一巡目 二日目
【十二月十八日 日曜日】
蔵の片付けをやってからもう何日が経っただろうか。一週間、いやそれ以上経っているか。俺の指の傷は未だ残ったままだ。雑菌が入ったなどと言った事は一切なく、傷はあのまま俺の指に残っている。
『本日未明、――県――市にて殺人事件がありました。被害にあったのは――』
ん、ここって結構近所じゃないか。やれやれ、物騒なものだ。
俺は珈琲を片手にニュースを眺めていた。
「美咲ちゃんは大丈夫かしら」
「……は?」
お袋の言葉に俺は耳を疑った。何故お袋は突然美咲の名前を出したのか、一瞬違和感を感じたもののお隣さんを心配しておかしい事はない。
――香椎 美咲、隣にすむ俺の幼馴染兼俺の自慢の『彼女』だ。
「え? 私変な事言った?」
少し遅れてお袋が反応をする。いや、おかしくはないんだが。
「あぁ、ゴメン。なんでもないよ」
そう。とお袋はテレビ画面に集中をする。俺は手に持っていた珈琲を飲み、自分の部屋へと戻った。
「……なんだこの違和感」
先ほどのお袋の発言。あのやりとりで、俺の中で小さな違和感が生まれた。お袋の言ってる事がおかしい事なんてない。しかし、何故だか俺は素直に納得する事ができなかった。それからの一日、俺は休みを満喫するどころか、違和感に悩まされ余計に疲れる事になった。だが、たかだか一日考えたところで答えがでる事もなく、違和感は俺の中に残り続ける事になるんだ。




