- Ctrl - 3
気が付けば俺は360°見渡す限りの草原に横たわっていた。
立ちあがって改めて見渡すと、2人の青年が立っていた。1人は見覚えがある。確か・・・ 優介・・とか言ってたっけ。
なんて事を考えてると優介ではないもう1人の青年がこちらに近づき話しかけてきた。
「ようこそ。 現実世界へ。」
「はぁ? げ・・・現実!?」
「やはり。まぁその反応も覚悟はしていましたが。」
今までいたのが現実世界ではなかったのか。俺もちゃんと母親から産まれ、人間として生きてきた。もちろん成長もちゃんとしていたのだ。
「じゃあ、俺が今まで生きてきた世界はなんだよ。」
「俺が書いた小説で生きてきたんだよ。」
「小説・・・ てめぇまさか・・・」
「ああ、申し遅れました。3代目 空野 陽といいます。」
3代目・・・? 小説の中で生きる・・・? 訳がわからない。意外と冷静に働いた俺の頭は明確な証拠が欲しかった。
「3代目ってなんだ。 小説の中で生きるとはどういう事だ。小説は字として残るから仮に俺がいたのだとしても時間は進まず成長もしないはずだろう?」
「まぁ焦らずに。 全てを話しましょう。」
「まず始めに。 あなた達は何なのか。俺が書いている、非現実的な日常と名のつく世界の登場人物です。なぜ成長しているのかというと俺はまだ書き続けているからです。」
突飛な話すぎて頭がついていかなくなった。先ほどまで冷静に働いた思考回路は完全にストップし、現実を真正面から受け、口をあけて愕然としているのみだった。
「1代目 空野 陽が世界を創ってしまった以上、小説の終わりを迎えると言う事は、あなた達は物語に沿った展開を迎え、そして消滅、または死ぬということで。 それではだめだと思った1代目は自身の創った小説を飛ばして小説の中の人に書かせるという手段を取ったのです。」
「ま、待ってくれ。僕は? なんで小学生だったのが高校生になっているの?」
優介も口を半開きにし、恐る恐る尋ねた。
「そこにいる和馬が物語の続きを書いたせいで小説内時間がズレてしまったんだ。おっと、話を戻す。小説の中にいるやつに小説を書かせるということは、つまり、あなた達は、非現実的な日常という小説の中の小説の中の小説にいる登場人物というわけで。」
「馬鹿ってなんだお前!何の為に現実へ連れて来たんだ!早く説明しろ馬鹿野郎!」
口調に対し怒りが沸点に達した俺は怒鳴り散らすと胸倉を掴まれ横腹を蹴り倒された。
「お前少しは黙れよ。いいか? お前らは俺の手の上で転がってるんだ。忘れんな。あ、あははは・・・ すみません、取り乱しました。こほん」
俺でも蹴り返せるような無防備な足があったが蹴り返した所で状況は回復しない。俺は従うことにした。何よりここで倒せたとしてもこの世界からは出られずじまいだろう。
「じゃあこの和馬が騒いでるので説明するとしましょう。結論から言うと、戦争をしましょう。この3人で。」
「はぁ?戦争?たった3人でか? がふっ!!」
再び横腹を蹴られ、口からは赤いどろっとした液体が噴き出した。
「じゃあ言い方を変えましょうか。この3人で殺し合いをしましょう。異論は認めません。まぁどうせてめぇらなんか小説消しちまえば消滅するがな。」
「まず、優介と和馬には僕を渡す。そいつらを使って殺しあうってわけだ、わかるか?」
3代目はそう淡々と話した。俺は考えることを諦め、こいつの指示のいうとうりにする事にした。
「僕は、和馬は改造人間ゆかり、優介は人造人間ゆかりを渡す。まぁ、そうつらを従わせて戦うってやつだ。」
「ちょっと待って! ゆかりって現実の!? 小説内の!?」
「どっちもだ。 ああ、言っておくのを忘れていた。小説内の君たちは登場人物に『和馬』という名前がのるだけで、現実世界にも全く同じ君たちがいる。そいつらも敵だ。そこで俺は隔離操作して小説内のゆかりを改造人間として、現実世界のゆかりの模造版、人造人間を創って、お前らに渡すわけだ。」
「え、現実世界の俺らはその事を知らないだろう?現実世界だから隔離操作できるはずも無いだろう?」
「目の前に世界を壊す事のできる能力を持った人間達がいたら、君たちは黙って見過ごせるのか?」
世界を壊す事が出来る?そもそも、何の為に殺し合いをする?なぜ俺の幼馴染を僕として戦わなくてはいけないのか?優介も、ゆかりに告白をしてフラれてしまったのだと聞いている。なぜそこまでして知り合いに執着しているのか?そんな疑問さえも口に出せなかった。
「ほらよ。和馬は改造人間F-32の切符。優介は人造人間G-2の切符。殺し合いまでは3年間時間を与えてやる。元の世界に戻って作戦でも練ればいい。セカイはちゃんと戻しておくからな。」
見てくれてありがとうございましたm(_ _)m