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オレハ、スマホヲテニイレタ  作者: 舘 伝斗
3章 武闘大会より精霊幼女!ー武闘大会ハロルディアー
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3-3 オレハ、スクウ

うーむ、家では執筆が進まんな。

 恐怖の高速空路(・・)の旅開始から4日。

 初日で耐性ができた俺たちは普通に空の旅を楽しんでいた。


「おぉー、相変わらず凄い早さで景色が流れていくなー。」


「すごいにゃ。下を走ってる馬車も軽々追い抜いていくのにゃ。」


「二人とも、いくらクラトが付いてるからと言ってもあまり端に寄ると落ちるぞ。」


「はーい。」


「気を付けるにゃ。」


 二人はヴィエラさんにたしなめられ、下を覗き込むのをやめる。

 というか二人とも危機感無さすぎませんか?

 クラトを命綱にして二本足でドラちゃんの横腹に立つとか。

 体が地面と平行だったぞ。


 二人はきゃっきゃとはしゃぎながらドラちゃんの背に登り、俺の方を心配げに見つめる。


「兄ちゃん、昨日から始めたそれ、何してんだ?」


 ウルに聞かれ、俺は動きを止めずに顔だけウルに向ける。


「・・・・・・・・・魔力の鍛練だ。」


 俺は少しの沈黙のあと、そう答える。

 だがウルもニアちゃんも、ヴィエラさんでさえ胡散臭そうな顔を崩さない。


「ウル、ニア。ユウトも色々あるんだ。突っ込んでやるな。」


 そんな俺の様子を見かねたヴィエラさんは二人にそう言い、優しげな視線を向けてくる。


 やめて、そんな可哀想な子を見る目で見ないで!


 俺は羞恥心に身悶えしたい気持ちを押さえ、"God式"で知った魔力鍛練法を続ける。






 魔力を増やしたい、従魔を増やしたいアナタへ!

 1日10分~やればやるだけ伸びる魔力鍛練法!

 こんな簡単なこと、何で気付かなかったんだ!と絶賛の嵐。

 その方法はズバリ、


 ラジオ体操第一(・・・・・・・)!!


 ラジオ体操第一は魔力の無い地球が産み出した最高の魔力鍛練であり、全身の筋肉を満遍なくほぐし、魔力の器を広げます。


 *尚、効果には個人差がございます。



 ・(よくある質問)・



 Q.魔力の器って?


 A.魔力は血管と同じように全身を巡る管(魔力管)を流れています。魔力管は魔力を流す通り道であり、器。魔力管が太くなるとその分魔力は増えます。



 Q.1日10分で効果があるって本当?


 A.本当です。個人差はありますが、少なくとも日常生活や戦闘で増加する1.2倍は皆さま増加されています。



 Q.ラジオ体操第一が分からない。


 A.ラジオ体操第一のやり方は下部の文字をクリックすると動画で詳しく解説されます。


 "ラジオ体操第一のやり方が分からない方はこちら。"






 そう、俺は今異世界の遥か上空で昔懐かしいラジオ体操第一を踊っていた。


 クソ神に言われて"God式"でこれを見つけ、初めは何言ってんだと呆れたが、これまでクソ神の言葉に嘘は無かったことから一応、"鑑定カメラ"でラジオ体操第一をやる前と後の魔力量を見ると、確かに僅かではあるが増加が見られた。

 単純計算するとラジオ体操第一を100回繰り返せば魔力量が今の倍になる。その為、俺は暇な移動中はラジオ体操第一を踊っていることにした。


 そんな背景があり、俺はラジオ体操第一を踊っているのだが、これはキツイ。

 何度も同じ動きをスローペースで繰り返すという単純作業。思ったよりも負担であるし、ラジオ体操は元々きっちりやると一回で軽く汗ばむレベルの運動だ。そんな運動をずっと続けるのは体力的にかなりしんどい。

 そして何より3人の俺を見る目が痛い。


 俺は目を閉じ、ヒシヒシと感じる視線を無視してラジオ体操を続けることにした。




「~~~~~~~~~っ!」


 瞳を閉じてラジオ体操第一を続けること一時間弱、瞳を閉じていた俺の耳に声が届く。


「ヴィエラさん、今何か聞こえませんでしたか?」


「ニアも聞こえたにゃ。助けてーって。」


「二人とも何言ってるんだ?聞こえたも何も、ここは空だぞ?」


 俺とニアちゃんの言葉にウルは何も聞こえなかったと返す。


「ドラちゃん、少し高度を下げて辺りを旋回してくれ。下で何かあったのかもしれない。」


「きゅぁーーー!」


 ヴィエラさんにも聞こえなかったようだが、俺とニアとゃんの言葉を信じてドラちゃんに指示を出してくれる。


「いたっ!あそこだ!誰か魔物の集団に襲われてるぞ!」


 ドラちゃんが高度を下げたことで、ヴィエラさんがすぐに地上で誰か襲われていることに気がつき、指を指す。

 その先を視線で追うと、確かに数台の馬車が魔物の集団に襲われていた。


「あれは、キラーホーネットか!まずいぞ、奴らは倒せば倒すだけ集まってくる習性がある!」


 ヴィエラさんの言葉で魔物をよく見ると、馬車を襲っている魔物は人の胴体ほどの大きさの蜂であった。


 取りあえず"GodSearch"でキラーホーネットを検索する。



 何々、キラーホーネットは体液に集合フェロモンを含んでいる?ベテランの冒険者でも恐れる?

 そりゃ倒せば倒すほど出てくるって、あんなサイズの蜂が絶え間なく襲ってきたら命がいくつあっても足らんわな。


 あれ?でもキラーホーネットは縄張り意識が強くて巣から離れないって書いてるな。近くに森もなさそうだけど、そういうこともあるのか?


 俺は考えつつ馬車の回りで力なく横たわる護衛だったらしい死体に目をやる。

 既に何人か倒れており、武器をもってキラーホーネットに立ち向かっている人数は10人に満たない。

 一方のキラーホーネットはその倍は居るようだ。

 何匹か落とされているのを見るにまだまだこれから増えるのだろう。

 確実にこのままでは全滅することになるだろう。


「どうする、ユウト?」


 ヴィエラさんは答えがわかってるだろうに態々確認してくる。


「勿論助けますよ。」


「でも幾らユウトお兄ちゃんたちが強くてもキラーホーネットはどんどん増えるから勝てるか分からないにゃ。」


「大丈夫だよ。考えがある。」


 心配がちなニアちゃんに俺は自信ありげにかえす。


「ふむ、ならキラーホーネットはユウトに任せて私たちは救助を優先しようか。ウルとニアはこのままドラちゃんに乗っててくれ。」


「いや、俺も戦うよ!」


「ダメだ。ウルはニアに付いててくれ。」


 ウルの言葉をヴィエラさんが即座に否定する。ウルも確かに戦力になるが、そうするとニアちゃんが危険にさらされるしな。俺もヴィエラさん同様許可できないな。

 というより今回はクラトの力があれば十分だから俺も降りなくて良いんだけどな。


 ウルも渋々納得したようだ。

 そうこうしている内にドラちゃんが地面まで飛び降りても問題ない高さまで降りていく。


 キラーホーネットの何匹かはドラちゃんに気付き、こちらに向かってくるがキラーホーネットと戦っている護衛たちはまだ気付いていないようだ。


「クラト、向かってくるキラーホーネットを傷つけずに飲み込め!飛び降りるぞ!」



 ピコンッ


「まかせてー!」



 俺の合図でクラトがウルとニアちゃんから離れ、こちらに向かってくるキラーホーネットを覆うように広がりながら落ちていき、それを追うように俺とヴィエラさんも飛び降りる。


 バクンッ


 スタッ


 ズダンッ


 ・・・ジーーン


「くぅっ!流石にまだ高かった・・・」


 うまく二本足で着地できたはいいが、膝のクッションが効かず両足の痺れに蹲る。


「大丈夫か、ユウト。何なら少し面倒だがキラーホーネットの相手は私がしようか?」


 着地に失敗した俺を見かねてヴィエラさんが心配そうに寄ってくるが、俺は首を振り、提案を却下する。


「だ、大丈夫です。やるのは俺じゃないんで。・・・クラト、キラーホーネットを傷付けずに全部飲み込めるか?」



 ピコンッ


「できるよー!!」



 俺の指示にクラトはウツボカヅラの様な魔物に擬態し、ウツボカヅラとは思えない俊敏さで近場のキラーホーネットから次々に飲み込んでいく。


 よく見たら体と頭はウツボカヅラだが四肢が獣のそれになっている。あぁいう魔物なのかクラトが複数の擬態を同時に使っているのかは分からない。

 クラトが複数の擬態を同時に使っていると信じよう。あれはキモい。


「ユウト、いくらクラトが倒したとしてもキラーホーネットは一匹でも倒すと何処からともなく仲間が飛んでくるぞ?まさかこの辺りのキラーホーネットを狩り尽くすまでクラトに飲み込ませる気か?」


「いや、多分クラトならキラーホーネットをいくら倒しても仲間は飛んできませんよ。」


 その為にクラトに丸飲み(・・・)してもらってるんだから。

 この世界の住民がキラーホーネットを倒そうとすると、武器であれ魔法であれどうやっても体液が出るからな。集合フェロモンとか知らないだろうし、丸飲みすれば安全なことを知らないんだろうな。

 まず人間の胴体ほどあるキラーホーネットを丸飲みにしようとしたら大型の魔物かスライムしか無理だもんな。


「まぁ大丈夫というなら信じよう。では私は怪我人の手当てをしてくるからここは任せた。」


 そういうとヴィエラさんは駆け足に馬車へと近づいていく。

 勿論そんなヴィエラさんに向けてキラーホーネットが牙を剥くが、高速で移動するクラト(ウツボカヅラ型)がそれを良しとせず片っ端から排除していく。


 ヴィエラさんも任せると言った言葉通り、腕の一振りで簡単に倒せるキラーホーネットに目も向けず馬車に向かう。


 するとようやくキラーホーネットの減少に気づいた馬車の護衛たちが、向かってくるヴィエラさんとキラーホーネットを排除するクラトを見て安堵の息を吐く。


「キラーホーネットが減ってる?」


「乗り切ったのか?」


「・・・あの二人組の仕業か?」


 そんな護衛たちにヴィエラさんは速度を緩めて近づく。


「キラーホーネットの討伐は私たちに任せてくれ。あと回復魔法が使えるんだが、治療が必要な怪我人は居るか?」


「お、おぉ。仲間が二人ほどキラーホーネットに刺されて倒れてるんだ。もし解毒ができるなら早く診せてやってくれ。」


 護衛の中で一番背の高い男がヴィエラさんの問いに答え、早く回復魔法が使える(・・・・・・・・)と思わしき俺に診せるよう伝える。


「診てみよう。」


「診てみようったって、あんた見たところ獣人だろ?早くあっちの魔法使いを呼んでくれよ。あんたが行くよりあの兄ちゃんに来てもらった方が速いだろ?」


 診ると言いつつ怪我人の元へ一人向かおうとするヴィエラさんに護衛の男は疑問をぶつけるが、ヴィエラさんはそのまま怪我人が居るであろう馬車の陰へと向かう。


 そんなヴィエラさんの行動を訝しげに男たちは見送る。

 馬車の陰に倒れている二人の様子はかなり危険なものだった。まずキラーホーネットの針に刺された場所が腹部であり、動脈が傷ついたのかかなりの血液が溢れている。

 馬車の乗組員であったのか、少女が傷口を押さえてはいるが血は勢いを緩める気配はない。


「ふむ、確かに酷いな。キラーホーネットの毒は麻痺毒だが刺されているのが胸か。解毒しないと不味いな。」


「だろ?だから早くあの兄ちゃんを・・・危ねぇっ!」


 怪我人の様子を見るヴィエラさんの元へ馬車の下に隠れていたキラーホーネットが襲いかかるのが護衛の男に見え、警告を発して撃ち落とさんと駆け出す。が、


「まずは解毒だな。あぁ、それと・・・」


 ヴィエラさんは護衛の男の警告に耳も貸さず、まるでキラーホーネットが見えていないかのように怪我をした男に手をかざす。


 次の瞬間、キラーホーネットを撃ち落とそうと駆け出した男の目にあり得ない光景が飛び込む。


 シュパッ


「キラーホーネットは任せろ(・・・)、回復魔法が使える(・・・)。と言ったろう?」


「なっ、なっ!」


 男の目に飛び込んできた光景は二つ。


 ヴィエラさんに襲い掛からんとするキラーホーネットが突如何かに飲み込まれる光景。

 そして獣人であるヴィエラさんが魔法を使う光景だった。


「ヴィエラさーん、こっちは片付きましたよー。」


「ふむ、怪我人ももう居ないようだし私たちはこれで失礼する。」


 ヴィエラさんはそういうと俺の方へ歩いてくる。


 ヴィエラさんマジかっけー。

 俺もそんな颯爽と去ってみたいわー。


「あ、まって、待ってください!見たところお二人は徒歩のご様子。宜しければ近くの街までご一緒いたしませんか?この時期でしたらハロルドに向かうのでしょう?」


 そう言って傷口を押さえていた少女が俺たちを引き留める。

 よく見ると人形みたいに大きな目に薄い唇、絡まりの無い水色の髪は腰まで伸びている。

 凄い美幼女だ。(美少女ではない。)


 あ、勿論血だらけじゃないよ?

 水の魔法で一瞬の内に返り血を落とした後だ。


「気持ちは嬉しいんだけど・・・」


「悪いが私たちは私たちの移動手段がある。」


 俺がやんわりと断ろうとするとヴィエラさんが先に少し強めに拒絶する。


 あれ?何でヴィエラさんそんなに怖いの?

 心無しか幼女を見る目が険しいような・・・


「ユウトお兄ちゃーん!ヴィエラお姉ちゃーん!」


 ヴィエラさんに恐怖を感じていると何処からかニアちゃんの声が空から聞こえてくる。


「ド、ドラゴン!?」


「何匹いるんだ・・・」


「折角キラーホーネットから解放されたのに。」


 俺たちの元へ降りてくるドラちゃんたちを見て護衛の男たちが絶望の表情を浮かべる。


「悪いな、私たちの移動手段はドラゴンだ。」


「きゅぁーーー!」


 そういうヴィエラさんの背後にドラちゃんが舞い降りる。


「ではな。」


 ヴィエラさんがそう言って踵を返しドラちゃんに乗ろうとすると逆にニアちゃんが降りてくる。


「大変にゃ!魔物がっ!」


「どうしたんだ?ニアちゃん。」


 あまりに慌てているニアちゃんの姿に俺は状況を飲み込めずに聞き返す。


「兄ちゃん、姉ちゃん!凄い数の魔物が向かってきてる!!」















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