- リアリティア - 1
「おーい、まだやってるのー?」
「うーん、この後の展開がいまいち思いつかないな・・・。お前はなんか、いいのないか?」
「いやー、俺のない頭振りしぼっても出てきそうにないなぁ。俺そういうの苦手でさ。」
俺は中学2年生 瀬戸 陽という。クラスの中で特に影が薄く、これといった特徴もない。強いて言えば「本が好き」という事くらいか。
いや、本が好きな奴なんてそこらへんにうじゃうじゃいる。それに紛れてしまっては特徴どころじゃない。
だから先日、「小説を見る」というのではなく「小説を書く」という事を始めてみた。最初は簡単そうに思っていたが、結構厳しいものだと改めてわかった。
そして、今俺の小説に興味を示してくれたこいつ、桜野 ゆかりは、こうしてこの先の物語を書く為に手伝ってもらっている。
ああ、あいつは自分の事を「俺」なんていうらしい。小学校低学年とかのい時はまだ可愛らしいものだったが、今になってはあいつは女子らしさのかけらもない。元に戻ってほしいと強く願う。
ちなみに今俺が書いている小説のタイトルは「リアリティア」とした。
現実性という意味をもつ「リアリティ」を少し捻った言葉だ。
「現実のようで現実性のないSF小説」を書きたかった俺は中二病と言われてもおかしくないようなタイトルをつけた。
ちなみに登場人物は俺の友達を実際にキャラクターとして書いている。
現実にいるこの俺の近くにいてくれる人達がSF小説のように強くすばらしい能力を手に入れたなら それはそれは面白いという俺の単純な理由だ。
どうでもいいが、俺は彼女がいない。しかし小説では「ヒロイン」という人物が付き物だ。自分で「現実性」と言っておきながら仕方ないと俺は、
「瀬戸 茜」というヒロインを造った。そして俺は自らの名字を変え、
「空野 陽」という主人公、つまり俺を造った。
ゆかりでもよかったのだが、いずれは敵になるような人物にしたいと思っていた。あいつには悪いが、ちゃんと許可はもらっている。
今のところはこの3人。
「空野 陽」「瀬戸 茜」「桜野 ゆかり」
が、しかしさすがに3人は少しきついので、もう3人は追加しようと思う。
他のクラスだが、よく喋る友達 「木下 和馬」
俺の義弟 「髙月 優介」
そしてもう1人は・・・
「ひなた! もう教室誰もいないよ。俺とひなただけ。もう帰ろう。」
思考が現実へ引き戻されまもなくゆかりは教室から出て行ってしまった。
教室にいるのは俺1人。夕焼けでオレンジ色に染められた空。
「5時半かぁ。 そろそろ帰ろ。」
俺はノートを閉じて鞄の奥深くに押し込み、窓、ドアを閉じてカギを閉めて、職員室へと向かう。
小説の中には俺達がいるんだ。有名な作家が書いた小説とは違って、俺達が小説の中の登場人物なんだ。展開も俺の思い通りにする事ができる。こんなすばらしい世界に本当に入れたら・・・。
そんな事を考えながら小走りで職員室に向かっていると、急に床が俺の顔に迫ってきた。
「くっ・・・。 しまった!」
思い切り体制を崩し、激しい痛みと共に床へと体が叩きつけられた。そして、体が動かなくなってしまった。
なぜだ。俺は病気を持っている訳でも何でもないのに。ただこけただけで体が動かなくなる事なんてこれまで1度もなかったのに。
目線の先は投げ出されて中身の物をほとんど放出してしまった鞄があった。そしてその側にはノートがあった。
こんなすばらしい世界に本当に入れたら・・・。
そうだ。なんで思いつかなかったんだろう。このセカイに入ってまだ書き続ければよかったのに。
後悔の渦が俺を飲みこんでゆく。心の中に住む俺の鬼はそれを許さなかった。
体は動かないが、痛みは感じない。息苦しい事もない。こんな状況で、俺の心の中の鬼は、この状況の中小説を書き続けることを選んだ。なぜかは俺には分からない。ただ、このままではいけない気がした。
気づけばノートは黒い何かで埋め尽くされていた。シャーペンの芯は腐るほどあったというのに、もう1ミリも残ってはいない。
「俺って こんなことで死ぬのかな・・・。」
ゆっくりと目を閉じた。
見てくれてありがとうございましたm(_ _)m
追記:激しい痛みと共に床へと体が叩きつけられた→体は動かないが、痛みは感じない。
↓
ミスではありません。「痛み」というワードは初代の話では結構重要になりますのでよろしくお願いします




