- 小説世界の終わり -
目の前にいる俺は俺をどうしようとしてるのだろう。あいつの目的が見えない限り、「最善策」というのは見つからない。ただ自分自身に殺されるのだけは絶対に嫌だった。
今までにない怒りの塊を纏い、人格すらもふっ飛ばし、我を忘れ、殺意だけで殺そうとした。どうしようにももう止められない。
「お前の目的はなんだ!俺はもう用済みのはずだろう!」
そう。もう気づいていた。俺はすでに死んでいる。分かった事はあいつが3代目を殺すと必ず意思の通じた「2代目」が怒りを持って現れるのは目に見えている。
和馬がDeleteしてしまった3代目の物語はあいつが復元させ、まだ続いている。本当に和馬と優介を殺す為ならDeleteさせて好都合ではなかっただろうか。
「和馬と優介を殺す為なら!なぜDeleteを創った!なぜ消してしまった3代目を復元させた!」
自分では精一杯叫びかけているつもりだが、がくがくと震えた膝や腕はもはや使い物にならなかった。
「ほんとお前馬鹿だな。自分で創ったくせに。わかんないのならわかんないでかまねぇよ。お前は既に死んでるんだから。」
もう、限界だ。相手は俺の書いた小説を持っおり、あいつも「コピーペースト」が使えるのは知っている。だけどこちらはナイフ1本。敵うわけがない。
俺は声にならない声を叫び続け、ひたすら「陽」にナイフを構えて突進した。
「ガンッ!!!!」
何が起こったかわからない。ただ、これだけは分かる。俺は負けた。乾いた音はまだ脳裏に鳴り響く。
俺は、結局何がしたかったんだろうか。面白半分に小説を創り、こうして小説に襲われ、殺されたのだ。もちろんこうなるとは思ってなかった。
なんだこれは・・・。俺が使ってたパソコンだ。DeleteキーとEscapeキーが取れて壊れている。手を伸ばすがユラユラと透けて掴む事ができない。
あたりを見回す。机に散らかったプリントと教科書。イスには制服が掛かっている。そして・・・
「陽! お前なら出来る!俺らには出来ないが、小説を創ったお前ならあいつに勝てるはずだ!」
和馬。
「はは・・。俺の登場はなかったけど、まぁ。陽ならできる。俺達の事は構わないからさ。セカイが壊れてしまう前に。」
ゆかり。
「お義兄ちゃん。ごめん・・・。 僕、やっとわかったよ。2代目は死んじゃったけど、初代として僕はまだここに居るんだ。全部、終わらせて。」
優介。
「好きだったけど・・・。もう一緒にいれないんだね。私が消えても、忘れないでよね。」
茜。
みんな・・・。
「ごめん・・・。 俺は何がしたかったのかよくわからなかったけど、犠牲にしてしまってごめん・・。」
俺は平静を保てなかった。次々に涙があふれ出てくる。皆俺に優しくしてくれた・・。なのに・・ 小説ごと皆も消去するしか手はなくなった。
大画面のディスプレイには黒い文字で埋め尽くされている。
キーボードを改めて確認してみると・・・ 触れる。
DeleteキーとEscapeキーは壊れたままだが、小説を書けるこのサイトでは、上書き保存する事が可能だ。
Deleteは上書きする事はできなかったが、「リアリティア」を消してしまえば、あいつも消えるかもしれない。 皆も・・・・。
「・・・みん・・な・・ っ・・。 ごめん・・・・。」
皆はにっこり笑うと、幽霊のように透け、消滅してしまった。
キーボードに涙がこぼれ落ちる。
「うわあああああああああああ!!」
消去しますか?
Yes← No
本当に消去しますか?
Yes← No
人として具現化してしまった小説は、小説を復元させる事はできず、そのまま消失した。ゆかりも、和馬も、優介も、茜も。小説を消去したことにより、初代も2代目も消失した。
終わったんだ・・・。 何もかも・・。
意識が薄れていく。何もいない自分の部屋に「ごめん」とひたすら唱え続けた。
目が覚めた。 ・・・目が覚める・・・?
俺は初代も2代目も3代目も。殺してしまったはずだ。なぜ生きてる?
俺はいつものベッドにいつものように寝ていた。和馬のように朝からがたがたとうるさい朝が恋しい。
体を起こし、散らかった参考書やプリントを足で退かしながら階段を降りる。
・・・?
リビングに行くとゆかり、優介、茜、殺してしまったはずの皆がソファーに座ってテレビを見ていた。
「お、陽!おっそいよ。」
「え・・・? 皆?」
「いやー、確か茜って『コピーペースト』持ってたよね?4代目造ったんだよ。」
・・・?あの場所能力使えなかったはずだ。もし使えてたら俺はすでに「コピーペースト」を使ってあいつと戦っている。
「ふふ、実は、俺達はあの場所にいたんじゃなくて、3代目の陽の家に居たんだよ。陽のパソコン開いたら住所書いてあったからね。」
「えっ・・・ てことは・・・?」
「うん。陽のディスプレイにずっと話しかけてた。」
やっぱりか・・・幽霊のように消えるわけ・・、ないもんな。
「そういえば、和馬は・・?」
「和馬はすでに4代目いたんだって。今まで3代目和馬にずっと喋りかけていたんだって。小説が途中で終わってしまって、勇者としての役目が全く無かったからね。」
そうか・・・。 じゃあ終わったんだな。
俺は嫌われないだろうか。普通見捨てられる状況だ。それでも4代目を造ってたという事は、皆も俺が必要なのかもしれない。友達だから。
「よっしゃー! パーティやろーぜー!!!!」
「いえーーい!!!」
Delete リアリティア篇終了です! お疲れさまでした!
次はエスケープ篇ですね。がんばります^^




