- リアリティア - 3
ここは・・・ どこだ・・・?
・ ・ ・
確かにあいつは俺と2代目として永遠の命を手に入れ、小説を書き続ける契約を交わしたのだが・・・。
こんな真っ黒な世界で なんて聞いてない。
ゆかりも、優介もいない なんて聞いてない。
いつもの生活が送れない なんて聞いてない。
俺は今、どこまでも続く暗闇の世界でただ1人、ノートと使い古したシャーペンを握りしめてどこかに立っていた。
確かに、こちらからの何の対価も無く、永遠の命を手に入れる事ができるなんて、そんなウマい話はないだろう。あいつは一体俺の体を手に入れて何をしたいのだろう。
とにかく、ここでじっとしていても仕方がない。考えたって手の打ちようがないのだ。
右手に持っていたノートを恐る恐る開いてみた。俺が最後に書いていたはずの「和馬!何してるんだ!」の文字が見当たらない。
「これは・・・。俺が書いた小説じゃない!?」
暗闇の世界の中心に座り、表紙の「リアリティア」の文字をを横線2本で消され、その右側に上書きするように「Delete - デリート -」と書かれたノートを膝の上で開くと、俺はその小説に吸い込まれるように読んで行った。
遠くのほうから大声で「陽! どうしたの!?」と叫ぶ声が聞こえてくる・・・。
何故だろう。登場人物も、皆の能力も、変わってない。ただ、1人1人の性格も、感情も、行動も、そしてストーリーも、全てデタラメでぐちゃぐちゃだ。
この状況で考えるとこの小説を書いたのはあいつしかいない。確かに、俺は後悔したからと書きなおさずに紙ごとぐしゃぐしゃにしてゴミ箱へ捨ててしまった。あいつもきっと俺のしたことに腹を立てているのだろう。
詐欺師は、最初は巧妙な話で獲物を釣り、利益があるように持たせて罠を仕掛ける。魚釣りと同じだ。
魔女は、子供を喰らう時、まずは子供をまるまると太らせる事から始めると聞く。
このままあいつを暴走させておけば取り返しのつかない事になるのは明白だった。
どうすればこの暗闇の世界から抜け出すことができるのだろうか。ゆっくりと目を閉じ、「リアリティア」内での俺の能力である(コピー/ペースト)を使うみたいな感じで考えてみる。
脳内ではコンセントのプラグを頭の電子思考回路へと差し込もうとするが、コンセントから本体に繋ぐ為のコードがない。コードを探さなければ、この世界から抜け出す事も出来ない。
20分くらい経っただろうか。暗闇の世界で時計もないわけだから、もちろん「20分」なんてものは存在しない。
遠くから「陽!? 何するの!?」と悲鳴が聞こえる。
そういえばあの時、なぜこけただけなのに体が誰かに乗っ取られたかのように動かなくなったのだろう。なぜゆかりにビンタをくらっただけで意識を失ったのだろう。あの時は「痛み」さえも感じなかった。
不可解な事に共通するのは「痛み」だ。やってみるしかない。
ノートをそっと「自分の立っている床のような場所」に置き、使い古したシャーペンをぎゅっと握りしめた。そして左手の甲に先を向けて思い切り振りかぶった。
ざくっ!!!・・・・・・
「陽!? どうしたの!! ってええ!? どうしたのその手!!」
ゆかりが俺の左手を指さしてベッドの前に立っていた。よかった。病室の風景にもどっている。
俺が右手に持っていたのはシャーペンではなくナイフ。ノートだと思っていた薄っぺらい物体は角皿だった。
今俺の左手の甲にナイフが思い切り突き刺さっている。しかし血は1滴も出てはいなかった。
あいつが乗っ取っていたであろう俺の体は一体何をしていたのだろう。ゆかりに聞いてもよかったのだが今下手に刺激しないほうがよさそうだった。
俺は強引に「え?ちょ・・・どうしたn・げふっ!」と叫ぶゆかりと、「ちょっとまってよー?」とゆかりを追いかける優介を廊下に押し出し、ドアを無理矢理閉めてカギを閉めた。




