第一章 "一致"
敵に屈する位なら死んだ方がましだ
死んで天国か地獄に行って
”反撃してやる”
俺のクラスメイト
夕凪 神はそう書かれた遺書を残して中3の卒業式の前日に・・・
死んだ。
お互い好きでもないし、嫌いでもない、いわば無関心だったと思う。
とはいっても人の心なんて見えそうで見えないものだからだわからない。
ましてや"死体が喋る"なんてこともないのだから。
夕凪神は天才だった。
学校で配布された電子辞書をその日に改造し教科書から問題集、プリントなんかも
全て電子データさせて電子辞書に入れていた。
ネットも繋げたし、将棋やチェス、麻雀にトランプなどもコンピュータと対決できる
仕様になっていた。
提出物も学校のPC全てをハッキングして担当教諭のPCに電子化された提出物を出していた。
授業中はいつも将棋かチェスをやっていた。
俺は夕凪神の後ろの席で将棋を観戦していたが数学の担当教諭が近づいて
来るのに気付き
「くるよ」
と言ったが
「大丈夫だ、問題ない」
と中々良い声で言われた後
どこかの電子辞書のボタンを押し
左画面に教科書、右画面にノートが電子化されている状態で映り
担当教諭が
「うむ、頑張っているな」
と夕凪神に向かって言い、前の方に行った瞬間に電子辞書のボタンを押すと
将棋の画面になった。
そして夕凪神は次の一手でコンピュータに王手を取り勝った。
正直俺は将棋がわからないから凄いのかわからなかったがとりあえず
「すげー」
と小声で言ってみた
「知ったかぶりしなくても大丈夫だよ」
と夕凪神に言われ
「なんで分かるの?」
と問いかけてみたが
「天才だから」
と帰ってきただけだった。
夕凪と会話したのはその一回だけだったと思う。
「よりによって卒業式の前日に自殺するとはな」
(この声は・・父親だな)
(反論でもしてみるか)
「死ぬことは生きるのよりもずっと簡単なんだよ、俺より生きてるんだからわかるでしょそれくらい」
「死んだことがないからわからん」
簡単に論破された
「それもそうだな」
そういえばまだ家だった。
(時間は・・全力疾走不可避のようだ)。
(学校に着いた・・時間は・・間にあったみたいだ)
「おはよう」
(この声は・・生徒会長か・・)
(夕凪の件だろうな・・きっと)
「おはよう」
「夕凪君のこと何か知らない?」
(案の定だ)
「知っていたら既に教えている」
「それもそうね」
「無駄な時間取らせて悪かったわね、それじゃ」
(行ったか・・)
正直俺はあの生徒会長が何か苦手だ
なぜかはわからない
容姿のレベルは高いし、話し方はサバサバしているし、
性格も陰口を言われるレベルでもない
でもなぜか好きになれない
卒業式が始まった。
「ご卒業おめでとうございます」
「えーこの旅は・・」
校長の長話が始まった。
正直真面目に聞いたことは一度もない
俺が校長なら「ご卒業おめでとうございます」だけで終わりにするか
長いけど面白い話をして終わりにするかどちらかにする。
まあ大人の事情でそうもいかないのだろう。
「次に・・夕凪君の件ですが・・」
(まあこれは聞くべきか・・)
初めて真面目に聞く気になった。
「いじめなどはなかったようです」
(確かにいじめはクラスにはなかった)
「家庭環境などにも問題なしと判断され現在原因解明が急がれています」
「ご冥福をお祈りいたします」
(終わったか・・)
(だが・・マスゴミが騒いでるな)
(そんなに人が自殺したのが嬉しいのか・・腐ってるな)
「みんな暗い雰囲気だしてるけどよ、夕凪はこんな光景望んでないと思うんだ・・ってことで今日遊ぼうぜ~」
そう言ってきたのは友人の
金木 浩二からそう言われた
("望んでない"か・・死体は喋らないのにどうやってわかるんだろうな)
俺はひねくれているからそういう事をすぐ考えてしまう。
その意見を抱えたまま金木の方を見た瞬間、50m先あたりに夕凪らしき人物が俺の視界に入った
その瞬間俺は50m先あたりに向かって走っていた。
「夕凪!」
(近くで見たがまちがいないこいつは夕凪神だ)
俺はそう信じた
「誰ですか?」
と言われ俺は心の底からがっかりした
だが夕凪らしき人物の周りに一つの死体があった・・
「おまえがやったのか・・?」
俺は逃げ腰になっていた。
「ああ、だが安心しろ、お前のような悪人ではない奴は殺さない」
「俺は悪人しか殺したくないんでな」
「どういうことだ?・・」
俺はもう恐怖で足が震えていた。
死体は見るだけでもそうとうな恐怖を与えると今日初めて知った。
「こいつは連続殺人犯だ。しかも脱獄している」
「俺は悪人は人間とは思っていない、害虫と思っている」
「だからこいつを殺すことに何の罪悪感も抱かない」
夕凪らしき人物はそう言った。
「・・・」
俺は黙ってしまった
あまりにも今の俺には正論と思ってしまったから
「警察に通報しても構わないよ」
「その行為によって君が死ぬこともないし疑われることもない」
「俺が捕まることもないけどね」
「さ、さ、最後に名前を教えてください」
自分でもわかった。物凄く怖気づいているといると
「名前・・か・・ニネスとでも名乗っておくよ」
「ニネス・・さん」
「さんはいらない」
「あ、あ、あとなんで俺が悪人ではないって決めつけられるんですか?」
「天才だから」
俺は確信した、こいつ・・いやニネルは・・夕凪神だと
第一章 一致 完