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オレハ、スマホヲテニイレタ  作者: 舘 伝斗
3章 武闘大会より精霊幼女!ー武闘大会ハロルディアー
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3-2オレハ、トウヒスル

あけましておめでとうございます。


二週間空きました。が、悪いのは冬休みと言う私をたぶらかす悪者のせいでございます。

 そんなこんなで"ハロルディア"への出場を決めた俺は、ウィンブルス王国へガロティス帝国の皇帝に書簡を手渡した報告をした後、ウィンブルス王国のスラムにある、従魔の待つヴィエラさんの家へと戻ってきた。


「なぁ、兄ちゃん。本当にここが姉ちゃんの家なのか?」


「ん?そうだけど?」


 家に着いたウルが遠慮がちにそう告げ、再び家を見る。


「何でこんなボロ家に住んでんの?姉ちゃんの見た目から全く想像出来ないんだけど。」


「ウル、失礼にゃ。」


 ポカッ


「いてっ。だって・・・」


「まぁ俺も初めてこの家を見たときはそう思ったけどな。」


「裏庭に行ってみれば分かるさ。何で私がこの家に住んでいるのかがな。」


 ヴィエラさんはそう言って家へと入っていく。


「裏庭?」


「お宝でも埋まってるのにゃ?」


「いや、多分従魔だろ。従魔の数が多いって聞いたことあるし。」


「従魔!?クラト以外の従魔がいるのにゃ!?早く見に行ってみるにゃ!」


 ステテテー


 従魔と聞いたニアちゃんが目を輝かせ、家の裏へ回り込む。

 ごめん、ニアちゃん。裏庭に居るのはムキムキの猿と変な色の羊だわ。

 残酷だから俺の口から直接伝えられないけど・・・


「ウル、ニアちゃんって動物とか好きなの?」


 俺は思いのほかテンションが高かったニアちゃんを見てウルに尋ねる。


「うーん、そんな様子はなかったけどなー。集落に居たときは動物は食糧でしかなかったし。まさか、楽して食糧が獲られた!とか思ってたりして・・・」


「いやー、ニアちゃんに限ってそんなこと無いだろ。とにかく追いかけてみようか。」


 俺とウルはそういいつつニアちゃんの後を追って裏庭へと回り込む。


「ふわぁーーー!ドラゴンにゃー!可愛いにゃー!!」


 裏庭に回り込んだ俺たちが目にしたのは、廃墟と化したスラムの街を我が物顔で歩く数匹の従魔たち。

 そして、すぐ近くにいたドラゴンに抱きつくニアちゃんがいた。


「ドラゴン!?ニア、危ないぞ!」


「ウル、別にあのドラゴンはヴィエラさんの従魔だから害そうとしない限り危険はないぞ?」


「あ、そうなの?ドラゴンを従魔にするとか。姉ちゃんって何者なの?」


「さぁ?俺も詳しくは知らないな。この世界でかなりの実力者ってことは知ってるけど。」


「・・・もしかして姉ちゃんってウィンブルス王国の主要人物なんじゃない?ほら、スラムもこんなに自由に使ってるし。」


 あぁ、そういえば俺がこの家に来てすぐにヴィエラさんに連れられて王様に会ったな。

 あれ、ヴィエラさんて実は滅茶苦茶重要人物だったりするの??


「そうでもないぞ?ただ少し前に魔王の大量発生があってな。そこでドラちゃんたちが活躍したらこの辺り一帯を自由にしてもいいと許可をもらっただけだ。元々人も居なくて国でも持て余していたそうだからな。。」


 俺とウルの疑問に後ろからヴィエラさんが答える。


「「魔王の大量発生!?」」


 ヴィエラさんの言葉にウルとニアちゃんが揃って声をあげる。


「ん?どうした?二人とも。」


 めっちゃ目をキラキラさせてるし。


「いやいや、兄ちゃん。どうした?じゃねぇよ。少し前にあった魔王の大量発生で活躍したって。じゃあ姉ちゃんは"魔女兎"!?」


「ニアも知ってるにゃ。"魔女兎"さんが居なかったら世界の1/5は魔王に破壊されていたって。」


「えっ、ヴィエラさんってそんなにすごい人だったんですか?」


「まぁ、私じゃなくて私の従魔達がな。」


「いやいや、"魔女兎"っていったら数多のドラゴンを従え、自らも空を駆け、魔王を蹴散らす。っていう歴代でも5本の指に入る強者だよ!」


「そうにゃ。ニアたちも集落でよくそのお話を聞かされたにゃ。それで集落のみんなで将来そんな格好いい獣人になろうねって。」


「ヴィエラさんってまだ18歳って言ってましたよね?それって何年前の話なんですか?」


「ん?もう少しで3年経つかな。」


「ってことは15そこらで世界の英雄になったんですか!?強い強いと思ってたけど、ここまでとは。」


「何言ってるんだ。そんな私が手に負えなかった五星魔(ペンタプル)を両断したお前が言うか。」


「っ!?そういえば。・・・兄ちゃんってただの女好きのヘタレじゃなくて姉ちゃん以上の実力も持ってたのか!?」


「凄いにゃ!ユウトお兄ちゃんとヴィエラお姉ちゃんが居れば怖いものなしにゃ!」


 ニアちゃんがキラキラとした瞳で俺を見つめてくる。あとウル、誰が女好きのヘタレだコラ。

 あぁニアちゃん・・・俺の良心が痛むからその目をやめてくれ・・・。


「いや、あれはクラトの力であって・・・」


「何言ってるんだ?従魔は元々弱肉強食の世界で生きてきた魔物。主人が自分より弱ければ逃げていくこともあるんだぞ?まだ逃げられてないってことは、長年連れ添ってきた信頼関係か、もしくは実力が駆け離れているかだぞ?」


 そうなのか。

 でもクラトを従魔にしてまだ1ヶ月経ってないよな?

 なら信頼関係ではない?

 じゃあ実力が駆け離れている?

 俺がクラトより強い?いやいや、まさか。

 ガブリン(雑魚の代名詞)にも勝てなかった俺が魔王を蹴散らすクラトより上な訳ないだろ。


「なぁ、クラト。お前は何で俺に付いてきてくれるんだ?」



 ピコンッ


「んー?だってご主人様はクラトのご主人様だよー?」



「でも、ほら。従魔って自分より弱い主人からは逃げることも出来るんだろ?」



 ピコンッ


「ご主人様の強さは分からないけど、ご主人様のこと大好きだから逃げるつもりはないよー?」



 ・・・なんだろう。

 クラトの無条件の信頼が辛い。

 そうだよな。本来従魔は契約で従うらしいけど俺の場合はクソ神産の能力で(強制的に)従わせてるもんな。

 逃げられるわけ無いか。

 あれ、俺って相当クズなんじゃね?


「へぇー、兄ちゃんってマジで強かったんだな。」


「ユウトお兄ちゃんは最初から強かったにゃ。アノールドって兵士さんもワンパンだったにゃ!」


「そういえばユウトの本気って見たことなかったな。"ハロルディア"で存分に見せてもらうか。」


 ・・・あれ、何かハードル上がってね?



 ピコンッ


「ご主人様ー、頑張って優勝しようねー!」



 あぁ、うん。そうだな。

 取りあえずクラトでも撫でて落ち着くか。


 グニグニ


 あぁ、癒されるわー。


「さて、じゃあそろそろ行こうか。あんまりのんびりしてると受け付けに間に合わないからな。」


「そういえば"ハロルディア"が行われるハロルドって国はここからどのくらいかかるんですか?」


「兄ちゃん、そんなことも知らないのか?」


「ユウトお兄ちゃん、それはニアでも知ってるにゃ。」


「し、仕方ないだろ。最近までずっと森の奥で生活していて世間のことなんて何一つ知らなかったんだから。」


「へぇー、そうなのか。てっきり兄ちゃんが単純に馬鹿なのかと思ったぜ。」


「それにしてはあんまりワイルドさがないにゃ。何て言うか、良いところの貴族様みたいな感じにゃ。」


「まぁ、ユウトにも色々あるのさ。で、ハロルドだが、ここから西へ馬車で二ヶ月くらいだな。」


「二か月もかかるんですか・・・馬車って乗ったこと無いんですけど、酔うんですよね?」


「ん?あぁ、酔うが、馬車は使わんぞ。"ハロルディア"に間に合わんからな。」


「そういえばそうだな。"ハロルディア"って開催まであと一ヶ月もないよな?」


 えっ!?


「受付ならもう二週間切ってるにゃ。」


 えぇっ!?


「・・・あれ?間に合わない?」


「きゅぁーーー!」


 俺の台詞にドラゴン(ドラちゃん)が雄叫びをあげる。


「えっ、嘘ですよね?」


「間に合うさ。」


「いや、俺、そこそこ高所恐怖症なんですけど。」


「陸路を行くとは言ってない。」


「えっ、聞いてます?ジェットコースターとかも苦手なんですって。"ハロルディア"は諦めて別のに出ましょうよ。」


「みんな、用意するものは無いな?ドラちゃん、皆、出発しよう。カンキ、メープル、何時も通り他の子達の引率を任せたぞ。」


「うききっ!」


「めぇー!!」


 俺の主張を無視したヴィエラさんの掛け声と共にカンフーモンキー(カンキ)ファンシーシープ(メープル)たちがドラちゃんを始めとしたドラゴンズの背に乗る。

 因みにドラゴンズはドラちゃんを含めて10頭いる。


「さて、じゃあみんな、ドラちゃんの背に乗ってくれるか。そろそろ行こう。」


「えっ、いや、マジですか?」


「マジだ。諦めろ。それに・・・そろそろユウト、私を惚れさせたくはないか?」


 後半俺にしか聞こえないよう呟いたヴィエラさんの言葉に俺の意思は固まる。


「さぁ!ウル、ニアちゃん。張り切って行こうか。」


 俺はそう言ってさっきまでの弱気を感じさせないよう、出来るだけキリッとした表情でドラちゃんの背に乗る。

 おっ、思ったよりドラちゃん柔らかいな。低反発なマットみたい。


「なぁ、ニア。兄ちゃんのあれって・・・」


「上手いことヴィエラお姉ちゃんに操縦されてるにゃ。ニアもあんな風になりたいにゃ。」


「えっニア?」


 意気揚々と思わぬ目標を語り、ヴィエラさんに続いてドラちゃんの背に上るニアちゃんに驚きつつ、ウルも恐る恐る上がってくる。


 因みに他の従魔たちは9頭のドラゴンの背に各々別れて乗っている。


「さて、それじゃああと二週間しか時間が無いことだし、飛ばしていこうか。」


「えっ、ちょっ、ヴィエラさん。それは・・・」


 その言葉に俺はものすごく嫌な予感がした。


「何か兄ちゃん、何時も以上にヘタレてない?」


「たしかにいつもより怖がってるにゃ。」


 俺が何に恐怖を感じているか知らないウルとニアちゃんが甚だ心外な評価を下してくるがこの際どうでもいい。

 これだけは止めなければ。


「ヴィエラさん、ほんとに考え直しませんか?ほら、ドラちゃんが飛ばすと俺たち落ちちゃうかもしれませんし。」


「む、確かにそうだな。何時も私だけしか乗らないから気づかなかった。」


 ほっ。

 よかっ・・・


「じゃあクラト、私たちが落ちないよう固定してくれるか?」



 ピコンッ


「まかせてー!」



 ヴィエラさんの指示にクラトが俺の首元からドラちゃんの背に着地し、全員に向けて触手を伸ばしシートベルトのように固定する。



 っておぉーい!クラト!

 お前は俺の従魔!俺の嫌がることを積極的にしてどうする!!


「よし、これでいいな。出発だ!」


「「「「「きゅぁーーー!」」」」」


 バサッバサッ


 ドラゴンズは出発の合図と共に大きく羽ばたき、浮上し始める。


「おぉー!たけぇー!!」


「凄いにゃー!!空を飛んでるにゃ!!」


 あぁ、二人とも。そんなに気を抜いてたら・・・


「「「「「きゅぁーーー!」」」」」


 ある程度の高度まで浮上したドラゴンズが再び鳴き、一際大きく翼を翻し、


 バヒュッ


 ガクッ、ガクンッ


 ウルとニアちゃんが意識を失った。




 考えてくれ。

 ウィンブルス王国からハロルドまでは馬車で二ヶ月くらい。

 馬車だから出せても時速30kmぐらいだとして朝の9時から日暮れの17時頃の8時間。いや、道中2時間の休憩を挟むとして6時間走るとしよう。


 そこから算出される二国間の距離は30km/h×6h×60日で道のりが約10800km。

 その距離を二週間、つまり1/4の期間で進もうとすると移動時間が同じとして時速120km。

 空を飛ぶことができるから直線で向かうことができるとしても、時速80kmは出さないと間に合わないだろう。


 誰だ、大したことないじゃんとか言ったやつ!

 確かに現代の地球の人には高速道路ほどの速度でビビることはないだろうがな、こちとら車じゃないんだぞ!ドラゴンだぞ!剥き出しだぞ!

 つまり空気抵抗が半端ないんだよ!

 その結果がこれだ!


 俺は空気抵抗に抵抗虚しく破れ去ったウルとニアちゃん(敗者たち)を指差す。


 この凄まじい空気抵抗に抵抗出来てしまうこの体が今は忌々しいぜ!

 くそ、こうなったら!


「クラト。気を紛らわしたいから分身の方の話をしてくれ。」


 現実逃避に走る。



 ピコンッ


「えーとねー。」



 笑いたくば笑え!

 俺はクラトの触手を鼻に当て、溢れ出る鼻水を回収させつつクラトの話を聞いて気を紛らわせるのだった。



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