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刹那の破片  作者: 緑青・薄浅黄
第一章 : ブータンマツリ
3/40

『 午後の庭での短編集 』

とても短い話を三つほど……お付き合い頂ければ幸いです。

本編ではありませんが、ニヤリと笑っていただけたなら

嬉しく思います。



『午後の庭での短編集』


* かけごと *


最初は、サイラスがジョルジュを冷やかしていたのだ

ジョルジュの腕の中に居る妹をみて、ニヤニヤしながら。

その態度と言動に、ジョルジュが不機嫌になっていくのが分かったのか


ソフィアが、一言サイラスにこういったのだ。


「サイラス様は、お好きな方はいらっしゃいませんの?」


ソフィアのこの、言動から……口論となった

ユージン様とキース様とサイラス……。


売り言葉に、買い言葉……それがどんどんエスカレートしていき

セツナの元まで競争することになったのだった。


"負けたら、相手に告白する"という条件をつけて……。


私は、キース様の騎士として後ろから追いかけることになり、後ろを走る。

キース様達は、諍いあってまだ気がついていないようだ……。

これだけ、馬を走らせているというのに

一向に目的地に着かないのはおかしい……。


声をかけようと思うのだが

3人は殺気だって、会話をしているものだから口を挟むのが難しい。

どうしたものかと……思案していると、私より馬が異変を3人に知らせる。


馬が疲れてきたのだ、私もまるで遠乗りに行ったような疲れを感じる。

そこでやっと、おかしいということに気がつく3人なのだが……。

馬を走らせようとしても、走れない馬に速度が徐々に落ちていった。


そして……馬がスピードを落としたその時、何かが壊れる音がして

周りの風景が変わったのだった。


セツナの冷笑に迎えられ……。

私と馬だけに、回復魔法をかけてくれたセツナ……。


息を切らしながら、ユージン様達はラギさんに挨拶し

体力が回復するまで、ラギさんの家で伸びていたのだった。


ジョルジュが、サイラスに向かってニヤリと笑い

サイラスが不機嫌になったのは言うまでも無い。


- End -




* 主役には…… *


「ソフィアさんも、エリーさんも恋人が居るのに

 セツナさんのことが気になるのかの?」


私がそう二人に尋ねると

ソフィアさんとエリーさんが顔を見合わせエリーさんが答える。


「ラギさん、それはそれなんです。

 ノリスは好きな人で、セツナ君はなんと言うか目の保養?」


「ええ、セツナ様はなんと言うのか……。

 お話の中に出てくる、騎士様みたいな」


「そうそう、色々凄すぎてそういう対象に見れないよね」


「お話の中のお姫様に、なりたいとは思いませんもの」


「平凡なノリスで十分」


2人の会話を聞きながら、ふと彼女たちの後ろを見ると

なんともいえない顔で、立っている2人の男性。


話に夢中になっている、2人は後ろの恋人たちに気がつくことなく

とめどなく話し続けるのだった。


彼女達の恋人は

話しの内容が内容だけに、ただそこに佇んでいた。

微妙な表情を作りながら……。


私は、彼女と彼等を眺めながら、静かにお茶を口に運ぶことしかできなかった。


- End -




* あのリボンは今 *


セツナ様が帰り際、私だけに聞こえるように教えてくれる。


「ソフィアさん、薔薇に結んであるリボンの言葉なんですが

 薔薇から、リボンを解くと消えた文字が浮かび上がるようになってます」


セツナ様の言葉に、私は思わず彼の菫色の瞳を凝視する。

優しくゆれる彼の瞳、なのにセツナ様の口元は楽しそうに笑っていた。


「僕からの……贈り物です」


楽しそうに笑うセツナ様。何が彼を楽しませているんだろうと

考えるけれど、その答えは私には分からなかった。


「ソフィアさん、僕とのこの会話は……。

 ジョルジュさんには黙っていてくださいね?」


そういい残して、彼はサイラス様の元へと行ってしまった。


帰りも、ジョルジュ様の馬に乗せてもらっている私の耳のそばで

ジョルジュ様が問いかける。


彼の声が耳元で聞こえて、心臓が高鳴った。

この鼓動が聞こえるぐらいの距離に彼が居るというのに……。


「ソフィア……セツナは君に何を話していた?」


「え……?」


「セツナが君に何か話していただろう?」


「ええ……」


歯切れの悪い、私の返事にジョルジュ様が顔をしかめる。


「セツナに何を言われた?」


「……」


秘密だといわれていることを、答えるわけには行かない。


「……今君はとても幸せそうに笑っている。

 それは、セツナが君に与えたものだろう……?」


彼のこの言葉に、私の体に緊張が走る。

私は、リボンの文字をもう一度見ることができるというのが嬉しくて

その喜びが、体からあふれていたみたい……。


「私には、話せないことか?」


彼の真剣な問いかけに、私が答えないという選択肢は無く

セツナ様に教えてもらったことを、あっさりとジョルジュ様に白状する。


「……」


「ジョルジュ様?」


ジョルジュ様の体が急に固まる。

その変化を敏感に察したのか、馬の首が少し不機嫌そうに揺れた。


「……ソフィア……」


「はい」


「……薔薇からリボンを外さないように……」


「……あ……」


彼のリボンを外すなという言葉に、不満を言おうと振り向くと……

ジョルジュ様と視線が合った。


困ったような、照れたような、そんな表情の彼を見るのは初めてで……。

私まで釣られて、照れてしまう。


セツナ様が、楽しそうに笑っていた理由。

きっと、セツナ様は私が彼に話してしまうことを分かっていたのだろう。

そうして、引き出される彼の表情を想像して笑っていたのだ。


『僕からの贈り物です』


そう……セツナ様の言う贈り物というのは

薔薇のリボンの文字を浮かび上がることを教えてくれたことではなく

彼のこの表情なんだろうなと思った。


めったに見ることができない、彼の心の表情……。


今日は新月で……私の顔の色もジョルジュ様の表情も

周りには分からないはず……。そのことに少し安堵しながら

私とジョルジュ様の間には、優しい沈黙が続いたのだった。


- End -




* あるとのにっき *


・・・(抜粋)・・・


えもの(サイラスさん)がわなにかかった。

うれしかった。


えもの(サイラスさん)は、おれのとなりで、ぐったりしていた。

これで、おれのたべものが、とられることはないだろう。


きょうは、たのしい、いちにちだった。


- End -




* セツナの返事 *


ほかのひとには、くれぐれもやらないように。

ゆうしょくに、まぜることもきんしです。


- End -



読んでいただきありがとうございます。


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2024年3月5日にドラゴンノベルス様より
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