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「がたっ 痛っ・・・てぇぇぇええ!」
激しい痛みと共に朝を迎えた。この寝起きは非常によろしくない。今日は何が起きるんだ。
現状を確認する。俺は2段ベッドの上の段に寝ていたはずだが、部屋を飛び出して今廊下にいる。ベッドに戻り枕元に置かれた目覚まし時計を見るとデジタルな数字で7:17と書かれていた。6:30に目覚ましセットしたと思っていたがすっかり忘れてただの時計と化してしまっている。
そんなダメダメな男子高校生 木下 和馬はこうして1日のスタートをきるのである。休日の日は家に引きこもり、ただただパソコンの前に座り動画を鑑賞する。高校を卒業すれば確実にヒキニートである。そんな息子を冷たい目でみつめながら朝食を部屋に持ってきてくれる母。一般家庭にこんな生活を送る人なんてほとんどいないだろう。
「さぁて 今日ものんびりしまs・・・」
ピーンポーン
こういう時に限って来る。
まず俺は常時下着。ドアの前には女性がいて下着のまま出てしまえばもう家から飛び出すほどの大痴態だろう。いや、家から飛び出したらもっとキケンだ。
ささっと普段着ない私服(接客用)に着替え、靴を軽く履き、ドアノブへ手を伸ばす。
「あ、どうも。宅配便でーす。」
そういえば、今使っているキーボードのDeleteボタンとEscapeボタンが壊れてしまっている。2、3回くらいしか触れたことのないはずだが、なぜ壊れるのだろうか。使わないので放置でも構わないが、どうしても気にしてしまうので、買うことにしていたのだ。そんな事も忘れてしまっている自分が怖い。いつかやらかす。
お金を支払い、キーボードを受け取り、本体へ接続。
うむ、しっかりDeleteもEscapeも反応し、触感も軽い。新しいキーボードを買った時のこの快感がたまらない。
さて、今度こそ動画を・・・
ピーンポーン
今度はなんだよ。ゆっくりと玄関へ向かう。
「おっはよ~! 約束。憶えてるよねっ。」
「ゆかりか・・・。 はぃはぃ。」
今日 桜野 ゆかりという幼馴染が家に泊まりに来るという約束をしていた。俺のスキル「ヒキニート」を消し飛ばしたいところだ。1人でのんびりしたかったが、まぁいい。
8時15分 何故かシャワーを借りると言い出し、部屋を出て行った。わずかな時間だが、1人の時間を手に入れた。
さっきヒキニートを消し飛ばしたいと言ったがありゃ嘘だ。やはり1人が落ち着く。
早速俺はパソコンに向かい、某動画サイトにログイン。俺はいつも動画を観賞してはコメントを投下していくという、暇人がやってそうな事をしている。実質俺がその暇人という分類に属すると思う。
「はぁー すっきりした。 ありがとっ。」
8時42分 俺は1人の時間を終えた。欲張ればもうちょっと欲しかった。
「ところで、お前なんで浴びてこなかったんだ?」
「面倒だったから?」
女子ってわからん。あれかわいいこれかわいいって言うが、傍から見れば棒読みで大して興味なさそうだ。俺からはそう見える。
動画を探すのも飽き、「そこに山があるから登る登山家」のように面白そうなサイトを探す。「そこにサイトがあるから検索する暇人」である。
「あ、これ知り合いが書いてる奴だ~!」
「ん、ゆかり、これって・・・」
俺は今小説が並べられたサイトを見ている。ゆかりが指差した所には 「非現実的な日常」と書かれた中二病の臭いがするタイトルがでかでかと書かれていた。
知り合いというので一応クリックしてみる。天使と悪魔が堕ちる話だった。なかなか面白そうな展開が予想できる。途中で終わってはいるが、先が楽しみだ。
「楽しそう~ 私も小説書いてみたいな~♪」
「そうか、奇遇だな。俺もだ。じゃあ一緒に書くか!」
「うんっ!」
気づけばもう夕方。書くと言ったものの、面白いと思った小説を見た後になると、どうしてもそれに近い小説ができてしまう。頭の回転力に乏しい俺は結局悪魔、魔王が天使、勇者に返る話という、続きみたいな感じの小説になってしまった。これもまた面白いものだと思う。
「ゆかりはどんなの書いたの?」
「えっとねー、すごい能力を持った人たちが戦う話~。」
「いいねー。後で見せてよ。」
「うんっ! さて、晩御飯つくろっか~」
そういうとゆかりは勢いよく立ち、エプロンをしてキッチンへ向かった。
「今日はハンバーグがいいな!」
「ひ~な~た~?」
「はいはい。ちょっと、俺みたいな小説書いてる人がいてね。また新しいセカイが2つ増えたよ。楽しそうだね。」
「うん・・・。」
俺はこのセカイで何年・・・ いや、何ヵ月茜と過ごせるのだろうか。
見てくれてありがとうございましたm(_ _)m