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幽チューバー

作者: 村山 賢人

 僕は片山雄二。幽霊や魑魅魍魎が見える男だ。

 つい昨日まで、とあるゲーム実況者にはまっていた。タロイモっていう名前で活動している人で、モン〇ンをメインでやっている実況者だ。若い男の人で、ゲームはわりとうまい。

 モン〇ンが好きだから見に来たわけだけど、ファンになった理由は、タロイモさんにはなかった。タロイモさんの配信に映っている女の子ほうが目当てで見ていた。

 初めて配信を見たときから、その女の子はいた。タロイモさんの右肩に手をのせて、ゲーム画面を覗き見ていた。それで、ゲーム実況をしてるんだ。タロイモさんの言葉に返事をすることもあれば、彼が無言の時でも状況に合わせてコメントしたりしていた。

 最初は、恋人がゲームを覗き見ているなんて珍しい配信だな、と思っていた。けれども、コメント欄で誰もその女の子に触れないことや、タロイモさんもその子のことを無視してることから、その子が生きてる人じゃないって気づいた。

 幽霊って、たいていは透けてるんだよね。あと、顔色が悪い。それか、どう考えても生きてるとは思えないようなけがを負った姿で出てくる。その子は、どの特徴も当てはまらなかった。血色がよくて、はっきり見える。よく見ると、ちょっと透けてるかな、と思うほどでしかなかった。だから、なかなか気づけなかった。

 死んでいるとはいうものの、見た目が好みで声もかわいかったのと、配信に参加してくる霊というものがおもしろくて、見るようになった。

 だけどある日から配信を見るのをやめた。

 その日は生配信の時間に間に合うことができて、ちょっとうれしいな、と思いながら動画を開いたんだ。そうしたら、いきなり怒鳴り声が聞こえてきた。

 怒鳴っているのは、幽霊の子だった。あまりにも声が大きいものだから、タロイモさんがなにか言っても、全然聞こえないほどだった。

「なんで、なんで!」

「どうして!」

 幽霊の子は、ずっとこんなようなことを言ってたんだ。この日の三日前までは、にこにこして明るい声で配信に参加してたんだ。それが今では、タロイモさんの右肩をこぶしで何度も殴りながら怒鳴っていた。

 僕は何があったのか知りたくて、しばらく配信を見続けた。そしたら、しばらくして彼女がこう言った。

「なんで、よりによってあんなブスと!」

 そこでようやく事情を察した。もっとも、前から配信を見ていて想像していたことではあった。ようするに、この子はタロイモさんのことが好きで憑いていたわけだ。

 一方、タロイモさんは平然としゃべり続けていた。あんなに幽霊にたたかれても何もないのかな、と思っていたら、突然彼は右肩を気にしだした。あの子に殴られまくっていた場所だ。それから、右肩を抑えて呻きだした。

 幽霊の女の子は、タロイモさんを殴るのをやめた。そして配信カメラのほうにぐっと身を乗り出してきたかと思うと、顔をカメラの前に近づけてきた。カメラ一面に、目をかっと見開いた彼女の顔が映し出された。

 その時、目が合ったような気がした。同時に、来るって直感した。僕はすぐさまブラウザバックした。

 だけど、手遅れだった。その子は僕のところに来てしまった。来て以来、ずっと僕の背後にいて、今もいる。それで、ずっと話しかけてくる。ちなみに今はずっと、こう言ってる。

「ねえ、なんで無視するの?」

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