星になればきっと幸せ。
少し胸糞注意です。
もし、君が抜け出すことの出来ない耐え難い孤独に身を焼かれたら、どうするだろうか?
誰かに相談する? 友達を作る? いっそ身を投げてしまう? でも私はそうは思わなかった。
「お母さん、あの……」
「うるっさい!!こっちは疲れてんだよ!!静かにして!!」
2日前から何も食べていないので何か食べさせてほしいと思ったが、お母さんは毎日夜の仕事で忙しいらしく、何かブツブツ言いながら頭を掻きむしっている。
「ご……ごめん……」
掠れてしまって言葉にもならない音を漏らす。だめだ、お腹が空いてどうにかなりそうだ。家から出て近くのコンビニで何か買おうにも、お母さんがイライラしているときは外出するだけで怒鳴られてしまう。
何とか冷蔵庫の隅に残っていた消費期限切れの菓子パンを頬張る。美味しい。コッペパンに小さなコロッケが挟まっているだけだが、すぐに食べ終わってしまう。
「まだ足りない……」
母親にバレないように、そっとベランダに出て座り込む。いつからこんな風になってしまったのだろう。思えば、母が変わってしまったのは父が死んでしまってからだった。
―――交通事故だった。金曜日の夕方6時ごろ、母と一緒に父の好物であるコロッケを作って父の帰りを待っていた。
「パパ遅いね……」
「もう少しで帰ってくるわよ……あ! 電話掛かってきた!パパかな?」
プルルル、プルルルと携帯の着信音がなる。
ワクワクしながらも人が電話しているときは静かにしていなさい、と教わったので黙っていた。
そのとき母が電話口の相手と何を話していたかは覚えていない。
「……病院行くわよ。」
「……え?」
「パパが交通事故で重体だって……」
ろくに準備もせず急いで家を飛び出す。
だが―――
「あなたっ!! 目を覚ましてよ!! お願い……」
父は全身を強く打ち、病院で亡くなった。特に顔面の損傷が酷く、顔を見ることは叶わなかった。まだ幼かった私は何が起こったか分からず、涙すら流れなかった。
過去から目をそらし、ベランダの屋根から覗く星空を眺める。ああ、私があの星になれたら周りの沢山の星達に囲まれて、餓死する心配すらなく生きていられる。
―――そうだ、昔お父さんに読み聞かせてもらった絵本には『人は死んだら星になる』って書いてあったっけな。てことはきっとお父さんもこの空に輝く星のどこかに。
「……」
私も星になろう、そう思った。そうすれば孤独じゃなくなる。
ベランダの柵に手を掛ける。幸いここはアパートの8階。間違いなく星になれる。
側にあったお酒の入った段ボールを階段にして柵に足をのせる。大丈夫、私は死にたい訳じゃない。あの星になりたいだけだから。
私は空に向かって足を踏み出した。
「星になればきっと幸せ。」
見上げた空は、今までの人生で最高の景色だった。
数秒後、どちゃ、という音と共に私は星になった。
また会ったね。君に伝えたいことがあるんだよ。君がもしどんなに孤独でも、星になるのは諦めてほしい。私が星になれなかった訳じゃないよ。ただね、星が沢山の仲間と寄り添って見えるのは地上からだけ。本当は周りに何もない、真の孤独だよ。
「星になっても幸せになれない。」
なーんて、誰もいないところに語り掛けても意味ないよね。でもきっと、この想いは誰かに―――
星に憧れた少女が、晴れて願いを叶えるお話でした。
お読みくださりありがとうございました。
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