屋上
短編です ※転落を想起させる描写があります。
うちの学校は五階建てだから、屋上は結構高い。立ち入り禁止なんて書いてあるけど、構内から普通に開けて外に出られるんだから、文字に意味はない。
私は迷わずフェンスを登って、フェンスの向こう側に向かった。
おぉ、結構高い。とりあえずスマホで写真を撮る。
さっき両親に、昨日夜更かししてまで書いた、遺書的な文章を送ったから、多分しばらくしたら学校に来るだろう。それまでは街を見て過ごす。
ほどなくして、タクシーから母が降りてきたのがわかった。母は周囲を見回した後、屋上を見て、私を認識したらしく、甲高い叫び声をあげた。
おぉぉ、やっぱお母さん声デカイな。なんて感心していると、狂ったように電話をかけ始めた。またしばらくして、救急車、消防車、パトカーが学校に到着した。体育の授業中だった他クラスの子たちも一斉に屋上の私に視線を向ける。
なんか、大事になってない?
校庭から母が叫ぶ。
「降りてらっしゃい!!」
「なんでこんなことしたのかはメッセージ送ったでしょ!止めたかったら屋上まで来たらいい!!」
なんて言ってみたら、母は慌てて学校内へ。ぞろぞろとソレに消防と警察がついてくる。あぁ、面白い。私はフェンスをよじ登るために、振り向いた。
あ、と・・・寝不足だから少しふらつく。ふらついた様子を同級生たちが見ていたようで、叫び声が学校にこだました。やぁねぇ、少しふらついただけだよ。
フェンスをよじ登る。フェンス超えるときは怖かったけど、戻るのはさっきより怖くない。安全地帯に戻るからかな。
大人たちがやってくる前に、ドア付近に隠れて様子を見る。
揃えて置いた上履きがなかなか良い感じじゃない?
足音が聞こえてきて、私は慌てて息をひそめた。
さっきまでフェンスの向こう側にいたはずの私がいないことを嘆く母の絶叫が響く。いい気味だ。
母が慌ててフェンスに駆け寄ると、ソレを屈強な男たちが止めた。
男たちがフェンスを慎重に超えていく。鍛えてても、フェンスを乗り越えるのって怖いんだ。なんかおかしい。
おっと笑い声で気づかれてしまう。静かに、静かに。
屋上の端から地面を覗き込んだ、屈強な男が、慌てた様子で数名の隊員に支持を出して、指を刺された人たちが慌ててまたドアを通って降りていく。
そりゃぁそうだ、落ちたはずの私がいないんだから、そりゃ慌てもするだろう。ぷぷぷ。動画撮っておけばよかった。
ざわざわとする屋上、下を覗いた隊員から、何か話を聞いた母の顔がみるみる青ざめていく。お母さんホラーとか苦手だもんね。
ボロボロと涙をこぼして、頭をかきむしる。今度の叫びは、甲高いを通り越して絶叫以上に喉を締めている気がする。もうだめだ、耐えきれないし、かわいそうだからそろそろネタバラしをしよう。
『じゃじゃ~ん!私はココでした~!お母さんびっくりした!?』
屋上のドア付近から一気に飛び出して、びっくりさせてやろうと思ってたんだけど、なんで誰も私の方を見ないわけ?
——脅かし甲斐がないなぁ——
・・・。




