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気が付くと優介とゆかりが心配そうに見つめているのに気が付いた。
「うおっ!? ここどこだ!?」
ばさっと起き上がり、あたりを見渡す。俺は今ベッドの上にいる。そしてやけに清楚な部屋の片隅に点滴があった。
「病院か・・・。にしてもなんでだ?」
「何とぼけた事いってんのよ。あんたが急に倒れるから・・・ もう・・・心配したんだからね!?」
倒れて心配してくれていたのか。そりゃありがた・・・いや、待て。
ゆかりが「あんた」なんて言ったっけ?
「おう、お前がばたっと倒れるからよー。ここまで運ぶのに苦労したんだぜ!?」
優介はこんな口調だったかな・・・?いや、男子にしてはかなり優しい性格と口調の持ち主だ。
「お、おう・・・。ところでゆかりも優介も、なんかおかしくないか?ほら・・・ 喋り方とか・・。」
「そんなことねーよ(笑)。ま、果物とかは買ってきてやったから。少しでも栄養を取って休めよ~。」
と優介が聞きなれない口調で言うとゆかりと優介は手を繋いで病室を出て行った。果物なぁ・・・俺が嫌いなバナナが3房置いてあるだけだが・・・。さてはわざとだな。元気になった時次来たふるぼっこにしてやろう。
ところで、俺は今病院にいるらしいのだが、何の病気なのだろう。倒れた時の記憶はおろか、それ以前の記憶すら吹っ飛んでしまっている。まさか、記憶障害・・・? いや、優介とゆかりは憶えていたのだ。100%とはいかないが、多分無いだろう。
なんだか、切ない。
さっきのあいつらは俺の知ってる友達ではなかった。
まさか陽のプログラム・・・ いや、3年の猶予はあるはずだ。安心はできないが可能性としては少ないだろう。
どこかで聞いた声と言葉が脳内に鳴り響く。どこか虚しい上っ面の「好きだよ」という言葉が心に残る。直接ゆかりの口から聞いたことはないはずだが、ゆかりの声。ゆかりの息が明確にわかる。ただただ時計の秒針の音が鳴るだけの何もない病室の中で、何度も何度も「好きだよ」と鳴り響くのだった。
22時48分。そろそろ寝ようと電気を消す。今更気付いたのだが、今の俺は、シャツに長袖パーカーを着て、フードを被り、下半身は何も着て無いというとんでもない状態だ。再び電気を付け、パジャマでも着ようかとタンスを開いた瞬間、グニャリと壁が湾曲し、床がバキバキという音と共に部屋全体が押しつぶされ、狭くなった。地震・・・? いや、そんな程度ではない。
部屋のことなんかお構いなしに、タンスを開け、パジャマに着替える。まだバキバキと音を立てながら壁や床が壊れていく。上パジャマのボタンを止め終えると、目の前にディスプレイの様な物が現れ、その中にはゴミ箱のマークとカーソルが映っていた。そのカーソルは自動的にゴミ箱に合わさり、「カチッ」という音と共に部屋がグシャグシャバキバキと割れ、俺は壁と床に押しつぶされてしまった。
「ひなた?どうしたの?なんだかイライラしてるような・・・」
「うっせぇ! お前いつからそこに居た!? とっとと失せろ!」
「・・・」
小説の続きが思いつかなくなってしまった。このままでは非現実的な日常が止まってしまう。そこに居る人達は止まるとどうなってしまうのだろう。俺にもわからない。
もう続きを書く事が出来なくなってしまった俺は、今まで書いてきた小説のページを開き、Deleteを連打し、{保存しますか?}{No}を選び、全て消し去ってしまった。
何でも天の彼方へ消し飛ばしてしまうDeleteボタン。
何でも前の展開・場面に戻してしまうEscapeボタン。
無責任に物語を創り、続かないからと無責任に消し飛ばす。
俺はこうして、また沢山の物語を殺した。
見てくれてありがとうございましたm(_ _)m




