してスパールタさんに回復魔法を掛けているヴィエラさんの元へ向かう。

 

 「ヴィエラさん、スパールタさんは?」

 

 「一応生きているが、私の魔法では限度がある。すぐに街の治療師に見てもらわないと。」

 

 「何でおっちゃんがこんなことに。」

 

 「事故ではないだろうな。誰かの仕業と見て間違いない。スパールタを良く思ってない者か、ハロルディアをめちゃくちゃにしようと目論む者か。犯人探しは後だ。まずは急いで街へ戻るぞ。」

 

 「クラト、スパールタさんを運んでくれ。すぐにドラちゃんのところまで戻るぞ。」

 

 

 

 

 

 すっかり日も暮れた頃、スパールタさんを街の治療師に任せた俺たちは、宿に戻りさっきのことについて話していた。

 ニアちゃんはすでに夢の世界へ旅立っている。

 

 「スパールタは一命を取り留めたが、数週間は寝たきりだそうだ。」

 

 「誰がおっちゃんをあんな目に!」

 

 「分からない。犯人の目的も分からない。もし犯人の標的がスパールタなら治療院が襲われるだろうが、あそこは兵士の詰め所も近いし安全だろう。だが、標的がハロルディアの参加者だとすると少しマズイ。誰が襲われるか分からないから警護のしようがないし、何よりスパールタを倒せる者だ。大抵の者はろくに抵抗も出来ずに殺されるだろうな。」

 

 「せめておっちゃんが目を覚ましたら犯人も分かるんだけどな。」

 

 「ここでいくら考えても答えは出ないですよ。犯人探しは兵士に任せましょう。」

 

 「そうだな。クラトも居るし俺たちならその犯人が襲ってきても返り討ちにできるもんな!」

 

 そうだよ。元々俺は頭を使うのが苦手なんだ。

 犯人探しは兵士に、襲撃者の撃退はクラトに任せればいいんだ。

 これぞ俺の奥義、他力本願(あとはまかせた)!!

 

 「そういえばヴィエラさんの未来予知で犯人がわかったりしないんですか?」

 

 「え、姉ちゃんも未来が見えんのか!?」

 

 「私の予知は自分の身に降りかかることしかわからないからな。残念ながら今回は私は狙われないみたいだ。」

 

 そいうえばヴィエラさん能力は自分のことしか分からなかったな。

 さて、ということは本格的にやることが無くなったな。 

 

 「じゃあ明日に備えて寝ますか。明日か明後日にはクラトも増えるでしょうし。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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