第三話 説教
文字通り姉に叩き起こされ、正気に戻る。どうやら死んではいなかったようだ。
改めて家の中を見渡せば自分の横に横たわる兄、ナツキと弟のトウヤ。とは言っても彼らは俺が生死をさまよう前、つまり転生後の年齢ではなく何故か転生前の年齢相応の姿になっていた。自分の体も転生前の身長に戻っている。だが、記憶を取り戻した今ではこちらの姿の方がしっくり来る。
まぁ姿が変わったのはさておき、釣りに行っていたはずなのだが疲れて寝てしまったのだろうかとは思ったものの明らかに様子がおかしい。
服は湿気ている、という言葉では補えないほどびしょびしょである上、顔も青ざめており体温も低い。状況を見る限りどうやら”また”川に落ちたらしい。
「おい兄貴、そろそろ起きろ」
先程姉に平手打ちを受けたので俺もやっても構わないだろう。
足蹴りを兄貴の脇腹辺りに直撃させると、「ヴッ…」というなんとも翻訳しがたい声で返事が帰ってきた。
然しながらまだ完全に目は覚めていないようで目を瞑ったままのたうち回っている。
仕方がないのでもう一度脇腹めがけて今度は助走代わりに足を振る。
「……おはy……え?」
「あ。」
そして足を全力で振り切った瞬間、タイミング悪く兄は体を起こした。
そして脇腹をめがけて蹴っていた俺の足はちょうど兄の顎に直撃した。
「危険だから起こす時蹴らないでって言ったでしょ!!」
「…言われてない」
「考えたら分かるでしょ!!」
「私なんで怒られてるのさ、関係ないじゃん」
「監督不届きだよ!!」
俺は何故か今、兄の前の前で姉と一緒に土下座させられている。起こす時に蹴るなとは一切言われていないのに何故怒られているのかイマイチ理解ができないが、怒っているときの兄は面倒くさいので放置するに限る。
これでもう何時間だろう、結構長い間怒られてる気がする。
そろそろうるさくなってきたので黙ってほしいと横を眺めればそれな、とでも言いたげな表情でこちらを見ている姉。どうやら顔に出ていたらしい。
「ちょっと、聞いてる?大体ね…」
普通に説教を聞くのも暇なので兄にバレずにあっち向いてホイをしていたのだが、それすらもバレてまたもや喋りだす。この退屈な空間をどうにかしてほしい。
そんな時後ろから小さく欠伸が聞こえる。振り返ればトウヤが腕を伸ばして大きく伸びをしている。助かったとばかりに姉がトウヤのもとに駆け寄り、兄から逃げるため俺もそれに続く。
足が少し痺れているが、まぁ歩けないほどではない。
「…あれ…兄さん?」
「あ、トウヤ、起きたの?大丈夫?」
「僕に対する対応とだいぶ違くない?」
「大丈夫ですよ、ホラ」
トウヤが勢いよく立つがまだフラフラしているので一旦座らせる。
だがトウヤはまだ理解が追い付いていないようで、何が起きたんだ、と顔に出ている。
暫くおいといてあげようと言う話になり、俺と姉はまた兄に怒られることになった。
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